紺野大希の接近
帰りが遅くなってしまった。日直で遅くなり、学年末試験に向けて勉強をしていたら遅くなってしまった。
もうほとんど駅のホームに学生はいない。ぽつんと立っていても何も言われないし、見られていないだろう。
「あれ、白見さん?」
ちょうど良い声で呼び掛けられた。
「紺野さん」
少し驚いてしまった。ほとんどの事を決定したのは紺野さんだったけれど、それを全て伝えて来たのは紫桃くんだ。
「何で? って顔、してる」
ぷぷぷ……と自然と出て来る屈託のない笑顔だった。
「オレは部活だけど、白見さんは?」
「勉強……」
それくらいしか答えられない。
「そうか……、あ、そうだ、白見さん、オレが何部だか分かる?」
「え?」
暇なのだろうか、友達の姿は見当たらない。
「友達とかは居ないよ。この時間じゃね、一人だったから話し掛けられるかな、って思って」
確信犯だ。
「それで何部だか分かった?」
考える時間を与えられていたらしい。何も考えてない。
「えっと……」
「うん」
とても良い距離感だった。それは紫桃くんよりもちょうど良い身長差だったからなのか、紺野さんの雰囲気がそうさせるのか分からない。
「運動部?」
「ぶっぶー!」
とても幼稚な回答だったけど、とても明るくなるような言い方だったから、思わず笑い出しそうになってしまった。
「ふふ、文化部だよ、ヒントは」
「えっと……」
「うん、絵を描くことが得意かな、オレは」
「えっと、じゃあ、美術部?」
「ぶっぶー!」
また同じ回答。でも、少しばかり落ち着いたような言い方だった。
「美術部のように真面目じゃないよ、オレは」
「えっと、じゃあ……」
何部があるだろう。帰宅部の私にはそもそも何の部活がどれくらいあるのか分からない。よく目立つ野球部やチアリーダー部、吹奏楽部なら分かるが。
「まあ、絵を描くっていう所は同じだと思うけど。答えはね、イラスト部だよ」
「イラスト部」
初めて聞く言葉だった。
「まあ、知らなくても当然かな。白見さん、帰宅部でそんなに興味ないでしょ」
う、うん……と、こっくり頷きそうだった。
「イラスト部はね、美術部よりもゆるい、そして好きな絵を描いて、友達とかそういうのが好きな人と話し込んだりする所かな。言わば、オタクの巣窟」
すごい言葉が聞こえて来た。
「女ばかりだからね」
「大変なの?」
自然と訊いていた。
「まあ、でも白見さんのように、キレイ系美人はいないから大変じゃないよ」
え……、向かいのホームの電車と入れ違いにこちらのホームに電車が入って来た。




