お風呂上りのお昼ご飯
何か書こうと思ってたけど忘れた。
稀によくあるど忘れ現象。
ちゃんとメモしようね!(自戒
とりまブクマ評価ありがとうございます!
水野蒼太の平穏で優雅なスローライフは崩壊した。
堅牢な一人だけの城だったはずの自宅はあれよこれよと言う間に占領された。
まだルルリエだけなら生活はさほど変わらないと考えていたがもう一人、それも知り合いが追加となるとそうもいかない。
何故ならこちらを知っている分遠慮がないからだ。
こうなってくると食費が増えるだけに留まらず一人の時間がごっそり減るだろう。
「ま、賑やかになって良いか……」
だが男の一人暮らしに潤いが出るのは良いことだ。
うだうだ文句を言うよりプラス思考で生きて行こう。
蒼太は両親が死んだときでさえそうやって前向きに生きてきた。
それは利己的故かそれとも他人に興味がない故か蒼太自身にも解りかねた。
「おにーちゃん! あがったよー!」
「やっとか……」
暇だったからか少々余計なことまで考えていた蒼太は底抜けに明るい声に顔を上げた。
霧子とルルリエがやっと風呂から上がったらしい。
「変じゃないですか?」
「お、おう……」
そしてルルリエの姿を見た蒼太は目を見開いた。
霧子に結われたのか風呂から上がったルルリエのストレートヘアーがツインテールになっていたのだ。
今までのどこか神秘的な雰囲気も良かったが髪型を変えたことにより彼女の天真爛漫さが表に出ている。
控えめに言ってとても可愛らしかった。
服は変わらず蒼太のお下がりだがそれが逆に活発なボーイッシュさを演出しており、動く度にちらりと覗くうなじの柔毛を触りたいだの機械とは思えぬ仄かに上気したもちもちの頬を摘まみたいだの様々な邪念が脳裏を過る。礼賛の言葉が喉の奥にあふれる。
「か、かわいいと思う」
だが口に出して言うにはどうにも恥ずかしく、口ごもりながら当たり障りの無い言葉をかけるに留まった。
「あ、ありがとう……嬉しいのだわ」
それでも褒められる事に慣れていないルルリエにはそれで十分だったようで頬を赤らめながら柔らかくはにかむ。
「全く……お似合いね……」
蒼太とルルリエが二人の世界に入りかけていたところで霧子がため息混じりに口を挟んだ。
「で、ご飯出来てる?」
「あ、あぁもちろん」
蒼太だってただなにもせずに居たわけではない。
可愛い従兄妹と動く人形のために昼御飯を作っていたのだ。
「ほら」
そう言って机の上に置かれた物は醤油味のカップラーメンと茹で玉子が一つ。
「んん? なにこれ?」
「だからお昼御飯だけど? あ、ルルちゃんは食べないんだっけ」
「いえ、ためしに今朝のカップラーメンの残りを少し食べてみたのだけれど食べる事でも微量に生命力の補充はできるようだし食べるのだわ」
「じゃあお湯入れてこうか。この粉とかやくを入れてからお湯入れるんだよ」
「分かったのだわ」
「待って。ちょっと待って……これが? これが成長期の女の子に出すご飯? 本気?」
普通に進みかけている食卓に霧子はストップをかけた。
こんなに彩りが無い食事など若い女の子が食べるようなものではない。
「完全栄養食の卵さんをなめるなよ? カップラーメンで腹を満たし、卵で栄養をとる! 完璧で迅速で美味しい完成された食事じゃないか!」
「信っじらんない……まさかその買ってきたものも……」
「うん。8割片カップラーメン」
「嘘でしょ……」
霧子は絶句した。
ガサッとビニール袋の中から出されたのは様々な種類のカップラーメン。
飽きないように味噌や塩と味も変えているのが憎らしい。
「いつもこんなもんだったじゃないか」
「そうなの……?」
霧子はあきれたような声を上げたがすぐ後に頭をふった。
「いえ、そうね。うん。そうだったわ。お兄ちゃんはずぼらだったわ」
「でしょー?」
「褒めてないからね? これは心配になってきたわ……服はちゃんと買ったんでしょうね」
「もちろん! ほら!」
カップラーメンの山の横にあった何処か見覚えのある某庶民的な洋服専門店のデザインが描かれている厚めのビニール袋から蒼太が取り出したのは上下セットの黒い地味なジャージであった。
「うん……なんかわかってたけど……うん……」
何処か悟っていた霧子は頭を抱える。
「ジャージ先輩をなめるなよ!? 通年使用可能な通気性に動ける機能性! それに上にパーカーでも羽織れば外に出られるレベルになる! どこに欠点があると言うんだ!?」
「これだから男ってもんは……」
繰り返される文言に霧子は大きくため息をついた。
機能性や安さ。
そう言うのばかり求めて肝心の見た目に目がいっていない。
いや、男と言う生き物にとってデザインとは黒ければそれで良いみたいな傾向がある。
蒼太チョイスのこのジャージは部屋着だとしても女の子に着せるものとしては不合格ど真ん中だ。
「決めた! 食べ終わったらまた買い物いくわよ!」
「えぇ……めんどくs」
「どうせ家にいても大したことしてないんでょ! 荷物持ちでもしについてらっしゃい!」
「あっ……はい」
蒼太は霧子に気迫負けして素直に言うことを聞いた。
そんなやり取りをカップラーメンに電気ポットからお湯を注ぎつつ遠巻きに見ていたルルリエは将来尻にしかれるタイプだなと機械ながら思うのだった。
ジャージは無駄にはしませんので大丈夫です。
ジャージはいいぞ……。




