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魔法祭前夜

更新遅くなってしまいすみません!

 俺たちは、ロビーに設置されていた椅子に腰掛けて他のみんなを待っていた。出入り口の扉は開いており、そこから吹き込む風で心地よい。


「お待たせ」


 顔を向けると、セリナたちが暖簾をくぐってこちらに向かっていた。顔をほんのりと赤く染まて、満足そうに柔らかく笑みを浮かべていた。


「カジムくんとゼノンくんは?」


 ぱたぱたと手で扇ぎながらセリナが尋ねる。


「まだ入っている」


 氷漬けにされてたからな。今は、温泉という神秘のお湯に癒されているに違いない。


「私のせいじゃないからね」


 私は何も悪くないと言わんばかりに、セリナは言い切ったあと、深くため息をついた。


「男って、そんなに女の裸が見たいの?」


 ミラが首を傾げて、聞いてくる。


「うーん。どうだろう?俺はそこまで興味ないかな。気になるなら、あのカジムくんとゼノンくんに聞いてみなよ」


「嫌よ。覗きしようとしてた奴らにそんな話したくもないわ」


 ミラはサッと自分の胸を手でクロスするように覆った。すると、カジムとゼノンが青の暖簾がくぐって姿を見せた。


「あ、覗き魔」


 イジェルが彼らを指さした。


「あー。こんな目に遭うなら、覗きなんてしなきゃよかった」


 後悔の言葉を並べながら、カジムはそう呟いた。


「やっぱりあんた達覗いていたんじゃない。この変態」


 イジェルの直球な言葉に、カジムはうぐっと言葉を詰まらせた。


「いや、あの竹垣の一番上に小さな小鳥がいたんだ。震えていたから、助けてやろうとしていたんだよ。だよな?」


 苦し紛れに言うゼノンの言葉に、カジムは何度も相槌を打つ。


「そんなところに小鳥なんて居なかったわよ。百歩譲って素直に謝罪の弁を述べるのならまだ許していたけど、こうも言い訳の言葉を並べられちゃ……ねぇ……」


 見苦しい言い訳に、ジェシカは深くため息をついた。他の者も同様だ。その雰囲気を感じ取ったのか、二人はアハハと苦笑いを浮かべるが、しばらくして、「すみませんでした」と言った。


「実際に見たわけじゃないから今回は許すけど、今度やったらタダじゃおかないからね!」


 強く言うスピカに、二人はただペコペコと頭を下げていた。


「んじゃ、戻るか」


 そう言って、我が家へと戻った。


「ただいま」


 ドアを開けると、お母さんが笑顔でこちらを見た。


「おかえり!みんな温泉気持ちよかった!?」


「はい。とっても」


 セリナは笑顔で応じる。


「良かった!みんなお腹空いているでしょ?ご飯出来たから座って座って!」


 テーブルには、豪勢な料理が多く並んでいた。お母さんには、明日魔法祭があることを伝えてあり、その料理からはより一層、気合いを入れて作ったというのが伝わってくる。みんなもお母さんの料理を見て、ゴクリと唾を飲み込んだ。それぞれ席に着いて、「いただきます」と言ったあと、目の前に広がる料理の数々を食らっていった。


「みんな、そんなに慌てなくても料理なんて逃げないから、ゆっくり食べなさい」


 自分の料理を美味しそうに頬張るみんなを見て、お母さんはとても嬉しそうに微笑みを浮かべた。


 俺も箸を伸ばして、特製唐揚げを口にする。

 

「美味い」


 衣はカリッと、中はとてもジューシーで噛むたびに肉汁が口の中に広がる。味付けはシンプルだが、だからこそ美味い。


「それ、美味しいの?」


 振り向くと、セリナが皿と箸を持ってこちらにいた。


「唐揚げ。食べたことないのか?」


「うん」


 世の中に唐揚げを食べたことがないやつが存在していたとは。人生の三割は損しているな。俺はセリナの皿を借りて、唐揚げを乗せる。


「ほら」


「ありがとう」


 セリナは恐る恐る唐揚げをカプッと齧った。


「……美味しい……」


「そうだろ?」


 セリナは唐揚げを美味しそうに頬張った。

 シヴァは炒飯を物凄い勢いで食べていた。おそらく人数分あったであろう炒飯を、一人で完食してしまったのだ。


「とても美味しいです!」


「良かった!追加で作っちゃおうかしら……」


「お願いします!」


 シヴァは満面の笑みでそう言うと、また別の方へと向かいご飯を食べていた。お母さんは再びキッチンの方へと向かい、追加の食事を作りに向かった。


「んー。このスープ、野菜たっぷりで美味しー」


「このハンバーグも肉汁溢れててうめー」


 それぞれが舌鼓をうちながらお母さんの料理を食べていた。


「みんな、とても楽しそうね」


「ああ」


 俺とセリナは目の前に広がる光景をぼんやりと見つめながら話した。こんな光景を見ることができるのも、あの時代があったからだとそう思える。だからこそ、今をしっかり生きたいとそう思えるのだ。


「……私もこうやって、みんなで食卓を囲める家庭に産まれたかったな」


「どういう意味だ?」


 ボソッと呟いたセリナの言葉が気にかかり、俺は尋ねた。


「ごめん。楽しい空間に、こんなしんみりするような話はダメよね。気にしないで忘れて。私も野菜スープ食べよっ」


 セリナは気にしないでと首を横に振り、スピカ達の方へと向かっていた。何故かその背中は、ものすごく寂しそうに見えた。


 それからどれだけ経っただろう。

 お母さんの料理は見事に完食されており、物凄く喜んでいた。そのあとみんなで食器を洗って、各々ジュースを手にしながら、くつろいでいた。


「もういい時間だし、そろそろお開きにしない?」


 セリナが言った。


「そうね。明日は魔法祭だし、身体を休めないと」


「どうしよう……今から少し緊張してきちゃった……」


「メリア、それは流石に早すぎるよー」


 と、楽しそうに談笑を交わしていた。


「アムルくん。最後はピシッとしめてよ」


 隣に座っていたシヴァが背中をぽんぽん叩く。


「そこは普通リーダーが言うんじゃないか?」


「半ば強制でしょ?一番の実力者はアムルなんだから」


「そうそう。かっこよく頼むぜ!」


 ここまで言われては仕方がない。俺は立ち上がり、みんなの前に立つ。なんか昔もこんなことよくやっていたな。人前で話すのはあまり得意ではないんだがな。コホンと咳払いをして、


「入学してからいろんなことがあった。一つ星だからだのと差別に苦しんできたこともあるだろう。魔法祭でも、そう言った声は少なからず上がると思う。だが、もし俺たちがそこで優勝したら、俺たち一つ星の扱いだって多少は変わるんじゃないか?」


 彼らは相槌をうった。


「明日の魔法祭、思いっきり楽しんで、二つ星の奴らにギャフンと言わせてやろうぜ」


「「おおっっ!!!」」


 魔法祭前夜。それぞれの想いを一つにして、決起集会は幕をとじた。

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