100/848
1
枯れ草を踏みしだく足音、具足の擦れる音。
少しずつ、意識が現実に引き戻されてくる。
「そろそろ起きよ!
俊之介さ」
「え?もう朝?」
「今は七つじゃ」
「そっか、これが七つ刻ってヤツか」
見上げた空はまだ星が瞬き、東の空には明るくなる気配さえ感じられない。
草むらからは、コオロギの声が聞こえてくる。
身体を起こそうとすると、あちこちの節々が痛んだ。
今さらながら、地面のゴツゴツした感触を意識してしまう。
あんな板の間に御座を敷いただけの寝床でも、これに比べたらどれほど良かったか。
横を見ると、小平太はもう支度を整えていた。
そしてにいっと笑って握り飯を差し出してくる。
「今のうちに食うておけ。
戦が始まらば食うてる暇は無かろう」
「サンキュ」
受け取ろうとして手を伸ばしたら、俺の手はブルブル震えていた。
歯もカチカチと鳴っている。
袖口も衿も冷たく重く身体にまとわりつく。
身体がすっかり冷えきっていた。
ああ、そうか、寝てる間に夜露が降りたんだ
湯気のたつ握り飯を受けとると、小平太が笑いかけた。
「飯を食わば、少しは暖まろう」
「うん、だね」
「さて、ワシは役目に戻ろうぞ」
そう言うと小平太は、軽く手を振って立ち去った。
気がつくと周りの者たちもゴソゴソ起き出してくる。
俺もそろそろ仕事の準備だ。
握り飯を口に押し込みながら腰をあげた。




