第八十六話
第八十六話
今の僕たちだと届かない以前の問題だ。
蹂躙されて終わるのが関の山というやつになってしまう。
だけど、今回は咎により痛覚増幅魔法を覚えることができた。
魔物の成仏には再生出来ないほど痛めつければ良い。
ならばこの魔法を使えれば葬りやすくなる、香取雛を殺しやすくなったと捉えればこれほど喜ばしいことはない。
……ダメだな、僕じゃなくなってきてる。
このままだと朱莉にまた秋口さんと呼ばれてしまう。
……そういえば、僕がこうなる理由を考えてみれば避けようがあるのではないだろうか?
僕が考え始めた時に朱莉の意識が戻った。
「……朱莉、おはよう」
本当はこんな状態でおはようなんて言いたくはなかったな。
「……おはよう、風香ちゃん」
ジトっとした瞳で見つめてくる朱莉に求愛時に瞳の色が変化するオウギワシみたく興奮を覚えながらも平静を保っている僕を褒めてほしいぐらいだ。
いや突然どうしたんだって話になるだろうと僕もそう思う。
しかしだな、この可愛さには抗えないのだよ!
もはやあの時と同じだとは思わない、なぜならばあの時は朱莉の可愛さではなく絶望を見ていたからだ。
朱莉の絶望は正直カレーに入れた隠し味なのに隠しきれないほど濃厚な味わいを僕に与え彩りをくれるものだ。
しかしだ、それは朱莉のこの可愛さがあってこその味わいというものだ
「本当に可愛いよ朱莉、その表情をめちゃくちゃにしたい」
無意識に口角が上がっていることを理解出来てしまうことに嫌気がさしてしまう。
「風香ちゃん、良い方に考えてみようよ。前は絶望のことばかり絶望の表情ばかり考えたのに私のことを考えてくれるようになったんだよ」
齧り付きたくなるほど熟したトマト色に染め上げられた朱莉を見ていると無性に襲いたくなってしまう。
「そんな目を向けてくれるのも嬉しいけど、もう少しだけ獲物を見るような目は抑えてほしいかも。いつもみたいな好きな人を見るような目にしてほしいな、その方が私は嬉しいな」
朱莉が獲物か、あながち間違いじゃないのかもしれないな。
「……って何考えてんの僕!?」
今の何なの、思考はおかしくなった時に似てるのに、なんか変態みたいなこと考えてなかった!?
「ああああ朱莉、今のは忘れてほんとに……ほんっっっとうに忘れて!!」
もしかしておかしくなるのにパターンでもあるの!
……でっ、でもさっきみたいな方がもしかしていつもよりは大胆に動けるのかもしれない。
「だとしても嫌だよあんなの!!」
僕が悶えていると朱莉が本題に戻してくれた。
「コホン。さっきのは絶対に忘れないとしてだよ風香ちゃん、咎がカレンダーに沿って動くってことは明日は空白になってるはず。だったら明日にでも吾野蔵公園に行った方がいいんじゃないかな。帰ってくる日程が早まったんだから私たちにも多少の猶予は出来たと思うから」
「ごめん、そうだよね。僕たちの目的は魔葬少女になる前の生活に戻ることだもんね。だったら強くならないと……僕はさっきみたいな状態に切り替えられるように原因を探してみる」
決意に満ちた朱莉の瞳を見ていると、さっきまでの僕がアホらしく見えて仕方ない。
だけど、あんな風になってる僕の方がおかしいんだから……やっぱり僕自身を知ることが強くなることにも繋がる気がしてならない。
咎の娘というのが影響して、あの状態になるのならば、記憶のない幼少期にも出ていた可能性がある。
母さんを頼れない今、記憶を辿るにはアルバムを探してみるのも良いのかもしれないな。
特に幼少期のものを……見つかれば写真と一緒に保育士さんに当たる選択肢も増える。
「あのさ朱莉、明日まで時間あるしアルバム探さない?」
見られるのは多少の抵抗はあるけれど、今はそうは言ってられない状況なんだから。
「風香ちゃんのア・ル・バ・ムぅぅぅぅ!! 絶対探すに決まってるよ! 私まだ見たことないから早く見てみたいなぁ……そうだアルバム探しのために魔法作ればいいじゃん今すぐ見つけてあげるからね」
早口で息を荒げながら魔法を制作しているこの光景を僕はどんな気持ちで受け止めれば良いんだろうか。
ありがたいんだよ、早く見つかるのは……でもなんかこう、もっとさ……純粋な気持ちで探したかったかな!!
読んでいただきありがとうございます!!
更新は出来る時にしますね




