604 土地が欲しいぞ!
――ドゥルルルルルー。
「や、やった……はははっ、見て下さいカイト社長!」
翌日、本当にクリスはカブに乗れるようになってしまった。うおお、早えな!
「ばっはっは。オメー凄えな! オラより早く乗れるようになったかー」
ライアンも驚いている。
「皆さんのご指導のお陰です! ありがとうございます」
そう答えてシルクの方を見るクリス。
「しんどいのはここからだニャ! しっかり付いてくるんだニャンゴロォ」
腕を組んで偉そうにそんなセリフを放つシルク。
1日先に入っただけなのに、なんでこんな先輩風吹かせてんだこいつは!?
「はい! 頑張りましょうシルクさん」
……まあクリスが嬉しそうだからいいか。
「しかし、このスーパーカブというのは、ただの運送の道具という以外に乗ってて純粋に楽しいですね……僕、気に入りました!」
クリスは改めて自分の専用機となった緑カブを眺めながら、そんな感想を漏らす。
――ドゥルルルルルー!
やはりというか、カブの奴がクリスの周りをグルグルと回りだした。嬉しそうにしやがって。
「クリスさん! あなたも今日から立派なカブ主です!! 共に頑張りましょう!!」
「はい! ……というか、君は喋れるスーパーカブなんだね!? しかも自分で走れるんだ! 凄いな……」
クリスの驚きももっともだ。
「ああ、そのカブについては俺にもよく分からん。本人によればスーパーカブの精霊らしい。お前と同じでめちゃくちゃやる気ある奴だぞ」
それを聞いたクリスはカブに微笑みを向けた。
「そうなんだ。よろしくねカブ! スーパーカブ運送をスズッキーニで一番の会社にしよう!」
「はい! 何だか僕達気が合いそうですね!?」
い、いや、スーパーカブ運送は一応公共機関だから世界一とかは特に目指してない……まあいいか。
俺はクリスの加わったメンバーを改めて見回してみて、中々個性的なメンバーが揃ったな、という感想を抱く。
あとはミルコみたいに代わりに仕事を任せられる奴がいてくれれば俺もいろいろ動きやすいんだが……ライアンがそれに一番近いか? いや、ちょっと違うな。うーん。
「ねえおじ?」
ターニャが袖を引っ張った。ん?
「このシグナス区(東区)ってマグナ村以外はどうなってるの?」
ほほう、いい質問だな。恐るべき真実を教えてやろう。
「マグナ村以外だとあそこだ。北部のミスリリウム鉱山付近の“ミスリル村”。最近人口が30人を超えたから、正式に村として認可されたぞ」
ターニャが手をポンと叩いた。
「あ! 冬の寒い時に温泉入った所だね?」
「そう、あそこだ。それ以外はなんと……」
俺は勿体ぶってターニャの注意を引いた。
「なんと……!?」
「村は存在してないんだ! 家2〜3軒しかない村未満の所しかない。ビックリだろ?」
ターニャは口をポカンと開けた。
「ええー!? ここの区、人少なすぎるでしょ!」
「そうだよ、だから国も補助金まで出して移住支援してるってワケだ」
「増えるかな……?」
「増える! そのために俺がいる。そうだろ!?」
「うぇーーい!」
「いえーーい!」
ターニャと両手を合わせて俺は笑った。ちょっと楽しくなってきたぜ。
まずはこのマグナ村、そしてミスリル村を重点的に発展させていくぞ!
「カイト社長。ところで僕達の仕事って具体的に何なんでしょう?」
カブに乗れるようになったクリスが早速、イキイキした顔で聞いてきた。
「基本的には物資の輸送だ。早朝の食料の買い出しとかな」
「なるほど……」
「寝坊すんニャよ!」
お前が言うな。
「もし給油所が建ったら軽油やガソリンをヤマッハから運んだり、北部のミスリル村とこのマグナ村間の物資の輸送とかな。他にも必要なモンは全て運ぶぞ、運搬可能な物であれば何でもだ。それと、もしかしたら国から何かしら依頼されるかもしれん。あのジクサール公のことだからな」
ジクサールの名を聞いたからか、クリスは目を見開いた。少し震えているようにも見える。
「ジ、ジクサール公から直に依頼を受けると!?」
「ああ、結構人使い荒いぜあの人。その代わり報酬もデカかったけどな」
「あ、カイトさん! 門の近くに誰かが来てるみたいですよ!?」
おっと、カブからの報告だ。誰だろう?
倉庫から門まで出ていくと、そこにはヤマッハからの移住者がいた。
「あ、あのー。ここに住む予定の者なんですが、今日来たばっかりなもんで、こちらに手続きしに来ました」
それは大人二人と子供三人の一家のようだった。俺は笑顔で出迎えた。
「ああ、良く来てくれた! ターニャ、この人達の転入手続きを頼めるか?」
「ういーーっ! お任せー」
――ドゥルルルルー。
ターニャはベージュカブで館へと走っていく。
しっかし無駄に広いなこの庭はよ。
そう感じた俺は住民達の窓口となる“離れ”を、作る決意を固めた。もちろん庭からすぐの場所にだ。
しばらくして、ターニャは張り切って登録用紙を持ってきてくれた。
「ここに家族のお名前と住所、それから職業を書いてください! あと収入も」
さすがセシルの元で鍛えられてるだけあってテキパキとしてるぜ。偉いぞターニャ!
……。
うん、今日も人が増えたな。
俺が来てから6日目で80人ぐらいは移住者が増えた。総人口は200人ってところか。ほとんどが木こりで、他は商人や酪農家として来た家族など。
ダウィード達建設屋は、木材加工工場の建設とともに毎日5件は移住者用の住居を建ててくれている。ハイペースで非常にありがたい。工場が完成したらもっと早くなるだろう。
それはいいのだが、ここで解決すべき1つの問題点がある。それは“土地”だ。
シグナス区は急峻な山々に囲まれている。
このマグナ村はその中でも結構広い平地がある方なんだが、それでもまだまだ王都やヤマッハと比べると狭すぎる。
このままでは住宅を建設できる土地もなくなってしまう。もっとだだっ広い土地が欲しいのだ。
「社長。仕事を下さい! 今日は朝の買い出しが無かったので暇です!! 社長、仕事を下さい!!」
「カイトさん! 僕、最近あんまり走ってなくて退屈なんですけどー!? 退屈なんですけどぉー!?」
俺はクリスとカブに両側から催促されて耳を塞いだ。非常にうっとおしい。
「うっせえなお前ら。今日は北部のミスリル村へ視察に行くぞ! その途中で広い土地も見つけ出す! 探索だ!!」
するとクリスとカブがはしゃぎ出した。
「社長、分かりました! 土地探しですね!?」
「探索探索ぅぅーー!! 行きましょう!!」
テンション高えなコイツ等……。




