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実は、あなたの前世のことなんですけどね  作者: 渡邊裕多郎
終章
52/53

その1



        シルヴィア・チャーチ




「皆様、ごきげんよう」


 一週間ほどかけて、上に提出する報告書を制作してから、私はツイン学園の中庭へ顔をだしました。昼食中だったメアリー様とエイブラハム様が笑顔で私を出迎えてくださいます。――なんとなく、畏怖の感情が顔に浮いているような気がしないこともありませんでしたが、とりあえずは好意的な対応をしてくださいました。


「お久しぶりです、シルヴィア様」


「シルヴィア様は、あらためてツイン学園に通われるのですか?」


「ええ。よっぽどおかしなことがない限り、そうするつもりです。あ、そうそう、しばらく休んでいたので、遅れた分の授業の内容を取り戻したいのですが」


 私が言うと、メアリー様が笑顔のままうなずかれました。


「私のノートでよろしかったら、放課後にお貸しいたしますが?」


「それはありがとうございます。では、放課後に、是非とも。読ませていただいたら、すぐにお返ししますので」


 と言ってから、私は周囲を見まわしました。


「あの、エリザベス様とエイプリル様、それからアーサー様は?」


 一週間前は、一触即発だったり、仲のいい幼なじみだったり、新しく入ってきたお転婆さんだったり、いろいろ賑やかでしたのに。不思議に思って質問したら、メアリー様が苦笑しながら遠くを指さしました。


「エリザベスでしたら、あそこで、ひとりで昼食を摂っていますが」


 言われて私が目をむけると、なるほど、エリザベス様が離れた場所で、ひとりでベンチに座ってサンドイッチを食べていらっしゃいました。――何かあったのかな、と、私も少しだけ考えましたが、それは杞憂でした。私たちの視線に気づいたエリザベス様が、笑顔でこちらに手を振ってきます。


「たぶん、私たちに気を使ってくれているのでしょう」


 これはエイブラハム様の言葉でした。


「私とメアリー様が一緒にいるときは、いつの間にか、エリザベス様は距離をとって、離れた場所にひとりでいらっしゃいます。もちろん、私とメアリー様が別々にいるときは、常日頃からの友人という顔で声をかけてくださるのですが」


「私にも、同じような調子です」


 メアリー様も、エイブラハム様の言葉に同調されました。あらためて私が見ると、エイブラハム様とメアリー様は手をつないでいらっしゃいます。


「――ああ、そういうことでしたか。おめでとうございます」


 形式的な言葉ではなく、私は心からおふたりのことを祝福いたしました。


「それで、エイプリル様とアーサー様は?」


「ここにはいません。もう食事は終わらせて、いまごろ闘技場で模擬訓練でもやっていることでしょう」


 よくわからないことをエイブラハム様が言ってきました。


「あの、男女で模擬訓練ですか?」


「それがあのふたりの――というか、魔族のエイプリル様にとっての、楽しいお遊びらしいのです」


 メアリー様がエイブラハム様の言葉に補足しました。


「実は、シルヴィア様がお仕事でここから去ったあと、エイプリル様が、アーサー様にとても積極的な態度をとりまして。それで、最初は戸惑っていたアーサー様も、いまはエイプリル様のお気持ちを受け入れて、仲良く一緒に過ごしているのです」


「まあ、エイプリルは私と同じ魔族ですし、欲望を制御する術もあまり心得ておりませんから、楽しい遊びが殴り合い、ということになってしまっているわけですが」


「ははあ」


 とりあえず私はうなずきました。そういえば、私も前世ではそんな感じでしたっけ。――アーサー様は前世が上級魔族です。エイプリル様も、それで、なんとなく魅力を感じたのかもしれません。


 結局、どこかで何か、影響はでているのでしょう。


「では、エイプリル様とアーサー様へのあいさつは、放課後にしておきます」


 言って、私はメアリー様とエイブラハム様に会釈をしました。


「いまの私は、エリザベス様を見習って、少し離れた場所で食事をすることにしますので。それではごきげんよう」


 私はメアリー様に背をむけて、エリザベス様のほうへ歩きだしました。エリザベス様はおひとりで食事をされています。私も、誰か決まったお相手がいるわけではありません。ここはお互い、同じ境遇ということで、エリザベス様と仲良くしようと思っていたのですが、話はそう簡単には進みませんでした。

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