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破軍とことりの大冒険?

 此処は紅龍皇朝首都ザンリーン、紅龍皇帝カーディナルは執務室で執政官からの報告に耳を傾けていた。

「陛下どうやら間違い無い様でございます、ゴールドドラゴン様も仰っておりましたが天を駆ける者が我が国内に誕生して居る事は間違いないようです。」

「ふむ。」

「ナハト、世のバランスが崩れる時に調律者として現れる、かの破軍と同じく天を駆ける者が我が国の何処かにいると言う事か。」

「はい、生まれ性で考えればハーク殿下が最も可能性としては濃厚かと思われます。」

「わしの息子が、それもやっとできた男子で・・・人との子であるハークが天を駆ける者なのか・・・。」

「確証はございませんが、かなりの確率で殿下だと思われます。」


暫くカーディナルは考え込んで居たが、自分の考えが無益な事に気がつくと。

「まあ、よい、その内解る事よ、考えに耽っていても何も変わらん、ハークにレッドドラゴンを届けよ、ワシの姉上のドラゴンを。」

「はい、承知致しました、早速手配致します。」

そう言い残すと執政官ナハトは一礼してカーディナルの執務室を後にした。
























わたしことり、うーんと、なんさいか分かんない。


どこで生まれたかも分かんない。







 ・・・















 ・・・















 えー  ことり主観だと話が進まないので辞めます(爆)








 ことりは東の宮、本宮の二つ有る大きな中庭の縁側で侍女に子供向けの絵本を読んでもらっていた。

「昔々、黒龍皇朝のとある所にとてもとても力の強くて優しい龍族が居りました。」

「うんうん、それで。」

「髪と瞳は黒く、字は破軍と言いました。」

「おなまえないの?」

絵本を読んでいた侍女は困った顔で。

「うーん・・・お名前はこの絵本には書いていませんねー。」

そう言うと少しことりは嬉しそうに言う。

「そっかーことりといっしょだねー。」

メイアリアからことりの事情を聞かされていた侍女は、しまったという顔をしたが、ことり本人が喜んでいるので絵本を読むのをつづけた。

次のページを開くとことりがさらに嬉しそうに言う。

「あーこれ、おねいちゃんのと同じだー。」

そこにはメイアリアの使っているのと同じワイヤードランスが描かれていた。

「そうですねー、ことりちゃんは見たことあるんですね。」

「うん、見たことあるよー。」

ことりは、楽しそうな様子で続ける。

「あのねーうんとねー。」

「ごろごろってしてーぴかってなって落ちてくるんだよー。」

「んでー、どかーんってなるんだよー。」

「めのまえがまっしろになるんだよー。」

「そうなんですか、それは凄いですねぇ。」

「うん!!」








 私は黒龍皇朝の有力貴族家の長子として生まれた、かなり小柄だったが、大変巨大な魔力に恵まれた。

両親は大層喜び、10歳に成る頃には飛び級で騎士学院の入学を許され、騎士学院を卒業すると同時にゴールドドラゴン様から直々に神々の武器庫の契約の指輪をも与えられた。

「しかしお主は強いのう、強い上に優しい、しかし其れ故に難儀だのう。」

艶やかな黄金の髪と瞳に見惚れながらも私は疑問に思った?

「はい?」

人の姿に顕現したゴールドドラゴン様の美しさは真にこの世の物とは思えなかった。

豪奢な黄金のドレスのスリットからも無駄な贅肉も一切無い細く長い脚が見えている、靴はピンヒールだ。

「ゴールドドラゴン様どう言う意味でしょうか?」

何の毛皮なのかは判らないがゆったりとドレスを包んでいる。

ドレスの胸元は大胆にカットされ胸の谷間が見えていた。

あまりの美しさに私の頬は赤く染まっていた。

「まあ、良い良い、ほれ、この指輪をやろう、その為にわしは、はるばるこのノイシェまで飛んで来たのだ。」

そう、ゴールドドラゴン様は女性だった、ドラゴンの姿から人に成ったのだけでも驚きなのに、これほどの美貌とは・・・。

「はい、ありがたく頂戴します。」

私の心臓は早鐘の様に鳴っていた。




 私の一族は喜んだ。

ゴールドドラゴン様が直々に来て頂ける等、前代未聞だったからだ。

本来ならば黒龍皇帝陛下から契約の指輪を貰う為の試練として、央都センシズに行く許可を各騎士団長からの推薦を貰うところから始めないといけないのだ。

そして必ずしも央都センシズに行く許可が下りたとしても、ゴールドドラゴン様から与えられた試練を成功してもそれでも貰えないという事が多々有るという。

「まさか   が、ゴールドドラゴン様から直々に、契約の指輪を貰うなんて!!」

「   流石わしの息子だ、誇りに思うぞ!!」

「   凄いわ貴方は、皆もお兄様みたいに強く成るのよ!!」

「はいお母様!!」

「お兄様すごい!!」

「お兄様指輪を見せて!!」

妹も弟も興奮していた。

「よし、   早速何か武器庫から喚んでみてくれよー。」

「そうよそうよ   どんなのが出てくるのか見たいわ!!」

従兄弟や再従姉妹までこんな始末だった。

私は完全に有頂天だった、完全に将来が約束された様な物だったからだ。



 従兄弟と再従姉妹に促されるまま私は神々の武器庫からワイヤードランスを呼び出してみた。


カカアッドドン!!


そこには黒い、漆黒のワイヤードランスが突き刺さって居た、それも、どの歴代の竜騎士団長の槍よりも大きく

禍々しいほどの魔力を放って居た・・・だが私は魔力の枯渇の為に意識が遠くなった・・・。



 気がつくと、私は自分のベットに寝かされていた。



 私の一族の大騒ぎはとどまるところを知らなかった、誰も見たことの無い形状、サイズ、潜在魔力の大きさ、そしてあの暗黒よりも

黒曜石よりも黒いその色、稲妻を纒って現れたその姿、真に黒龍皇朝にふさわしい槍そのものだった。

家族は喜んでいたが、私はそら恐ろしく成ったのを覚えて居る。

自分の力に恐怖を覚えたのだ。

ゴールドドラゴン様に言われた言葉の意味が少しわかったような気がしていた。







 少し時間は遡る、騎士学院に入学したのだが、四龍皇朝では交流の為に自国の騎士学院には入学しない事に成っている。

だが実の所、青龍皇朝は皇朝制を廃止していて騎士学院も無いので三皇朝の内の二つから選択する事に成る。

私は暑いのが苦手だったので比較的涼しいとされる白龍皇朝の騎士学院に入学した。

まさか白龍皇朝の皇都シルバーン皇城の敷地内に併設されているとは思わなかったが・・・。


 黒龍皇朝の騎士学院は完全に別の場所でノイシェから少し離れた丘の上に騎士学院が有ったので予想していたのとはずいぶん違って居て驚いた。

後から聞いた話によると、紅龍皇朝の皇都ザンリーンの騎士学院は火山性の島に有るという、

普通に中庭にマグマが煮えたぎっているらしい、行かなくて良かった。

 

初代白龍皇朝皇帝のざっくばらんな性格が出ているという事だろうか。

シルバーンの騎士学院は本当に皇城と区別が無い上に謁見の間すらも出入りも自由という白龍皇帝の後宮以外は何処でも出入り自由だ・・・(汗)

まあ、白龍皇朝の血筋の龍族の空間を切るという魔法の属性を考えれば当然とも言えたのかもしれないが。

それもあってかシルバーンの騎士学院は初めての全寮制の学校で有りながら非常に居心地が良かった。

白龍皇朝の貴族の方々も気さくな方が多く街も活気に溢れていて整然と整備された道路や白い建物に魅了されていった、ノイシェは基本的に水路が張り巡らされて

いるので、ジメジメしていたし、基本的に天気が良くなかった。シルバーンに来て普通に馬車に揺られて移動するのが新鮮だった、勿論ノイシェでは

水路なので屋根付きの小舟だ、雨が良く降る上に屋根があるので暗くも成る。

まあ、水を操って居るので馬等は必要ないし、皇城の上だけは常に魔法で雲が取り払われてはいた。







 ことりはある程度絵本を読んでもらうと、今度は侍女にこう告げる。

「あのねーおにいちゃんとおねいちゃんがことりのぶきを作るか買うかしてくれるんだってー。」

そう言われ侍女は。

「私がことりさんの武器を買うのを仰せつかっておりますが。」

「ふーんそうなんだーやったー!!」

「ことりもどかーんっていうのほしいなー。」

「流石にどかーんかどうかは解りませんが、ことりさんが自分で身を守れる様にする装具を買うのが私の今回の仕事です。」

「わーい、やったー。」

「でもやっぱりどかーんがいいなー。」

「どかーんですか・・・。」

「うん、どかーん・・・。」

「判りました、では、ことりさん、魔法具屋さんにいきましょうか?」

「ほんと、やったあああ!!」

「それではこの破軍様の絵本は又の機会に致しましょうか。」

「うん!!」

ことりと侍女は本宮の中庭の縁側から立ち上がるとメイアリアが居る反対側の中庭の方に向かって歩いて行った。

反対側の中庭ではメイアリアが本宮の近衛尉位の面々に稽古を付けている。

「若様。」

「うむ、どうした。」

「これよりことりさんの、装具を買い付けに参ろうかと思います。」

「おお、そうじゃったのう、ムツミ宜しく頼む。」

「はい。」

「わかさま、いってきまーす。」

ことりもそれにつづく、メイアリアは心配そうだったが、アキトに「まあ、ムツミに任せて置けば仔細問題ない。」と言われては何も口出しは出来なかった。


 だが、ムツミには問題は無かったのかも知れないが、ことりには問題が有ったw









ことりとムツミは牛車に乗って宮中から市街に出たのだが、なにぶん牛車が遅いのでことりが既に飽きてしまっていた。

「これ、おそいーーー。」

「まあ、まあ、もうちょっとで着きますから。」

「えーさっきからそういってるよーーーー。」

「ことりつまんなーい。」

ことりは足をばたつかせながら言った。


 子供に遅い乗り物に乗れと言うのも無理が有る、おまけにことりはドラゴンにも乗った事があるので尚更だ。


「ドラゴンでお出かけがよかったなーーー。」

「いえあの、ことりさん、こ、この国には乗れるドラゴンは居ないので・・・」

「ぶーーーーーー。」







・・・







「走った方がはやいよ・・・。」

我慢の限界に達っしてしまったことりは牛車の扉を開けて外に飛び出した。


「ああ!!」


ムツミも慌ててそれを追いかける。


牛車を引いていた侍もあっけに取られてぽかーんとしていた。




ことりはそれまでのうっぷんを晴らすかのように全速力で走って行く。

普段それほど急な運動をしていないムツミにはたまったものではない。

おまけに侍女の着物と履物が走りづらい。

それでも国賓扱いで来ていることりをなんとか捕まえようとムツミは必死で着いていく・・・。


ことりは大事な事に気がついた様で1キロほど走ってから急に止まった。


「おみせどこだろ・・・?」

東の宮はシルバーン程では無いにしろ中々大きな街である、大通りはシルバーン等と同じ規格で作られて居るので馬車や牛車が行き交える広さに作られている。


「ハア、ハア、ハア。」


「こ、ことりさん、あの・・・。」


やっとの事で追いついたムツミはことりの裾を捕まえてそれ以上が言葉に成らないようだったw


「そういえばおみせのばしょ、わかんないやw」




暫くして息の整ったムツミが答える。

「私も解らないのですが・・・。」

「えー!」




ことりを見失わないように必死で追いかけている内に何処をどう曲がったのかも何処に牛車を置いてきたのか解らなく成ったのだw

「ことりさん何処を曲がったか覚えてますか?」

「うーんと、うーんと。」


「わかんない!!」

予想通りの答えが返って来た。


「はあ。」


「まあ、お金は持ってきてますので辺りの人に聞いて探しますか・・・。」

「うん!!」




・・・





何とか周囲の人々に聞いて予定していた店に着いたのだが、牛車は既に到着している。

「おお、ムツミどの平気ですか?」

「タダノブさん平気に見えますか?」

「い、いえ・・・。」

ことりは結局散々歩いた挙句に眠いと言い出しムツミにおぶさって到着した。

完全に爆睡している。

「メイアリアさまが龍族なのに大変なのがやっと解りました。」

「ご、ごくろうさまです。」

「クークー。」

「ですが、本当に見た目と中身が、違うのですね・・・。」

「その様ですな・・・。」

ムツミもタダノブも思うところが有る様だった。


それから暫くしてことりが起きたので魔導具を選ぶ事に成ったのだが、ことりの魔力が龍族並みなので人間用の魔導具では無理だという結論に至った。

「うーん、やっぱりどかーんていうのがいいなー。」

「やっぱりどかーんですか・・・。」

「うん。」

「お嬢ちゃんは何系の魔法が得意なんだい??」

店主が訊ねると。

「火で、どかーんがいい。」

「火でどかーんか・・・。」

「ならいっそこんだけ魔力が有るんだから錬金術師の所で作ってもらうか?」

「できるのですか?」

「まあ、ムツミさま多分いけると思いますよ龍族並の魔力を持ってるんで。」

「やったーーー。」

魔導具屋の店主に連れられて近所の錬金術師の元に向かった、こんどはことりも牛車から飛び出さなかった。

錬金術師の店に着くなりことりは大はしゃぎだ。

「ことりのことりのぶきー。」

「いえ、あの武器に成るとは・・・。」

「えー、やだーぶきがいいーー、どかーんのぶきーー。」

「まあまあ、良いじゃないですか。」

「タダノブさんしかし・・・。」

「ことりちゃんはどかーんが良いんだよね??」

「うん!!どかーんが良い!!」

「何か妙案が有るのですかタダノブさん?」

「あ、いえ出来るかは解らないのですが先ほどのお店で自動防壁の魔導具が有ったんですが、それを爆発魔法ですれば良いのではないかと思いまして。」

「そうですか、私はとんと気づきませんでした。」

タダノブの発言を聞いてことりのテンションがマックスに成ってしまった。

「わーーーーーーーーーーいい!!」

「やったああああ!!」


一部始終を聞いていた錬金術師が口を開いた。

「まあ、龍族並に魔力が有るんなら出来ない事も無いんじゃ無いかな。」

ことりはそれを聞いて店の中を飛び回った。


「あああ・・・。」

「じゃあことりさん作って貰っておいで。」

タダノブにそう言われ我に返ったことりは錬金術師について行くムツミもその後に続く。

「じゃあことりちゃん、そこの魔力炉に魔力を込めて。」

「うん。」

ことりは錬金術師に言われる通りに魔力炉に魔力を込めた、だが中々魔力炉に魔力が入って行かない。

「ことりさん今日は疲れちゃいましたか?」

「うーんそうでもないけど・・・。」

「いや、ムツミさま多分一つの事に集中したことがないのじゃないですかね・・・。」

「集中ですか・・・。」

ムツミは考える、ことりの今までの行動から何が好きか、答えは明白だった。

「ことりさんはなんでどかーんが良いんですか??」

「ん?」

「うーんとーおにいちゃんとおねいちゃんとおんなじがいいから!!」

「そうですか、お兄ちゃんというのはハーク殿下ですか?」

「うんそだよー。」

「ではハーク殿下とメイアリア様どちらが好きですか?」

「きまってるじゃん、おにいちゃんだよー!!」

「ならことりさん、ハーク殿下の事を考えたらいかがですか?」

「なんでー?」

「そうしたらどかーんのが出来るかもしれませんよ。」

「あ、そっか!!」

「いやいやムツミさま、あまりにも安直です・・・。」

「そうでしょうか?」

「ことりさんならそのほうがわかりやすいかと思いまして。」

とまあ、ムツミと錬金術師の二人が会話している間に魔力炉の魔力がぐんぐん溜まり始めていた。

「あらあら、まあまあ。」

「これは、なんとも子供は素直ですな・・・。」

「むむむむむむ・・・。」

ことりはめいいっぱい魔力炉に魔力を込めたが半分ほど溜まった所で。

「もーむりーちかれちゃった。」

と言ってその場にペタンと座り込んだ。

「いやいや、中々溜まりましたよ、お疲れさんことりちゃん。」

「これで足りますか?」

「使用するときは魔力を少し消費する必要は有るでしょうが、これだけあれば大丈夫だと思いますよムツミさま。」


「よかったわねーことりさん、できるそうよ!」

「うーやったー・・・。」

流石のことりも、もう大声を上げて喜べなく成っていた。

「さて、ではお二人とも店の方で休んで居て下さい、少し時間が掛かりますので。」

「そうですね、ではお言葉に甘えて。」

そうムツミは返すとグッタリしていることりを連れ工房から店に続く扉から出て行った。

 三時間は経っただろうか、ことりは完全に疲れてしまってムツミの膝枕ですやすやと寝息を立てている。

「結構掛かりますね、自動防壁の防具・・・。」

そう言われ実は帰るに帰れなくなっていた魔導具屋の店主は。

「自動防御の魔導具ですとあと一時間かそこらは掛かるかもしれませんね。」


「そうですか、では、あともう少しの辛抱ですね。」


















 私は破軍、今はそう呼ばれている、もう本名で呼ばれる事は無くなって居た。


私が第一騎攻師団の団長に成ってからと言うもの戦争が勃発し、敵の軍を破り続け気が付くとそう呼ばれていた。


ノイシェの北の海から攻めてきた軍勢は巨人族だった、彼らは我々と同じく神々の末裔と呼ばれていた種族だったのだが、北極を治める北領の王は堕転した吹雪の精霊に乗っ取られて居た、他の巨人族たちも同様だった、わが国は基本的に戦争は好まないのでなんとか打開策を模索していたのだがことごとく失敗し、戦争の拡大を止める事が適わなかった。


精霊は本来姿を持たないので私との相性は最悪だった、私が降らせた雨はすぐさま雪か雹に姿を変え私の軍を打ち据えた、電撃は気温が下がりすぎて導体抵抗が無くなり熱を発しないので意味が無かった、精霊には肉体が無いので宿主の巨人族の身体を傷つける他無かった。




北極に強大な王国を築いていた巨人族は堕転した精霊によって見るも無残に滅びた・・・。


いや、私が滅ぼした。

「はあ、はあ、はあ・・・。」

「破軍か、恐ろしい者よな、これほどの軍勢を一人でとは・・・。」

「何を言うか、貴様は、何故精霊で在りながらこのような戦を、天地万物の理を外れた行いをした!!」


「精霊といえど完璧ではない、無限の生を謳歌するが故にこの世界の毒に染まる者も居る其れだけだ。」

「なんという、身勝手な・・・。」

「ふんよく言う、ならば貴様も味わってみるが良い、無限に続く生き地獄を!!」



「何!!」




巨人族の王に取り憑いた吹雪の精霊がそういうと私の身体に今まで以上の冷気が入り込んで来る、そこで私の思考は停止した。







「ふあああ、あ。」

「あらことりさん起きましたね、出来てますよことりさんの魔導具。」

ことりは跳ね起きて。

「ほんと!?」といってから周りをきょろきょろ見回した。


「おお、ことりさん起きましたか、此れですよ。」

錬金術師から差し出されたそれは蝶を象ったかんざしと一対のリングだった。

「すごーいきれーーーー。」

ことりは目をキラキラさせながらあちこちから眺めている。

「ことりさん着けてみますか?」

ムツミにそう言われことりは。

「え?いいの?」

と言った。

「良いも何もことりさんの魔導具ですから、私に背を向けてこちらにいらして下さい。」

ことりは何処に着けるのか解らなかったようでドギマギしていたが、ムツミが裾から出した櫛で髪を梳くと

ニヤニヤしだした。

ムツミはことりの髪を梳き終えるとひとつに纏めて髪にかんざしを通した。

髪の毛を引っ張られてことりはむず痒そうだったが錬金術師とタダノブに姿見を見せられ満面の笑みに成った。

「すごーーーい、すごーーーい、きれーーーー」

「では、ことりさん このブレスレットも。」

ムツミはてきぱきとことりの手首にブレスレットを通すと、蝶の飾りが紅く輝いた。

「おお、これはまた美しいですな。」

ことりの髪のかんざしの蝶は輝きながら羽をはためかせている。

ブレスレットの蝶の飾りも同様に今にも飛び立ちそうだ。

「え! なになに??」

当のことりはまさか蝶が動くとは思っても見なかったようで、興奮気味だ。暫くすると蝶の輝きが消えうせ蝶の飾りも動かなくなった。

「あれ・・・? ちょうちょしんじゃった??」

さっきまで輝きながら羽をはためかせていた蝶の飾りをことりは寂しげに、見ている。

「大丈夫ですよ、ことりさん いつも光ってたら目だってしまいますから今は休んでるんですよ。」

錬金術師にそういわれことりは安堵した。

「して店主、これはどのように使えば良いのですかな?」

タダノブが最もな意見を発した。

「これはほぼ自立起導しますので特に操作は必要ないです、かんざしの部分で状況判断と制御、ブレスレットの部分で防衛攻撃しますので。」

「防衛攻撃、ですか?」

ムツミには意味がいまいち理解できてなかったようで。

「あ、すいません、解りにくかったですね。」

「攻撃と防衛を同時にするということですか?」

「はい、言ってしまえばそうですが、最小の火の精霊ですが、これが紅蝶レッドバタフライなんですが、それを魔力によって操る事が出来ます、一応そのように作りましたので。」

「まあそうですか、それは凄いのですね!!」

魔導の知識については知る由もないムツミにとってはとても驚く内容だった。

「あ、いえそこまで凄いのでも無いんですがことりさんの魔力の属性が人間なのに通常生物属性の他に火属性だったのでうまくいくかと思って一か八かだったので・・・。」

「おお、そうですか、ではことりさんでないと上手く起導しないんですね。」

タダノブにそういわれて錬金術師の店主は続ける。

「ああ、すいません、ちょっと悩んだのですが自立起導するにはやはり精霊の自我を持たせて契約するのが一番早いので、すみません。」

「え? なぜ謝るのですか?」

ムツミの主張は最もだ、きちんと起導したにも関らず錬金術師は申し訳なさそうだ。

さらに店主は解説する。

「この構造だと火属性で龍族並の魔力がないと誰にも起導出来ないので・・・。」

そんな話を大人達がしていることも知らずに、ことりは腕に着けたブレスレットを眺めてうっとりしていた・・・。
















「ねえねえ、たっちゃん、・・・たっちゃんてばあ~。」

芽衣子がオレの右手をしっかり掴んで、揺さぶっている。

「あ、ああ、ごめん何だっけ?」

とたんにプクーっとふくれっつらに成った芽衣子が続ける。

「あーもう!!  何だかなー大事な話してるのにぃ。」

ばつが悪く成った俺はなんとなく、「芽衣子の言う通りだよ。」と答えた。

俺の言葉を聞いて、ぱーっと芽衣子の表情が明るくなったかと思うと急に恥ずかしそうにしだした。

まーなんというか、芽衣子には俺の右手の薬指に嵌った指輪が見えていないということが解ってほっとしたのも束の間、「あたしたちちゃんと付き合おう」って言われて生返事を返していた最低なヤローがここに居た・・・。


本当に最低だ・・・。

どうやらメイアリアや、向こうの人たちが言っていた魂の契約とやらはこちらに戻っても何も変わらないって事か・・・。






色々と最低だ・・・。






























 ノームといえば大地の精である、その大地の精と共に大きな荷車を引いている二人組みが、ことり達の居る錬金術師の店の前を通る。

いや正しくは一人がノームと共に引いているがもう一人は手ぶらだ、どうやら彼女達はドワーフとエルフの様だ、それにしては二人とも人間の姿にかなり近いものがある。

「さあ、お前達もう少し行ったら一休みしような。」

少しばかり小柄な方のドワーフとおぼしき少女がノーム達に話しかけた。

「あーあ、あたしの魔法でいけばちゃっちゃと帰れますのに・・・。」

もう一人のエルフとおぼしき少女がうんざりした様子で高飛車に言い放った。

「あのなー、レイチェル・・・。」

「なんですの・・・?」

どうやらこの少女はわざと、このような喋り方をしているようだ。

「あんたが、精霊魔力を出し過ぎたせいで、せっかくの松炭が松の木に戻っちゃったの忘れた訳じゃないよね?」

そういわれ、レイチェルと呼ばれたエルフとおぼしき少女は脂汗を垂らしながら。

「そ、そんな昔のことは忘れましたわ!」

レイチェルがそう言い終わる前にドワーフとおぼしき少女がハンマー片手に飛び掛る!!

「あんたねえええ!!!」

寸での所でひらりとかわすレイチェル、おまけにしっかり、さっさっと呪文を唱え、風を呼ぶ。

上から打ち下ろされたハンマーが地面にたどり着く前に風がドワーフとおぼしき少女を打ち付ける。

ブワッ!!

どうやらドワーフとおぼしき少女は軽量級なようであっさり風に吹き飛ばされる。

ノームがドワーフとおぼしき少女をしっかり受け止める。

自分があっさりしてやられたのが悔しいのか、ドワーフの少女はノームにしっかり掴まれたままじたばたしている。

「あーもう、これだからハーフドワーフは粗暴で嫌ですわ。」

「うっさい、あんただってハーフエルフだろうが!!」

二人の騒動を聞きつけことりが何事かと、錬金術師の店からひょっこり顔を出した。

「うわー、すごーい、あれ、土の精霊だよねー、どうしてどうしてー?」

二人もことりの声に気がついたのかお互いに顔を見合わせる。

ことりの魔力が大きいの事にハーフの二人が戦慄していると、すごいと言われたノームがポーズを決めたいた!!

「なあ、テコ、あの銀髪、人間だよな・・・?」

「う、うん、だと思う、自信無いけど・・・。」

たかびーな口調でわざわざ喋っていたレイチェルが素の喋りに戻っていた。
























「あーーーーもう!! どうなってんのよーもう、まるで見えないじゃないもう!!」

年の頃は二十歳前後のうら若い女が自身のテーブルに置かれた水晶球を覗き込んで悪態をついていた。

「なんだい、ブリ子、また紅龍皇朝に陛下の許しも得ずに手ぇ出してんのかい?」

ブリ子と呼ばれた女は頭をかきむしりながら苛立たしげに答える。

「うっさいなー王様の許可は貰ったわよ!! それとブリ子って呼ぶなって何回言わんせんのよ!!」

言ったが早いか今まで覗き込んでいた水晶球をブリ子と呼んだ女に投げつけた。

「おっと、相変わらず口と手が同時に動くねぇ。」

そういいながら投げつけられたほうの女も水晶球を片手で掴んで捕って見せた、そのまま水晶球を覗き込むと、女には状況が理解できた様子だった。

「なんだい、こりゃー、あんたのクローンに持たせてた宝玉がお釈迦に成ってるねえ、あんなに大きな宝玉、壊される心配ないからとかいって碌に防御魔法もかけなかったからだねぇ。」

「あっちの国でそんなにあのサイズの宝玉が雑に扱われるなんて思いもしなかったんだから当然でしょ!!」

「まあ、普通はそうだわね、アレだけの宝玉なら紅龍皇朝で出土するとも思えないし・・・まさかうちみたいに人工生成できるなんて事は無いよね・・・。」

そういわれてブリ子は一瞬ぎょっとしたが。

「あの宝玉生成はあたしの専売特許なんだからあああ、真似されてる訳無いでしょ!!」

「じゃー要するに、あんだけの宝玉が壊れても構わないってのが向こうに居るって事に成るねぇそれはそれで面白そうだけどフフフ。」

「あたしがイライラしてるのはそこじゃないの!!」

「あん? じゃーなんなんだい?」

「メタルゴーレムの自動生成装置の制御魔法もあれに入れてあったから・・・。」

そこまで言って急に声が小さくなって聞こえなくなってゴニョゴニョ言っている。

「あははははははははははは!! ってことはあれか!? 勝手に今まさにメタルゴーレムどんどん作ってうじゃうじゃ沸いてる訳か!!!」

笑われたのがむかついたのか何なのかは判らないが、ブリ子と呼ばれた女は黙って頷いていた。

「いひひひひひひひひぃ傑作だこりゃ、傑作だよブリ子、あんた最高だよ!!まさかそんな手が有ったなんて!!」

ブリ子とまたもや言われて完全にお冠に成ってしまったブリ子は部屋の隅のベットで不貞寝を決め込んでしまった。

散々笑って笑い疲れたのか、もう一方の女は水晶球をテーブルに置くと。

「難攻不落の紅龍皇朝が滅んでるかも知れないんだ、大金星だよ・・・早く陛下に知らせなくっちゃあはは。」

と言い残し部屋から出て行った。



















 ことり達が一向に帰ってこないのを心配して、メイアリアは本宮の門番の詰め所まで来てうろうろしていた。

「まさか何かあったのでは・・・、ですが、勝手に動いてもこちらの皇族の方々の面子を潰す事にも成りますし・・・。」


そんな考えや独り言が出てきてしまっているのを耳ざとく聞きつけてしまった門番達はどうしたものかと顔を見合わせていた。


そんなこんなをしていると大通りから牛車がこちらに向かってくるのが見て取れた、もうすっかり暗いのだがまあそこは夜番の門番たちなので

難なく見つけることが出来た。

「メイアリア様お帰りに成りましたよ。」

門番の一人にそういわれメイアリアは牛車をみるやいなや、走って向かっていった。

「おねいちゃーんことりのドカーンできたよー。」

ことりが牛車を引く牛の上で大きく手を振っている、腕と髪には蝶をあしらった飾りをつけていた。

メイアリアが牛車までたどり着くとこれでもかというほどの笑顔でことりが抱きついてきた。

「みてみて、おねいちゃんきれいでしょー、えへへ。」

見るとことりの腕の飾りも髪の飾りも仄かに輝いている、明らかな魔導具の様に見えた、見た目の印象としては、オレンジの蝶からは炎の属性もみてとれた。

「ことりちゃんずいぶん時間が掛かりましたね。」

といった所でメイアリアは見慣れぬ一団に気が付いた。

「こちらの方々は?」

「あーえっとねーうんとねーー。」

「それはわたくしがご説明致しますメイアリア様。」

すっとムツミが現れ説明を始めた。

「こちらの方々はビゼン・シュウスイ様のお弟子さんなのですが、ことりさんに土の精霊を気に入られてしまってあのその。」

出だしはしゃんと説明を始めたムツミだったが最後の辺りにはしどろもどろに成っていた。

「それは大変でしたね、申し訳ありません、お二人はビゼン様のお弟子さんとの事でしたが、今回は大丈夫なのですか?」

きちんとした格好の(メイド服だが)メイアリアに話しかけられていささか二人とも緊張していたが、なんとか返事をひねり出した。

「あ、あたいたちは、そ、その時間は急げとかは言われて無いからだ、大丈夫だよな、テ、テコ。」

「う、うん、そうそう、今回だって松炭を仕入れてこいって言われてただけだし。」

思いっきりどぎまぎしていたがそれも仕方の無いことなのかも知れない、道中にムツミに紅龍皇朝の竜騎士団長のメイアリアが来ていると驚かされてしまっていた。

それもこのメイアリアの許婚のハーク殿下が自分達の師匠の工房でいままさに作槍しているということまで聞かされていた。



















 カツカツカツカツ!!


これでもかと言うほど豪華な装飾が施された廊下を一人の女官が走っていく、目的の場所はすぐ目の前だった。


センシズの中央学府、大講堂の廊下の突き当たりに有る大きな扉から身体が半分ほど出ている赤いドラゴンに女官は話しかけた。

「教授!!」

そう呼ばれたレッドドラゴンはうっとうしそうに、眼鏡と専用の拡声器をずらしながらいった。

「なんだい、あたしはいま講義中なんだよ。」

と怒気を隠さずにギロリと女官を睨んだ。

「そ、その、皇帝陛下からの勅命で、ハーク殿下の騎竜としてシルバーンに向かうようにと・・・。」

その台詞を聞き終わるやいなや、ニヤっと意地悪そうな笑みを浮かべて。

「あははははは!! なんだいやっと御指名かい、あたしゃー待ちくたびれちまったよまったく、あの弟君と来たらもう。」

だが、中央学府の大講堂の中にも専用の拡声器から会話は筒抜けだったので生徒達からブーインが上がってしまった。


「えープロフェッサー、学府から居なく成っちゃうんですかー?」

「うおーまじかよー教授の講義まだそんなに受けてねえよー。」

生徒の中には頭を抱えている者まで居る。


女官もこれは予想外だったようでレッドドレゴンに睨まれた時よりも戦々恐々に成ってしまった。

「わ、私はこれで。」

女官は講堂の中の生徒に見えないようにそそくさとその場を立ち去った。



残されたレッドドラゴンは事態の収拾に掛からなければ成らなかったが、この先の伸び伸びした生活を考えると胸が躍る思いだった。


「まー皆、聞いたね、どうやらあたしの講義はしばらくないからあんまり使いたく無いけど、変わりを置いて行くよ。」


そのセリフを聞いて主に男子生徒が色めき出す。


レッドドラゴンは何事とかモゾモゾ唱えると講堂の床が輝き出す、一気に光がまぶしくなったかと思うとふいに途切れ中から半人半蛇の女性が現れた。

「じゃーあとは任せるよナージャ。」

「はい畏まりました」

呼び出されたナーガの女は恭しくレッドドラゴンに会釈した。


男子生徒の興奮がマックスに成る、うっとりと見つめている女子生徒まで居る。

「おおおおー、ナージャさーーーん」

「お久しぶりですー。」

ナージャが現れた時の反応を予想していたレッドドラゴンはやれやれといった呈で。

「皆ちゃんと勉強しろよ。」

と釘を刺したがきちんと聞いている生徒は少数だった。

「おまえもあんまし、生徒をテンプテーションで誑かすんじゃ無いよ。」

「畏まりましたマスターご期待に沿えるか自信は有りませんが。」

「まったく、そう言う時は嘘でもはいで良いんだよ。」

「はい。」

「まあ、いいか、あたしは久々にはねを伸ばしてくるよ。」

そういって、レッドドラゴンは専用の拡声器と眼鏡を外すと講堂の扉を壊さないようにそろそろと身体を廊下に出した。


『流石に今日も肩が凝ったねえ。』

そういうと廊下にあつらえてある特注の引き戸を開くと中庭から大空に舞い上がった。


レッドドラゴンが一声嘶くと、小さな赤いドラゴン達がレッドドラゴンにまとわり付いた。

『チビ達、ママはこれからハーク殿下の所に行くからね、大人しく待ってるんだよ。』

チビドラゴン達からまで「ピーピー」といった可愛いブーイングが上がる。

泣き出すチビドラゴンまで居る。

『やれやれ、こりゃ、生徒達よりも説得に時間がかかるねえ・・・。』





「ふあああああああ。」


俺は、ビゼンさんのベッドで久しぶりの、のんびりとした朝を堪能していた。

作槍作業が終わったので、こっちで寝てくれと言われてしまったので素直に従ったのだが、ビゼンさんの部屋がなんというか。

厩舎よりも風通しが良かったので少し身体が硬くなってしまった。


「よっと。」


俺はベットから跳ね起きると、ビゼンさんの居る店の方にむかって歩き出した。

店にでると丁度、メイアリア達が戻ってきていた。

見覚えのない少女も二人程居たが。


「おにーちゃーんただいまーー、みてみてーことりのどかーん!!」

「ん? ドカーン?」

みるとことりの腕と髪に蝶の飾りが付いている。

「へー綺麗だなー。」

「でしょでしょ! まだどかーんはみてないんだけど、きれーでしょー。」

「殿下、槍の方は出来上がりましたか?」

メイアリアが我慢できなくなってしまったようで聞いてきた。

「ああ、問題ないよ、ちょっと変則だけど。」

「変則ですか・・・?」

「なんでい、勿体つけないで見せてやったらどうだい。」

ビゼンさんに突っ込まれてしまった。

「あ、いやそういうわけじゃないんですけど・・・。」


実は、ビゼンさんと勢い込んで作ってはみたものの、メイアリアのオッケーが出るかちょっと心配だったりするのだ。

「なんだ、自信が無いのか?」

バ、バレてる。

「そんなに心配するこたねえよ、このビゼン・シュウスイの打った業物だ、堂々と魅せりゃ佳い。」

「あーいやそのーまーそうかもですけど・・・。」

「煮えきらねえ奴だな、まったく。」

ブツブツ言いながらビゼンさんが俺の槍を棚からガサゴソと持ってきてしまった。

店のカウンターに二本の刀状態の俺のワイヤードランスが置かれた。

メイアリアは目を真ん丸くしている。

「こ、これは、その・・・。」

あーやっぱしー。

俺の心の声を知ってか知らずかビゼンさんが、口を開く。

「まー心配ねええよ、二人とも揃って心配性なんだからよ、まったく、似たもの夫婦かよ・・・。」

「ふ、ふ、。」

「い、いや、ま、まだ結婚してないっすよ。」

「あん? まーどっちみち一緒だろ、ほら時間ねーんだろ、魅してやんな。」

俺はそう促され刀状態の槍を小脇に抱えて表にでた、メイアリアとことりも俺に続く。

ことりがニコニコしながら、こっちを見ている、メイアリアはなんというか、困惑顔だが、見知らぬ少女二人とビゼンさんは店から出てこなかった。

俺達は最初に投げた広場までやってきた。



「じゃあ、ちょっと投げてみるよ。」

「は、はい。」

俺は二本の刀状態のワイヤードランスを一つに纏めた、少しの湯気とともに刀が杖状に成る。

「え?」

メイアリアが普通に驚いている・・・。

まーそうだよねー普通一本に成ると思わないよねー。

俺は気にせず、魔力を込めて槍を伸ばした。



シャララララ


「すごーい、おにいちゃんのぶき、がったいへんけーーするーーーー。」

おい、どこで合体変形なんて言葉覚えたんだことりは・・・。

まあ、いいか。

そのまま魔力を込めて上部を発動させる。


ブワッ!!


あれ?  昨日より刃がでかいぞ・・・。

メイアリアまでことりみたいなワクワクの表情で俺のワイヤードランスを見ている。

いやー確かに普通の槍じゃ無いけどさーメイアリアさん、そんなに期待されても困るんですが。


俺はワイヤードランスに魔力を込めて上空に投擲した。


ゴワ!!


「あ!!」


ん?


あ? 


俺なんかやらかしたか・・・?


俺の投擲したワイヤードランスはぐんぐん上空に昇って行く・・・。









・・・









昇って行くねーーー何処までもーって、





おやー俺なんか忘れてる気が・・・。


「あ・・・。」

ガントレットと槍をワイヤーで繋げてねえ!!!!

「あ、あの、で、殿下、まさかあのランスは。」

「繋げんの忘れちった!!」

「「えええええ!!!」」


あーあ、やらかした、飛んで行っちまったーー頼むから戻ってきてくれー。





そう念じてまもなく上空で爆発が起きて槍が帰ってくる!!


「うお、まじで戻ってきた!!」


ドゴーーーーンンン



「な、なんて無茶苦茶な・・・。」

いやいや、確かに無茶苦茶だけどメイアリアさん、ちょっと言いすぎでは・・・。

まーいいか戻ってきたし、新しい使い方まで解ったし。

「すごーい、おにいちゃんのぶきかっこいいーー。」

どうやらことりは素直に喜んでくれたようだった。


あーだこうだとメイアリアに作った槍の説明をしているとビゼンさんが二人の少女を伴って現れた。


「どうだい、大したもんだろう?」

「はい! 流石、名工と謳われたビゼン・シュウスイ殿です、私、感服致しました。」

「ガハハハ、そうかいそんなに素直に褒められるのも中々くすぐってえもんだな。」


「あれ、てか、その二人って俺知らないっすけど。」

俺がしゃべると見知らぬ少女二人がビクついている。

「おーすまねえな、この二人はな、俺の弟子なんだよ。」

「あら、弟子なんか居たんすすか?」

「まー半分押しかけ弟子みたいなもんだがな。」

ビゼンさんは髪の赤い方の少女の頭をわしゃわしゃと撫でた。

「ほらお前達、自己紹介しな。」

そうビゼンさんに言われてふたりは増す増すきょどってしまった。

「なあんだ、いつもの勢いはどうした、そんなんじゃこれから困るだろ。」

ん?

これから?

二人も聞いてなかった様で驚きながらビゼンさんを見つめている。

「これからってどうゆうことですか?」

「いや、なに、おめえさんの槍はよ、まだまだ発展途上だからな、弄れる奴がいねえと駄目だろうからな。」

「あーそうゆうことですか・・・。」

え?

「丁度二人ともそろそろ修行に出しても良い頃合だからな。」

「それではお二人ともよろしくお願いしますね。」

メイアリアに声を掛けられてうんうんと二人は頷いている。

ちょ、メイアリアさん話早すぎ!!


どうやらメイアリアの話によると、二人とはこの国の首都で出会ったようだった。

まー早い話が鍛冶師まで手に入ってしまったという。


そうこうしていると、いつもの様にギイイイン と独特な音を響かせて、空間が斬れる。

「ハーク殿下、お迎えに上がりました。」

今度は二人の少女、テコとレイチェルが目を真ん丸くしている。

「おや、こちらのお二人は。」

俺達は、カエサルさんに二人をさくっと紹介すると、裂け目を通ってシルバーン側に戻った。

ちょっと年末年始は時間が取れなく成ってしまいましたので九話もまだ途中では有りますが書いた所までアップしました、大幅な加筆がされる予定では有りますが、ちょっとどうなるか今のところ未定です。

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