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逆ナン

 その後の模擬戦は、二年生の全勝ということで幕を閉じた。ディアスは五分ほどで動けるようになり、

 俺のことを忌々しそうに睨みつけた後足早に修練場を後にした。ラドとアレンも興味を失ったように、それぞれ元のいた場所に戻った。

 シェスタは一年生が座っている観客席に混じり、俺の左側に座っていた。

 

「ねぇねえ。名前。名前なんて言うの?」


「アムル・シルフィルク」


「アーくんか。いい名前ね。アーくん一つ星なのにこんなに強いなんて、お姉さんびっくりしちゃった」


 そう言って、身体を密着させてくる。そういえばローゼのこともローちゃんと呼んでいたな。シェスタ独特のあだ名の付け方なのかもな。


「先輩、二年生の席はあっちなんで、移動してもらってもいいですか?それと身体を密着させるのやめてください。アムルも迷惑だと思っていますよ」


 俺の右側から、セリナの鋭い声が飛ぶ。


「……誰?」


 シェスタは首を傾げる。


「セリナ・アークネルドです」


「二つ星……この辺だと見ない顔ね」


 セリナの胸元に付いている星を見て、シェスタは指を頬に当てて、記憶を遡るかのように顔をあげる。


「少し遠いところから来ていましてね」


「へぇー。そうなんだ。それで、セリナさんは、なんの権限があって≪四帝≫の私にそう言ってるのかな?」


「彼がいる班のリーダーです」


「リーダーっていうだけで、ズケズケと私とアーくんだけの空間の邪魔をしないでくれないかな?」


 俺を挟んでセリナとシェスタは火花を散らしている。そういうのは、誰にも迷惑がかからないところでやってもらいたいものだ。


「とにかく離れてくださいっ!」


「なんで?別にくっついてたってあなたに迷惑はかけていないんだから問題ないでしょ。それとも……嫉妬しちゃった?」


「……はあっ!?何言ってるんですかっ!?ふざけたこと言っていないで早く離れて!」


「やーだよー」


 やれやれ。これではキリがないな。


「シェスタ。うちのリーダーは怒らせたら怖くてな。この辺で引いてくれないか?」


「え〜」


 どうやら納得がいっていないようだ。ふむ、どうやら多少のリスクは背負わなければいけないようだ。


「じゃあ魔法祭で、どちらがより多く勝ち進んだかで決めるとしよう。もしそちらが勝てば、シェスタのわがままに一日つきあってやる」


「ホントにっ!?」


 シェスタは顔を近づける。


「約束は守る」


「分かったっ!約束だからね!忘れないでよっ!」


 彼女は満面の笑みを浮かべてカップに残ってる飲み物を飲み干すと、立ち上がって鼻歌混じりにスキップをしながら出ていった。≪四帝≫の連中は、一年の二つ星の奴らよりも、さらに個性が強いな。

 さらに、男子生徒たちからは嫉妬の視線を浴びせられた。セリナとシェスタは各クラスでもトップクラスに入るくらいの美貌の持ち主だろう。


「アムルくんはモテるね」


 後ろからシヴァがまるで他人事のように呟く。


「代わるか?」


「いや、俺はそういうの得意じゃないから」


 首を横に振って笑顔を見せた。こんなものに得意とか不得意とかあるのかと疑問はあるが。


「ア、アムル。あのね……」


 セリナが顔を朱色に染めながら、こちらを見ていた。


「安心しろ。気にしていない」


 大方、シェスタの軽口だろう。いちいち間に受けていては疲れてしまうだけだ。そういうのは軽く受け流しておくのが正解だろう。


「そ、そう。ならいいの」


 セリナは安心したようにホッと一息つく。

 最後の班の模擬戦が終了し、≪転移(ゲイラス)≫で修練場に戻ってきた。


「これで本日の模擬戦は終了です。各々足りないところがより明確に分かりましたね。魔法祭までの一週間。一日も無駄にせず、研鑽に励んでください。身体にどこか異常がある生徒は、保健室で治療を受けてきてくださいね」


 リエルがそう言い終わると同時に、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。二年生は普段と変わらない足取りで次々と去っていく。


「……死ぬって……」


「一年でこんなに差がつくもんなのかよ……恐ろしいったらありゃしない……」


 この絵図、前にも見たな。彼らの表情は疲れ切っており、次の授業にも影響が出そうなぐらいだ。


「ふゎーあ」


 俺の後ろを歩くシヴァも大きな欠伸をかます。

 目元に涙が浮かんだ。


「授業中は寝るなよ」


「ああ、頑張るよ」


 シヴァは目を擦りながら言った。

現実で言うところの体育の授業が終わった後の感じですよね。

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