2.
そんなこんなで一人で唸っていたら、部屋のドアがノックされた。
「はい」
「私だ。入るからな」
「ど、どうぞ」
私だじゃなくて名乗って欲しい……とは言えない。
この部屋に来る人は限られてるけどね。
今朝食事を運んできてくれて、ドレスの着替えを手伝ってくれたグレーな髪で青い瞳の猫耳の侍女さんにもう一度会いたい。
また来てくれるかな?
「シグルド殿下、お待ちしておりました」
「気楽に話してくれていい。恐らくこれから長い人生を共に歩むのだから」
「はい?」
ナガイジンセイヲトモニアユム? って何かの呪文かな。
そうであって欲しい。
「では早速始めよう」
「あ、はい」
猫脚の濃紺のソファに座るように促され、従ったら、シグルド
殿下が私の手を取って、今度こそ聞き取れない呪文を唱え始めた。
すると、淡い光に包まれ身体中がぽかぽかしだした。
時間にして十分弱。
横を見ると、殿下に微笑まれた。
ぽかぽかしてる顔がさらに赤くなった気がする。
殿下が何か呟くと、光がおさまり、一気に身体がズンと重くなった。
聞いてないんですけど、この作用。
「大丈夫? これでも抑えた方なんだけど……慣れるまでは渡す魔力も最小限にしよう」
「これ、最小限……?」
私、器としてもつんだろうか?
不安です……。
◇
「異世界間召喚に耐えられるキャパシティがあるならツラいのは最初だけかと……頑張って下さいませにゃ」
「にゃん……」
「うにゃ」
抱き着きたい……!
我慢我慢。
今朝も来てくれた私よりも幼く見えるこちらの猫耳侍女さんは、伯爵家のご令嬢らしい。
行儀見習いで城にいるのだとか。
「今日は晩餐会ですにゃ、張り切って準備させていただきますにゃ」
「うん、よろしくお願いします」
マナーとかさっぱり分からないんだけど、なんとかなる……かなあ?
ドレスはどちらにしましょうと楽しそうに聞いてくるルーシャに癒されながらも、そっと溜め息を吐き出した。




