夏祭りに向かう途中で
夏休みの宿題はとっくに終わっていた八月中旬。本当にど真ん中の日からその町の夏祭りは始まる。それも三日間、長くて良いな……といつも思ってしまう。
母に駅まで車で送ってもらい、電車に乗った。すぐに紺野はんが乗り降りする駅に着く。
でも、まだ紺野はんは乗って来ない、そんな気がして何もせずにただ席に座っていた。
行く前に母に皆、浴衣じゃないかな? と言われたけれど、そんなことはない……と言って、普通の服で来た。夏服の普段着で会う友達というのは初めてだ。
少しのおしゃれもしてはいけない学校とは違って、少し自由が楽しめる外は良い。
電車のドアが開く。その途端、夏の山の自然の匂いと元気な蝉の声が聞こえて来た。
ああ、夏だ。と思う。そのままずっと進行方向を見ていたら、隣の車両に乗り込む普段着の紺野はんが見えた。私には気付いてない。
当たり前だ、何も連絡してないのだから。
これで良いと思って、そのまま次の駅に着き、降りた。そこでようやく会えたみたいに私は装う。
まだ蝉の声がうるさいね、とかそんな話をしながら階段を下りる。
彼は気付いていない。
だから、こうして待ち合わせ場所まで紫桃くんの話をしているんだ。
「白見さん知ってた? しとーさ、最近、塾の夏期講習行ってて、そのまま、その塾に入るんだって、だから、バイトできないって言われちった。まあ、オレも最近はしてないよ、バイト。受験だしさ、もうすぐ」
こういうお喋りが好きだ。
まだそんなには混んでいない駅を出て、そこからすぐの待ち合わせ場所に着いた。
この場所からちょっと歩いた所が夏祭りの場所だった。もうすでに祭りの音は響いていた。




