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ぐんっと手に伝わる抵抗感、続く瞬間、ブチブチッと軽くなる。
「ひっぎゃあ!」
ちょんまげヤローが頭を両手で押さえて悲鳴をあげた。
・・・え?地毛なん?
慌てて引っ込めた手を広げた。
指にたくさんの毛が絡みついている。
「うっうわぁ!」
息とともに悲鳴が口を突いて出た。
情けないぐらい手がブルブル震えている。
俺は、これまで1度だってケンカなんてしたことがない。
生まれて初めて、人に暴力をふるっちまった。
興奮か恐怖か、カチカチ震える歯を止めたくて、俺はわななく唇を噛み締めた。
その時、目の前の地面に、スッと影が差した。
とたん、髪の毛が皮膚ごと引っ張られ、猛烈な痛みが背筋を駆け抜ける。
「うっあ・・・」
声にならない声が口から漏れる。
抗えない力で引きずられ、無理矢理身体を起こされた。
「さ・・・サムライ?」
こいつ俳優なんかじゃない・・・
他の連中とは、着ている物も雰囲気も明らかに違う。
俺の髪の毛をつかんでいる男の目には、何のためらいも感じられなかった。
男の手がひらめき、両頬に熱い痛みがはじける。
目にチカチカと星が散り、ジーンと耳の奥が鳴った。
鼻から生温かい感触がしたたり、口許に血の味が忍び込む。
みぞおちがめり込む感覚、痛みで息が詰まり、苦酸っぱい胃液がのどを焼く。
ほんの一瞬の出来事だ。
「げ・・・え・・・」
俺は、自分の吐いた胃液の中に顔を埋めて突っ伏した。




