9.
きょとんとした私に、シグルド殿下が続ける。
「その……我が国に、この大陸に、皆にとって……」
「シグルド殿下にとっては?」
だからつい、聞いてしまった。
「も、もちろん私にとっても……!」
「シグルド殿下……」
胸の前で手を組んだ私に、シグルド殿下が両腕を広げる。
私は勢い良く飛び込んだ……のではなく、そっと歩み寄った。
すると、シグルド殿下もそっと私を抱きしめた。
「いつのまにか、カスミがかけがえのない存在になっていっていた」
「うん」
「だから、これからも私と共にあって欲しい」
「うん」
「婚約の申し込みはまだ先でいいか?」
「うん、いいよ」
苦笑いで言うシグルド殿下に、小さく笑いながら返して、私からも抱きついた。
「好きです。シグルド殿下」
「カスミ、私もだよ。大好きだ」
笑顔を交わしたあと、シグルド殿下が私の手を取ってそっと口付けた。
◇
「では念のために解毒魔法をおかけしますね」
「はい、お願いします」
朝、専属護衛としてついてくれた何人かのうちの一人、赤毛茶眼の女性宮廷魔法師エマさんに手を差し出して魔法をかけてもらう。
もう一人、騎士の男性の黒髪金眼のアランさんは今は部屋の隅に立っている。
この後はレーヴェ先生に魅了魔法無効の魔法をかけてもらいに行く。
同じ宮廷魔法師でもレーヴェ先生はエマさんより階級が上なのだとか。
魅了魔法に関する魔法は魔法の中でも複雑な部類で扱える人が少ないらしい。
王族になると魅了魔法無効の魔導具を身に付けるけど、大変高価で製作も難しいから、量産出来るものではないとのことで。
「要人って大変なんだなあ……」




