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異世界
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この世界では大陸に三つの大国が存在していた。皇帝が恐怖で民を従えている帝国。貴族、平民、奴隷に身分が分かれている王国。宗教が支配する宗教国家。どの国も文明に大きな差はない。
最初の転移者一条は王国にいた。そして、その場所は最悪だった。
王「何者だ!」
いきなり彼は王の前に転移させられていた。当然、側近に一瞬で取り押さえられた。
王「拷問で情報を聞き出した後、処刑せよ!」
一条(嘘だろ?いきなり終わる?)
ひとまず彼は牢屋に入れられ拷問の時間になるまで待つことになった。牢屋は地下にあり薄暗く近くには見張りがいた。普通に考えれば脱出は不可能。しかし、このまま何もしかかったら一条はデスゲーム開始前に死ぬ。
一条(一体どうすれば?ゲームならどこか逃げ道があるはず。)
咄嗟の考えで隙間を探すが牢屋内にそんなものは一切ない。そんな中にあることに気付く。
一条(この見張りは必ず鍵を持っているはず。だったら!)
一条「すいません!」
見張り「何だ?」
一条「あなたに秘密はありますか?」
見張り「そんなものはない!」
その質問の口での回答は思った通りだったが、逆に心では秘密を思ってしまう。一条はその心を読んで弱みを握った。
一条「俺は知っていますよ?毎月ここからお金を少しずつ盗んでいることを。」
見張り「どうして!貴様がそれを?」
見張りが食いついたところでここから出してもらうように交渉を持ちかける。
見張り「くっ!分かった!さっさとここから出ろ。もう二度と会うことはないだろう。」
一条「ありがとう。」
見張りに牢屋から出してもらい、教えてもらった隠し通路で脱出する。
外に出た一条は初めて見た異世界の光景に圧倒された。まるで中世の街。その中でもここは王都であるため王国で一番にぎやかであった。
一条「これが異世界!ゲームなんかとは全くの別物!!」
一条は興奮を隠せずにいた。かつていた現実の世界じゃない、この異世界に来た実感がわいた。何一つこの世界を知らない彼は不安も恐怖もさっきまではあった。しかし、今となってはそんなものは既に吹き飛んでいた。
一条「これからどうしょうかな~?ここの人に色々聞いてみようか。」
この世界について情報を得るため、近くの人に聞いて回ることにした。デスゲームのこともあったが、今の彼にとってはただの興味であった。最初の一人目は緊張したが本心から親切に対応してくれて彼にとっては気分がいいものだった。何人に聞いて回ったおかげでこの国や周りの国、この世界での暮らしやしくみなど基本的なことから割とどうでもいいことまで教えてもらった。
一条「この国はいい人ばかりで助かった。一時はどうなることかと思ったけど。」
一条は近くの宿でただで泊めさせてもらうかわりにそこの宿で働くことになった。心が読めるため交渉は簡単だった。