③
ーーーコンコンコン。
玄関扉をノックする音が聞こえる。
父から依頼された薬は日持ちしないため、週に一度取りに来るという。ただでさえ忙しいのに頻繁にこちらに来てもらうのは申し訳ない。日持ちするよう改良しなければと考えながらよく確認もせず玄関扉を開けた。
そこには騎士服を身につけ、アプリコットの真っ直ぐな髪を高い位置で結い、翡翠の瞳の小柄だが背筋をピンと伸ばした可愛いらしい女性が立っていた。
(…子リスみたいだ…)思ったと同時に
(筋肉!!!)
不意に目の前の女性のものであろう心の声が聞こえてきた。思わずビクッとしてしまった。
すると目の前の女性は数歩下がり「私は騎士団所属のエレノアと申します。本日は薬を取りに参りました。」ハキハキと通る声で挨拶をした。
(いけない。近付き過ぎたか。)エレノアは伯爵から息子は人が苦手なのであまり近付かないようにと言われていたのだ。
ヴィンセントは気を取り直し「…あの…私は薬師のヴィンセントと申します…。父が薬を取りに来るものと思っていましたので…」と言っている間に、彼女は委任状を広げて見せた。
『薬の受け取りは、騎士のエレノアに委任する。』と書かれ、父のサインと王家の印が押されていた。
さらに、父からの手紙を渡された。『しばらく忙しくなるので訪問できなそうだ。週に一度そちらにエレノア殿が訪問する事になったのでついでに届け物を頼んである。何か必要なものがあれば彼女に伝えておいてくれ。』
「と、言うわけです。」彼女は言いながら沢山の荷物を馬から下ろし持って来た。
(こんな小柄な女性に荷物を持たせるなんて申し訳ない…。)すぐに受け取りたいところだが近付けない。
察したエレノアは「私はこう見えて力があります。お気になさらず。して、荷物はどちらに置きますか?中まで運びましょうか?」と言った。
「ありがとうございます。ここで大丈夫です。」
「次回必要なものはございますか?」
「…自分で何とかしますので…。」
するとエレノアは「伯爵の仰る通りだ。」と声を出して笑った。
「父が何か?」
「ヴィンセント様は遠慮するだろうと。薬を受け取りましたらすぐに帰ります。次もまた一週間後に参ります。」
ヴィンセントは慌てて薬を渡し「荷物は重たくて大変でしょう。大丈夫ですよ。」と改めて言った。
(筋肉!!腕!!)
ヴィンセントは慌てていたためうっかり近付いてしまい、またエレノアの心の声が聞こえたのですぐに離れた。
エレノアは何も言わず薬を受け取りにっこり微笑み帰って行った。
これが筋肉フェチ女性騎士と心の声が聞こえる筋肉薬師との出会いだった。




