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白銀の迷宮

  

 色々と面倒事があったのだが俺と聖母龍は本来の目的地に向かって歩いていた。

「ここじゃ」

「ここって、白夜の塔に登るための階段があるところですよね?」


昨日はここから上まで行って塔でとんでもない話を聞かされたんだが・・・。

いつもの様に警備の騎士が敬礼してから階段の前の扉を開けてくれた。

「ほれ、この階段、ちーっとばっかしおかしくないかの??」

おかしいと言われてもこの階段を行き来する回数なんか数えるほどだし、俺がなにも判って無いのを確認して満足したのか得意げに聖母龍が螺旋階段の外側の壁のある一点を押す、すると白龍皇朝の紋が一瞬浮かび上がると石壁がパタパタと向こう側に折りたたまれていく!!


折りたたまれた先には上りの階段と完全に同じデザインの下りの階段が現れた。

「こ、これは!」

「ここから先が本当のシルバーン城じゃ!」

そこから下りの階段をどれだけ下ったろうか、上りの階段とさほど変わらないほど下ったと思われたが。

最後まで下りきると上の塔の前の壁と同じ装飾が施された廊下にたどり着いた。

「お主はそもそもシルバーンに白龍皇朝の血筋の龍族がほとんどいないことに疑問は抱かなかったのかの?」

「そういえば、カエサルさんも厳密に言えば白龍皇朝の血筋じゃないですよね・・・確か半分は紅龍皇朝の血筋だからそのせいでカレンは無印の制服だって・・・。」

「そうじゃな、白龍玉だの紅龍玉だの無印だの本来意味のない印なぞ制服に残しおって貴族院の耄碌じじい共にも困ったもんじゃ・・・。」

 

「話が横に逸れたの、まあ、先ほども言ったが白龍皇朝系の血筋の龍族はほとんどこの下で暮らして居る。」

「なんでそんなことになってるんですか、普通に地上で暮らせばいいのに・・・。」

丁度そんな話をしていると廊下の突き当りの扉の前までたどり着いていた、その扉の前にも上の扉同様に警備の騎士が二人立哨している。

二人とも俺たちがくるのを知っていた様で敬礼をした後扉を開けてくれた。

「あれが問題なんじゃよあれが・・・。」

扉の向こうに出ると広い空間が広がっていた、上のシルバーン城がまるごと入りそうなほどの空間がこんな地下に存在している。


聖母龍の目線を追うと中央の広場に氷の彫像のようなものが突き刺さっていた、俺が見ている間にも新しい氷結が生まれ大きくなろうとしているようで周辺に居る何人かで組に成っている白髪の龍族が槍から飛ばす断空の刃で氷結を切り飛ばし杖を持っている龍族が転移魔法で切り落とされた氷結を何処かに転移させている。

「まさかあれをずっと一万年もやってるんですか!?」

「口惜しいことにそうじゃ、わらわの神龍力でも一度氷を消し飛ばすことは出来ても完全に氷結の呪いが消えることはなかったのじゃ。」

「喰らいついた呪いが破軍の魔力を喰って新しい氷結を瞬く間に再構築するのじゃ・・・。」

「そんなことならもっと早く俺を連れて来たらよかったじゃないですか?」

「ん?まあそれもそうなんじゃがな、一応それなりに人となりというものは見ておかないと、と思っての。」

一応そうゆうところはちゃんとしてるんだよなあ・・・。

 

俺たちがそんな話をしていると俺たちに気が付いた白髪の龍族が、いや、白龍皇朝系の血筋の龍族が話しかけてきた。

「おお、聖母龍様、ようこそ、むさくるしい所ですが。」

「息災か、白の、例の皇子を連れてきたぞ!」

聖母龍がそう告げると白のと呼ばれた龍族が俺に自己紹介を始めた。

「ハーク殿下、よくぞいらして下さった、、私はまあ、一応白龍皇朝の皇帝をやっております」

そういわれて俺はすかさず礼を正したのだが。

「いやいやいいですよハーク殿下、一万年もの間こうして代々地下で暮らしている間に白龍皇朝も形骸化してしまいましたからね。」

「まあ、いろいろと話はあるかもしれぬがまずはおぬしたちをこの日の当たらない生活から解放するのが先じゃ。」




  

 

俺たちが広場の前まで来ると氷結の呪いは何かを察知したのか広場の地面に魔法陣が浮かび上がった!

丁度先ほど氷結を切り飛ばしていた白龍皇朝系の龍族から悲鳴のようなセリフが出る。

「何だ!こんなことは今まで一度も!!」


 

地面の魔法陣が結実してダイヤモンドダストの中からおびただしい数の白い狼が現れるその数、約二百!!

「なんじゃ、ハークの存在を危険視しおったのかや!!」

「皆の者であえ!ハーク殿下と聖母龍様をお守りしろ!!」

白龍皇朝の皇帝陛下がそう叫ぶと 瞬く間に空間を切り裂いて白龍皇朝の騎士達が数十名俺と白い狼の間に現れた。


広場は降ってわいた戦闘によって急激に血の色に染まっていく、白い狼は統率の取れた動きで騎士たちを翻弄するが、その間も氷結の呪いは拡大を忘れない。


白龍皇朝の騎士もさることながら魔法陣によって呼び出された白い狼は縦横無尽に駆け回り時には吹雪を吐き時には噛みつき、そして、我先にと俺と聖母龍に向かって突進してくる!


こんな状態だったが俺は妙に冷めたように冷静だった、飛びかかってくる狼を自分の魔力でとっさに作った炎の槍で突き落として燃やして居た。

つい、この前のアイアンゴーレムや、完全に囲まれた戦いから比べたら数の面でも質の面でも白い狼たちは話に成らなかった。

余り表に出て戦闘をしているわけではないが流石龍族の騎士だけあって他の騎士たちも急に出てきた狼に対しても重傷者などが出ることも無く戦闘は徐々に収束していった。


俺たちは白い狼の処理がおわると元の広場までもどって来た、そこで氷結の中の黒い鎧を着た破軍の顔が不意に見えた・・・。





  











 「劉 生・・・?」












おれがその疑問を浮かべた瞬間に頭痛が襲ってくる!

俺の様子がおかしいことに気が付いた聖母龍が俺のそばまでやって来た時にそれは起こった。

聖母龍と俺を中心に新しい魔法陣が展開する!


「まずい迷宮魔法(ダンジョンマジック)!」

その間も頭痛は一向に収まらず俺はたまらず胃の中の内容物を吐き出していた。

いつの間にか涌きだした氷の茨が俺と聖母龍の足を絡めとり貫き二人とも身動きが取れなくなった。

「聖母龍様!」

「よせ、来るな!このような迷宮即座に踏破してくれるわ!」

「しかし!」


「この魔法陣、巨人族の!ならばここを!!!」

俺たちが完全に吸い込まれる寸前に聖母龍がいつの間にか出したワイヤードランスで魔法陣の文字の一部をガリガリと書き換える!



ひと際魔法陣が強く輝くとハークと聖母龍の姿は広場から消え去っていた。









見渡す限り白銀の世界だった、どこまでも白い、まるで昼も夜も無いかのように、ややもすると上下すら見失いそうになるほど真っ白な世界だった。

そういえばメイアリアの投擲を始めて見たときも真っ白な世界に急に投げ出された気がしたな、と思い出して軽く笑いが込み上げた。


「ふう、なんとか一番面倒なところは削除できた様じゃな。」

「ハークよ、もう大丈夫かの?」

「はい、何とか、頭痛も収まりました、怪我も回復魔法でなおしてもらったので・・・。」

「しかし何を見たのじゃ?頭痛が起きる前から様子がおかしかったように見えたのじゃが・・・。」

「はあ、まあ、なんというか破軍の顔が知り合いにそっくりだったので・・・。」


「ほう、なかなか興味深い話じゃな。」

「実際のところただの他人の空似かもしれないっすけど・・・。」

俺がそう続けると聖母龍は感慨深げに俺の言葉を否定した。

「いや、存外あるかもしれんぞ、あちらでのお主と縁が近いのであればこちらでもというのは充分あり得るじゃろう。」

「そんなもんですか?」

「そんなもんじゃ」


俺はゆっくりと立ち上がりながら決意した。

「じゃあ猶更破軍をちゃんと起こさないといけないっすね。」








どれくらいの距離を進んだだろうか、方向感覚など元々あるはずもなく距離感覚などほぼ変化しない風景だから感じようなどない、ただ、判るのは、俺たち二人を来させまいとする明確な意思と魔力の流れ、それに伴う風だった。



自分の感覚がどれほどあてに成らないかをこの白銀の世界は嫌というほど教えてくれていた一応、感覚的には三日か四日経ったのだろうか日に何度も白い狼の群れに襲われているのだが。

俺達の性質と体質からして苦にもならない環境なので特に体力が底を尽きるなどということは無かった、何度も何度も戦うと戦闘スキルが洗練されていくのを感じていた。

 

最初は聖母龍と二人で戦っていたのだが良い機会だからここで戦い方を一通り叩き込んでおくと聖母龍から色々教わっていた。


ここでも変わらず神々の武器庫から例の槍が呼び出せたので大助かりだった、最初は聖母龍も珍し気に見ていたのだが、ついでだからということで、呼べそうな武器は全部呼んでみろと言われ、思いつくまま考え付くままどんどん呼べるか試してみた、手始めにいつも使っているダマスカスの二刀を出そうとしたらあっさり呼び出せる上になんか強化されてて普段よりも無茶な扱いをしても全く問題がないので、この迷宮を出てから実物を折りそうで心配になるわ、

メイアリアから授業中に借り受けた実戦配備の槍も呼べるわ、メイアリアと買い物に行った百貨店で見た武器とビゼンさんの所で休憩がてら見せてもらった武器も、出てきてしまって出るわ出るわ

弓、鞭、杖、剣、刀、両剣、斧、棍棒、鎌、三節棍、ヌンチャク、ハンマー、モーニングスター、考え付くあらゆる武器が全て出てきたのだが。

これだけ様々な武器を出しても、武器に関しては流石に長生きしているだけあって全部扱い方を的確に教えてもらえてしまった全部覚えられた自信はさっぱりないが。

(三節棍やヌンチャクの扱いまで達人級だった・・・。)

 

勿論当たり前なのだが、聖母龍がドラゴンに化身して竜騎士としてワイヤードランスの扱い方と戦い方もみっちりきっちり教え込まれた。



最初は正面からダイアモンドダストと共に出てきて驚いたのだが白い巨人も、白い熊 ふつうに北極熊みたいなのも出てきたのだが実戦の中でゴリゴリに戦闘術を叩き込まれたので最終的にはどんなに一度に沢山現れても俺一人で何とかなるようになった。


ついでと言っては何だが、龍族がこの世界に来る前の神話も教えてもらった。











第一の創世の神は始め天使と精霊と理を作りたもうた。


次に創世の神は天使と精霊と共に空と大地と海を作りたもうた。


次に世界に生き物を繁栄させるために海には竜を、極地には巨人を、大地には世界樹を作りたもうた。


第一の創世の神は三柱の神を生みあとを継がせ世界の行く末を見ることにした。


三柱の神はそれぞれ三種づつ三度新しい種族を作りそれぞれ三柱の神を生みあとを継がせ世界の行く末を見ることにした。


九柱の神々はそれぞれ三種づつ三度新しい種族を作りそれぞれ三柱の神を生みあとを継がせ世界の行く末を見ることにした。


二十七柱の神々はそれぞれ三種づつ三度新しい種族を作り新しい神は生まずに世界の行く末を見ることにした。

 

世界の行く末を見ていた神々はある時を境に可能性の地平が閉ざされていることに気が付いた。



  

「というのがこの世界の創世の神話の出だし、じゃな、まあ、この後に最初の(エクリプス)だのなんだのが色々あってお主たちの先祖で他の世界から招かれた神の金龍皇とその子である四龍皇が呼ばれてわらわたちの国が出来るのじゃが。この間はわらわ以外の誰かから教えてもらった方がよいじゃろ。(わらわが教えると当事者の主観が入るから良くないからの・・・。)」

 

 

 

ん?なんか余計なセリフが聞こえた気がするんだけど・・・当事者の主観って・・・。










白い巨人を百数十体は倒した頃だろうか、それは目の前に聳え立っていた。

「何から何まで巨人族の真似事かや・・・。」

体は丈夫な龍族の為、(いやドラゴンか)肉体はさほど疲れていないのだが流石の聖母龍でも多少、精神的に疲れが見えてきていた。


「巨人族の城って事ですか?」

「そうじゃな、まあ、かと言っても入ればすぐ玉座なんじゃが・・・。」

俺たちがその城に入ると聖母龍が言ったようにすぐに玉座の間がある、そしてその玉座に座っているのは痩せこけたみすぼらしい姿をした巨人だった。

初めて見た俺ですら可哀そうに見えるほど何かに怯えたようにガタガタと震えていた。

「さあ迷宮の主よ、たどり着いたぞ、そなたの迷宮に引きずり込まれる前に平地に書き換えたが中々に面倒じゃったな・・・。」

玉座に座っていた巨人は聖母龍の声を聴いて震えが収まると立ち上がり急に怒鳴り散らした!

「神霊の分際で人の世に口出しするんじゃない!!!」

「よう吠えよるわ、精霊の分際で自然の摂理を捻じ曲げおって!」

「カッ!!」


ドゴオオオオン!!

  

聖母龍が言い終わるや否やみすぼらしい巨人は唐突に殴りかかって来た!


その勢いと破壊力はすさまじくきちんと防御したにも関わらず城の壁ごと俺達は外まで弾き飛ばされたが、難なく空中で宙返りをしてすぐに体制を立て直して着地した聖母龍が解説する。

「ハークよ、あんな見た目はしておるが奴は(エクリプス)で捻じ曲がった吹雪の精霊じゃ、巨人族から様々な技術を盗んで精霊のくせに神に成ろうとした愚か者じゃ。」


なんか急に切れるとかほんとそうゆうの辞めてほしいんだよなあ・・・。

「ああゆう感じにすぐ切れるんですか?捻じ曲がると。」

「確かにああゆう感じで話が通じない感じに成るのう(エクリプス)に汚染されて大禍に成ると。」


「なんかちょっと気持ち悪いっすね・・・。」


俺のセリフを聞いて聖母龍が吹き出す。

「っぶ!! あはははははは、怖いじゃなくて気持ち悪いか、これは傑作じゃ!!」

「なかなかユーモアのセンスが有るようじゃのう。」

なんだかよくわからないが聖母龍の笑いのツボを突いてしまったようだが。

「わらわもかなり長生きしたが戦闘中にこんなに笑ったのは初めてじゃわ!!」


俺たちのその様子が見えたのか、巨人の姿をした吹雪の精霊が自分の居城の壁をぶち破って突っ込んできた!!

「うわあ、あれ、完全に切れちゃってますね。」

「あはははははは、その心底気持ち悪そうな顔と言い方を止めい、わらわを笑い殺す気か!!」


そんなしまらないやり取りとは裏腹に聖母龍と目配せして吹雪の巨人からさらに距離を取る。

「くっくっく、はあ、まあ、らちが明かぬな、普通の戦い方でゆくぞよ。」

 

そういうと急に走りながら聖母龍が黄金色に輝き、ドラゴンに化身した。

俺はドラゴンに化身した聖母龍に拾ってもらうと上空に飛びあがった。


  

『さーて教えたとおりに戦ってもらおうかのう!』

ゴールドドラゴンはそういうと、旋回しながらワイヤードランスが投擲しやすいように左旋回で高速で飛ぶ。


俺は教えられたとおりに左手で吹雪の巨人に照準をつけゴールドドラゴンの魔力を弓と弦にしつつ

ワイヤードランスを投擲する!


キュオ!ドドン!!


 

吹雪の巨人の右膝にワイヤードランスが炸裂する!!



遠間からダメージを確認してから高速で接近して頭上でバレルロールしてランスを引き戻す!!


はっきり言ってこれはずる過ぎる気がしたのだが相手があいてなのでそうも言ってられない。

『きちんとダメージが通っとる様じゃの、重畳、重畳。』


龍族の魔力で与えたダメージで(エクリプス)の原因ともなった非業の死を遂げた魂が成仏していく。

『こうして何回も叩き込んでやればすぐにでも決着がつくのう!』

 

 

だがそう甘くもなかった、伊達に一万年も氷結の呪いで破軍を苦しめてはいない、第二射の投擲準備に入るとゴールドドラゴンの飛行コースに魔法陣が浮き上がったかと思うと氷の柱が上下左右から次々に襲ってくる!

『一撃で決めれなかったのがいたかったのう、まあ、ゆうてても仕方のない事じゃが』

のんきなセリフとは裏腹に縦横無尽に襲ってくる氷の柱をアクロバティックな飛行でかわし続けている。

俺はというとそんな背中で落ちないように必死だったのだが。

ゴールドドラゴンが何かに気がついたらしくとんでもない軌道で躱しながら。

『ハークよ、きゃつの氷柱はどうやら9本出したら数瞬間が空く様じゃからわらわが死角を作るからどてっぱらにそいつをかましてやれ。』


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確かに言われた通り数瞬隙があるようだった。

「いやいや、まじっすか、こんな状態であんな隙取れないっすよ!」

『メイアリアの投擲を思い出すんじゃ、あの完璧なフォームの投擲がトレース出来ればそなたの槍ならそれ以上の速度が出る』

「ちょっとまって下さい確かにはっきり覚えてますけど、ウワアアーー!」

『しのごのいっとる場合じゃないのじゃ、ダメで元々、わらわなら多少喰らっても問題ないわ行くぞ!』




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だが空くと思われた隙は無く完全なブービートラップに嵌っていた。

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ゴールドドラゴンの右翼に氷柱が突き刺さる、急激にバランスを崩してハークは空中に投げ出されてしまった。

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態勢が崩れたゴールドドラゴンの尾が氷柱に貫かれ千切れ飛ぶ。

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さらにゴールドドラゴンの左翼に氷柱が突き刺さる、ゴールドドラゴンの血潮が派手にまき散らされる!。

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あらぬところに氷柱が飛んだ、

ハークは時間の感覚があの時と同じようにゆっくりに感じていた、この白い迷宮に閉じ込められてから始めて見たあの美しい投擲を思い出さないことはなかった。



ギュオ!!




本当の隙は13本目だったそれを9本で一度打つのをやめて気が付かせないようにしていた、完全に切れているようで吹雪の巨人は戦闘の勘は無くしていなかった。


 

 









完全とは言い難いフォームだったかもしれない、メイアリアの様に無駄な力が入っていないとは言えないのかもしれない。



だがメイアリアが放ったワイアードランスの軌跡の様に燐光を放つ一本の紅い線がそこにはあった。





ハークの放ったワイヤードランスは吹雪の巨人の腹部を貫通していた、半ば消えかけていたかのような燐光を放つ紅い線は突如膨れ上がり炎が軌道上の物を跡形もなく焼き尽くす!










『やるではないか、』


息も絶え絶えでゴールドドラゴンがやっとのことで言葉を伝えてきた

「こんなに血が!!」

『フフ、流石のわらわも今回は堪えたのじゃ・・・。』

「早く何とかしないと、そうだこうすれば」

俺はとっさに出血している箇所を冷気で冷やして止血を試みる。


俺たちの周りでは迷宮の主を失った世界が主と同じように俺の炎で燃え上がっていた。

『楽しかったぞ、ハークよ、中々に・・・愉しめたのじゃ・・・。』

その間もゴールドドラゴンの出血は収まらない。


『ハークよどうやらそれがこの迷宮の踏破褒章の様じゃ。』

「踏破褒章?」

『元々巨人族の迷宮魔法は資格あるものを選別するための物じゃ、資格あるものにはその証として褒章が与えられるのじゃ』


おれの左手側に可憐ともとれる見た目の氷の剣が鞘と共に地面に突き立っていた。


鞘ごと剣を引き抜くと辺りが眩い光に包まれる。





光がおさまると元の地下広場に戻っていた。




待っていましたとばかりに辺りの白龍皇朝の面々から回復魔法がゴールドドラゴンと俺に注がれる。





しばらくしてゴールドドラゴンの体が輝いたかと思うと人の姿に戻っていた、いや、成っていた。

「っふう、こっちの方が色々と便利じゃからな。」

あんなに大怪我をしていたにもかかわらずいつもの感じに戻っていたのだが、立ち上がろうとしてふらついた腰をとっさに支えた。  

「なんじゃ中々、頼りがいが出てきたのう。」



  



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