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すると、衝立の上から室内の全景が目に飛び込んできた。
ガランとした木造家屋で、床全面がフローリングつか板の間。
家具類は無くて、いくつかの衝立が規則正しく間仕切りしてある。
それと驚いたのは、俺の他にも人がいたってことかな。
衝立でそれぞれ仕切られたスペースに3人分、頭がひょこひょこしてるのが見え隠れしてる。
3人のうち、1人は坊主頭、残りの2人はちょんまげ。
またちょんまげかい!
でも、ハゲもちょんまげもサムライには見えない。
町人役のエキストラか何か?
あきれながら見てると、3人は床に敷いてあった御座を慣れた手つきでクルクル巻いて、壁に立て掛けだした。
御座で寝てたのは、俺だけじゃなかったってワケですか、そーですか。
ここじゃ床に御座を敷いて寝るのがデフォ?
まあ、俳優ってのは、役づくりのためにこんなことするのかも知れん。
テレビでそんな話を見た気がするし。
それにしても、みんな煙のことなど気にしてる様子も無いから不思議。
でも、気にしだしたら気になるもんで、煙の臭いがどうしても鼻につく。
煙は這うように天井をつたって、戸板の隙間から外へ出ている。
煙のもとを目でたどると、板の間の途切れた先に土間があって、その隅から発生しているようだ。
初めて見るけど、あれがカマドってものなのか?
小さめのかまくらみたいな格好の上に土鍋が載せてあって、下の穴の中で火が焚かれている。
その前には、しゃがみこんで背中を丸めた人影が見える。
火の加減でも見てるのだろうか。
へぇ、本格的じゃん
俺は少し感心してしまった。
そうこうするうち、板の間にいるちょんまげが、のっそりと立ち上がった。
何をするのか見ていると、ちょんまげは、両手で掃き出し窓の戸板をつかんで、ガタピシいわせながら引きあけた。