表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

10(舞う)

 密輸さながらに持ち込んだ自分の姿見と、対になるもう一枚。窓との位置合わせをして、自分の方にはバスタオルをかけて隠した。尋臣が用意したそれが誰の物で、ホコリ除けに被されたリンネルの理由を訊ねたりはしなかった。

 本当のところ、この計画を尋臣はどう思っているのだろう。自分の身勝手さで押し切ったようで、亜希子は些か心もとない。

 窓から迎え入れる鏡の側に立つ尋臣をそっと窺う。青白い横顔が月明りに浮かぶ。尋臣の存在自体があやうく見えた。

 なんであたし、感傷的なんだろ?

 くしゃみが出た。洟をすすり、手の甲で鼻の下を拭い、情けなくて乙女心が揺らぐ。

 今夜中にカタがつくとは限らない。それぞれの鏡の横に立ち、無言。亜希子は自分でも飽き始めているのが分かる。云い出した手前、中止の提案するつもりはないが、本音としてはつまらない。気持ちが離れている。愉快なことでないのは承知していたはずだが、予想と実地じゃ鏡のこっちと向こうほどに違う。

 依然として鼻はむずむずし、再びくしゃみが出そうになったその刹那、すいと窓から抜け出たそれが鏡に吸い込まれるのを見た。

 前触れもなく突然のことで、亜希子は慌てて鏡に掛けたバスタオルを取り払い──くしゅん!

 姿見が傾いた。鏡の中から泳ぎ出た黄色い魚が行き場を失った。床の上にしなだれ落ち、その姿を覆うようにドレスのフリルが幾重にも舞う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ