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合格者たち

 ≪転移(ゲイラス)≫で送られたのは第二修練場。試験を受ける前までの修練場とは違い室内。ここの修練場も十分広いが、室外に比べるとどうしても物足りなさを感じてしまう。

 そこには見知らぬ顔の受験生たちの姿があり、転移で現れた俺を見た。共に試験を受けた者たちの姿はなかった。そこにいるのは四◯人。彼らは試験の合格者ということだろう。

 

「アムル!」


 聞き覚えのある声が修練場に響く。立ち尽くす受験生たちの間をすり抜け、長い白髪を揺らしながらセリナがこちらに向かってきた。


「セリナも合格できたんだな。おめでとう」


「ありがとう……って私の試験見てなかったの?テレビ中継で映っていたわよね?」


 俺の言葉にセリナは噛みつき、不服そうにこちらを睨む。


「あぁ、少し席を外しててな。戻ったときにはセリナの試験が終わってたんだ」


「そう、ならいいわ」


 俺の言い分に納得したのか、軽く息を吐いてそう言った。


 俺はこの場にいる受験生を見渡した。合格者というだけあって、俺が試験を受けた受験生たちよりも魔力は高いようだ。

 特に三人。その中にはセリナも含んでいるが、彼らはその中でも突出している。顔までは分からないが、顔を合わせるのが楽しみだ。


 しかし、やたらこちらに視線を感じるな。こそこそと話し声が聞こえる。


「セリナ。なんか俺たち見られていないか?」


「あぁ。それはね」


 セリナに問いかけると、「こっち顔を近づけろ」とでも言いたいように手で合図を送ってくる。俺は顔を近づけると、セリナは耳打ちをして、


「それは俺たちじゃなくて、アムル。アムルが注目されているの」


「なんでだ?」


「試験で見せたあの魔法。あの魔法が一体なんなのかって途中からみんなで騒ぎ出して」


 説明してくれているが、セリナ自身も驚きを隠せてはいないようだった。魔法……。≪白銀彗星(マギアド・ネビュラ)≫のことか。


「あぁ、さっき俺が使った魔法は古代魔法と呼ばれるものだ」


「古代……魔法ってなに?」


 セリナは首を傾げて俺に問いかける。


「知らないのか?」


「そんな魔法、初めて聞いたわ」


 どうやら本当に知らないらしい。


 確かに古代魔法≪白銀彗星(マギアド・ネビュラ)≫は古の時代より存在する魔法であり、古代術式を解読、理解をするのに相当の時間を要してしまった。

 転生前、戦争が絶えぬ時代では、魔族との戦闘に有効だと考えられていたため古代術式を解読する専門家も存在していたのだが、平和となり、戦争がなくなった今では古代術式を解読する必要も無くなったはずだ。


 だとすれば、古代魔法に通ずる者もほとんどいないだろう。それに伴い古代魔法の存在自体すら知っていないと考えてもいい。セリナの反応がそれを示している。

 初めて目撃する古代魔法。魔導師を目指す彼らにとって興味がないわけがない。それが魔導師という生き物なのだ。


「アムル、その古代魔法?っていうのはいつから使えるようになったの?」


 セリナも当然、魔導師を目指すもの。だとすれば食いついてこないわけがない。


「三〇〇年くらい前からだな」


「……はい?」


 セリナから戸惑いの声が聞こえる。


「三〇〇年前くらい前から」


「三〇〇年って、だとしたらアムル、相当長生きしているお爺ちゃんよ」


 セリナの反応は至極当然なものなのだがな。俺が言っていることも嘘ではない。ただ、この世界に記憶消去の魔法をかけてしまった以上、『剣聖』アムル・シルフィルクの存在もこの世から消えてしまっている。何を言っても納得しないのは目に見える光景だ。


「まぁ、いいわ」と自分の白く、美しい髪をサラッと払って、


「今度、その古代魔法っていうのを教えて欲しいの」


「別に構わないが、古代文字の解読から始めないといけないぞ」


「魔法の勉強なら何をやっても苦になんてならないわ。一流の魔導師になる。そのために私はこの魔法学院に入学したんだもの」


 セリナの目は未来を見据えていた。魔導師にとって、一番大切なものは向上心だ。現状に満足してしまった瞬間、それより上には上がれない。劣化の後を辿るだけだ。セリナはいずれ、素晴らしい魔導師になれると俺はそう思った。


「そういえば、セリナはどうやって勝ち残ったんだ」


 セリナの試験は見逃してしまった。今後も彼女と接していくことを考えると、そういうのも知っておくべきだろう。


「私?えっとね。試験のステージは、地形の役九割が湖のステージだったの。私を含めた受験生全員が湖の中でのスタートでね」


「ほう」


 それではかなり動きが制限されてしまうな。俺自身、そういった場所での戦闘経験はなかったはずだ。地上に出て、そこから戦いの策を練っていくのが定石だろう。水中戦というのも、一つの手ではあるがあまり考えにくい。


「みんな地上に向けて泳いで行ったんだけど、私思ったの。この場でみんなを氷漬けにしちゃえばいいんじゃないかって。私、泳ぎは得意だからみんなより早く水中から出て、湖全体に向けて氷魔法で、湖を凍らせた」


「どれぐらい広かったんだ?」


「オルガスネーテ湖くらいの広さね」


 淡々と言っているが、かなりえげつないことをしているな。オルガスネーテ湖は、人間界でも五本の指に入るほどの広いと言われている湖だ。それを氷漬けにするなど、相当な広範囲魔法を使用したのだろう。


「それで、受験生のみんな動けなくなって、戦闘続行不可能ってなって私が合格者っていう形になった」


 ガラクとセリナが同じ組になっていたらと思うと、セリナはガラクに対してだけはもっと強烈な魔法を喰らわせていただろうな。


「なんだかんだあったけど、お互い約束は果たしたわね。これからもよろしく。アムル」


「あぁ」

 

 そう言って、この魔法学院で最初にできた友達と握手を交わした。

明日は投稿お休みとさせていただきます。

すみません。

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