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ろりかむほーむ ~幼女がせめてきたぞっ!~  作者: 白井アレ
第一章 祝福された動人形(Living doll)
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とある天気のよい平凡な一日

今日もいい天気!

と言うことでほんへです。


大分暖かくなってきました。

そろそろ変態の季節ですかね?


 「まぶしっ……」


 窓越しにも関わらず目を突き刺してくる太陽光にしかめっ面をすると水野蒼太(みずのそうた)はカーテンを閉めた。

 今日は降水確率0%で綿雲が青空を彩るよく晴れた一日。

 こんな日は毎朝五月蝿い雀でも見習って空でも飛びたい気分だ。

 だけど蒼太は相も変わらず引きこもり生活を続ける。

 これと言って用事がないからだ。

 決して親の遺産を食い潰す親不孝もので世間様の目が痛いと言う理由ではない。

 断じて違う。


 「……続き描くか」


 彼だって二十歳中盤になってまでただヒキニートしているわけではないのだ。

 今は絵の勉強をしている。

 独学だが見られる絵にはなってきたと彼自身が思っているレベルだがいずれは有名作品のイラストを手掛け、版権利用料で暮らす事が夢だった。


 「んんー……」


 しかし一朝一夕でうまくなれる世界ではないので、思っていたのと違う絵が出来上がる毎日。

 頭の中でどんなに良いアイディアが浮かんでも形にできないのは歯痒かった。


 「……よしっ!」


 これも修行だと割り切って焦る気持ちを落ち着かせると、一旦お絵描きは止めて動画サイトを開く。

 人間の集中力はもって30分。息抜きも大切な時間なのだ。

 動画をロードしている合間に早めの昼御飯を作るため台所へ向かう。

 今日のメニューも一人暮らしのお供、カップラーメンだ。


 ドタタッ


 「ん……?」


 お湯を入れていると何かが落ちたような物音が居間から聞こえてきた。


 (積んでた漫画でも倒壊したか?)


 そんな軽い気持ちでカップラーメンの蓋を押さえながら足で扉を押し開いて居間へと戻った。


 「……はぇ?」


 なので心の準備をしていなかった蒼太は間抜けな声を漏らすことになった。


 「どちら様……?」


 そこには女の子が一人いた。

 年齢は10代前半といったところだろうか。

 病的な程白いワンピースに、染めているのか透き通るような水色をした長髪がよく映えている。

 その現実離れした幻想的な光景は天使が降りてきたと言われたら信じただろう。

 彼女はフローリングにへたりこみ、あどけなさの残る顔に混乱と驚きの表情を浮かべて放心している。


 「……っ! 戻らなきゃ! お願いっ! 力を貸して欲しいのだわ!」

 「えっ? いや……えっ?」

 「お願い!」


 その子は急に我に返ったかと思うとカップラーメンで両手がふさがる蒼太にすがり付いて助けを求めてきた。

 そうは言われても困る。

 助けたいのは山々だが状況が理解できていない。

 どうやってうちにはいったのか。

 その服はなんなのか。

 あり得ない色をした髪は地毛なのか。

 聞きたいことが山ほどある。


 「何をすれば良い?」


 だが、取り敢えずカップラーメンを机の上に置いた蒼太はそんな言葉たちは全部飲み込んで彼女を助けることに注力することにした。

 幼女が必死に助けを求めて来たのだ。

 どのような状況であれ、それに答えてやらねば男が廃ると言うもの。

 この時の効果音を付けるとしたら『キリッ』だろう。


 「生命力を貸してくれるだけで良いのだわ」

 「うん? もちろん良いけど……んん?」


 だが話が変な方向に転がり始めた。

 いや、まだ慌てるような時間じゃない。

 しばらく成り行きに任せよう。


 「祝福は我が身にあり」


 すると彼女は蒼太の胸に手を当て、何やら呪文めいたものを唱え始めた。


 「神の奇跡の代行者として命じるのだわ」


 ここらでイタズラやドッキリを疑い始める。

 カメラは何処だろうと部屋を見渡す。 


 「彼の者に祝福を! 飛んで! あの子の元へ!」

 「……」


 たがしかし、何も起こらなかった。

 当たり前だ。

 魔法でもあるんだったら自分が使いたいくらいだ。

 別の意味での魔法使いにならなれそうだが。


 「何で!? まさか本当に世界が違う? それとも生命力不足? どうすれば……」


 彼女は迫真の演技で悩み始める。

 ここまでやってくれて実に申し訳ないのだが流石にもう頃合いだろう。

 蒼太は悪質な遊びはもう終わりにしようと少女に視線を合わせて優しく語りかける。


 「飛ぶって空でも飛びたいのぉぉぉぉ!?」


 そう幼女に語りかけた途端、視界が青に染まった。

 それと同時に訪れた内蔵を押し潰すかのような風圧。


 「えぇぇぇぇ!?」


 そして風に揉まれながら見えた眼下には航空写真で見るような僕の住む町の風景が広がっていた。

 確かに空でも飛んでみたいとは思ったがこれではただの紐無しバンジージャンプだ。


 「ここは……空!?」


 そしてすぐ隣には助けを求めてきた幼女がいた。

 空に溶けてしまいそうな水色の髪を暴れるままにして冷静に状況を判断している。


 「もしかしてあなた人間なの!?」

 「はぁぁぁ!? そうだけどぉぉぉぉ!?」


 彼女はそんな当たり前のことを聞いてきた。

 むしろ人間以外の何に見えると言うのだろうか。

 蒼太は地味にショックを受ける。


 「ごめんない! まさか人間とは思わなかったのだわ! だからたぶん願いが貴方のものに上書きされてしまったのだわー!」

 「えぇぇぇぇぇ!?」


 何を言っているのかわからなかった。

 まさか本当に奇跡だか祝福だかがあるというのだろうか。


 「取り合えずっ、どうにかしてぇぇ!」


 自由落下を続ける蒼太は無様にも幼女に助けを求める。

 立場が逆転している気がするが細かいことはきにしてはダメだ。

 この危機的状況を切り抜けるにはそれこそ奇跡か魔法しかないのだから。


 「そうでしたわ! 私の手を取って! そして奇跡を願うのだわ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 「はぁっ!? なにを言って――――」

 「いいから早くっ!」


 願うだけで何でもできると思ったら大間違いだ。

 だけどもう地面はすぐそこ。

 迷っている時間はない。


 「ええい! ままよ!」


 もうどうにでもなれと言う気持ちで蒼太は幼女の小さな手を握りしめ、ぎゅっと目を瞑ると自宅の居間を思い浮かべる。

 いつも通りパソコンの前で無意味な時間を過ごしている自分を。

 幼い頃からずっと住んでいるその一軒家の一室を詳細に思い浮かべることは容易だった。

 だがそれがまるで走馬灯のようで生きた心地がしない。

 もうダメかもしれない。

 何も成し遂げられなかった蒼太の人生は此処で潰れて終わる――――。


 「あれ……?」 


 今生にお別れを告げたが一向に衝撃は訪れない。

 そして殴り付けてくるようだった風圧がいつの間にか消えている。

 まさかと思いながら恐る恐る目を開けとそこは慣れ親しんだ家のいつもの居間だった。

 何事もなくただ幼女の手を強く握りながら突っ立っている。

 まるで白昼夢でも見ていたかのような気分だ。


 「やっぱり! 人間なのだわ!」


 あまりのことに呆けていると幼女は興奮ぎみに蒼太の手を両手で握り返してきた。


 「いや、何が起きた……?」


 蒼太が人間なのは当たり前だとしてそんなことよりこの不可解な現象の説明を求める。

 今もまだ夢の中にいるようで地に足がつかない。


 「突然の事で驚いたと思うけど、簡潔に言うとテレポーションして戻ってきたのだわ」

 「はぁ……」


 彼女は簡単に言うがそんなSFのような遠い未来の技術がたった一人の幼女にそう簡単にできてたまるか。

 そんな蒼太の怪訝な思いが顔に出てたのか幼女は付け加えるように言った。


 「私は奇跡を起こすことができるのだわ。でも何でもアリじゃなくて証明可能な奇跡しか起こせないし、その奇跡の大きさによって消費する生命力も多くなるのだわ」

 「……君は一体何者なんだ?」


 奇跡だかなんだか知らないが、ただの幼女にこんなことが出来る訳がない。


 「あら、そうですわね。申し遅れましたわ」


 すると彼女は優雅にワンピースの裾を持ち上げて一礼して見せた。


 「私は祝福された(Blessed)子供(Child)。お父様によって造られた正真正銘の機械人形(Automata)。ルルリエ=ルルアーデですわ」


 その時ちらりと見えた彼女の白く、細い膝はドールのような球体間接で繋がっていた。


続きは一週間後!!

基本、作者が楽しいだけの物語になっています。


純粋な人間ではない。

だがそれが良い。

普通の幼女だったら普通に犯罪ですね。

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