ハークと破軍
おもいっきり開いてしまいましたが4ねんとかあけすぎにも程があんだろって言われそうですが・・・続きます、あとちょっと短いんでまず間違いなく加筆します。
メイアリアが再生槽に入って二日が経った、昨日見舞いに行こうと思ったのだが、再生槽はさしもの殿下の俺でも面会謝絶だったため大怪我したメイアリアに、丸二日会っていない。
単に裸だからダメだって話なんだが・・・。
メイアリアのそんな惨状はシルバーンの人たちにはバレてない様で良かったのだが、帰って来るなり式典のオンパレードで面倒な事この上なかった。
例の派手な軽鎧を着たまま街の広場に急きょ設置された玉座と赤絨毯の上で皇帝陛下直々に、今回の功績を称える旨の勲章が授与されてそのまま第二騎攻師団の団長を任命されてシルバーン中に大々的に発表になった。
街の人たちはなんでそうなったか判って無かったのだが皇帝陛下の側近がカオスブルーとの一件をちょっと脚色して話すもんだから大盛り上がりで式典の後もドンチャン騒ぎが街のあちこちで翌週まで続いた、俺としては自国の皇子の活躍だとかにここまで素直に喜んでいるって言うのは正直あまりピンと来ないのだがどうやらこちらの方が普通のようだ。
いつもの様にエリザ、カレン、リーナ、ユリエと学院の食堂で飯を食いながら、
あ、いや、いつもの様にでは無かった、普通に五人目の女子フレイヤも当たり前のように混じっている・・・。
どうやら俺が奪還作戦で色々とやってるうちに皆打ち解けていた様だった、まあ、それもそのはずでフレイヤは俺に懐いてはいたが明らかに妾候補とかそういったのに成り用がなかったからだ。
なんか逆に女子って怖い・・・。
俺が
「なんかみんなお祭り騒ぎに飢えてたのかねえ・・・。」
というと
「年末年始のお祭りと収穫祭ぐらいしかお祭り無いから仕方ないんじゃない?」
とカレン。
「ハークの所にメイドに入るまではメイアリア様が活躍してたけど、かと言って式典とかは無かったものね。」
俺たちがそんな益体も無い話をしていると珍しくユリエが少し驚いた声で口を開いた。
「皇帝陛下・・・。」
俺がぎょっとしながらユリエの見ている方向を見ると学校指定の教員用運動着のジャージを着ていて、まるで体育の先生風の雰囲気を醸し出しながら皇帝陛下がこっちに歩いてくる。
「なんだハークよ、俺の顔になんかついてるかよ?」
とか のたまわりやがった・・・。
過日の式典とはまるで違ってざっくばらんで適当な喋り方と恰好で現れたのでおれの周りの残りの四人も食堂内にいる他の生徒も何事かという感じだ。
「皇帝陛下、殿下も驚かれてますよ、まったく。」
皇帝陛下の後ろから現れた小柄なメイドが皇帝陛下をたしなめたのだったが俺はその姿を見てふと口をついて出た言葉があった。
「は、母上。」
「はい、ハーク殿下、お久しぶりです。」
そうなのだ、俺はこの小柄なふつうの人間のメイドの息子だった、言い方が悪く思えるかもしれないが俺はこの妾の子でかつ、唯一、紅龍皇朝の血が出た男子だった。
自分の資料などという意味不明なものまでみないといけない状態だったのだが、きちんと目を通しておいて良かったと心の底からおもった。
「お嬢さん方うちの愚息を少々かりても良いかな?」
皇帝陛下にんなこと言われて駄目とか言えるような豪胆な人物はここには居なかった。
皆がはきはきと「はい!」と答えるのを確認して皇帝陛下は満足そうににんまりすると俺に向き直って。
「ハークよ、少々真面目な話がある、ついて参れ。」
というとスタスタと食堂から出て行ってしまった。
慌てて母上とともにあとを追いかけて俺も食堂をあとにした。
校舎内というかシルバーン城でもあるこの学院の中を皇帝陛下はずんずんと進んでいく、
まあ、だからと言って早いから追い付けない訳ではないが
身長差があるのでそれなりに急がないといけない。
気が付くと入学式の時以来登っていない階段の前の扉にたどり着いていた、扉の前の門番(?)二人は皇帝陛下が来ることを知っていたようで驚きもせずふつうに敬礼をして扉を開いて皇帝陛下を迎えていた、扉の中には相変わらず長い上り階段があり面倒だったが皇帝陛下がどんどん登っていくので仕方なくついていく。
「陛下、そのように急がれなくても大丈夫ですよ、お気持ちは解りますが。」
母上が皇帝陛下にそう声をかけた。
だが俺はそのセリフになにか引っかかるものを感じ嫌な予感がしていた。
皇帝陛下は母上の発言を聞いてから少し速度がゆっくりに成ったがなんとなく気が急いている感がある。
階段を登りきると扉の前の門番二人が下と同じように立哨していて扉をあけて俺たちを招き入れてくれた。
久しぶりに見るこの廊下は相変わらず素晴らしい荘厳な装飾が両壁に施されていてあっけにとられるのだが、おれの心情を知ってか知らずか皇帝陛下はおれが最初に目覚めた部屋に入っていく、俺と母上も急いでついて行くとベランダの窓が開け放たれそしてその空には見覚えのあるものがそこにはあった。
その光景をみて思わず俺は、「月」と言ったがおれの発言を聞いて皇帝陛下はすこし寂しそうな顔をしていた。
よく見るとベランダの外に見える月は輝く大きな水晶のようなものが突き刺さっていてその先端から伸びた光のきらめきがこの星の地表の方まで続いている。
「ほれ、わらわの言った通りであろう、まったく本人を罠にはめるようなことをせんと信じられないとは、全く、今上の紅龍皇朝の皇帝は肝が据わっておらんな。」
とんでもない発言が衝立の向こうから聞こえた。
俺は寒気を覚えた、罠に嵌める!? まさか中身が俺に成っていることがバレている!?
様々なことが浮かんでは消え頭の中の整理がつかなくなっていた。
本当にがっかりした様な感じで皇帝陛下がつぶやいた。
「まさか現実にこのようなことがあるとは。」
「陛下、ハーク殿下も驚いていますしまずはきちんと説明されるべきではありませんか?」
どうやら母上は俺をハーク殿下と呼んでいるので中身がどうとかそうゆう問題ではないのか!?
「よい、よい、わらわが説明しようかの、このひよっこは昔から不測の事態に弱いからのう。」
衝立の向こうから黄金の髪と瞳をもつ妙齢な美女が現れた、髪が金色だからか判らないがなんとなくエリザに似ているような気がした、体には何の毛皮なのかよくわからない毛皮を纏っている。
俺が身じろぎもしないで見ていると。
「久しいのう坊主、生まれて間もないころに一度、おうただけだから記憶にないのも仕方ないか。」
いつの間にか現れたメイドたちによって大柄な椅子が差し出されその黄金の女性は椅子に腰かけると続けて口を開いた。
「まず、わらわの自己紹介からしようかの、わらわは聖母龍とかゴールドドラゴンとか呼ばれておる、本来の名前は些細な事、元々は龍体だったから発音できんからの。」
「さて、これでもよくわからんか?」
と聞かれたので俺が首をブンブンと横に振ると聖母龍は満足そうにニコニコし始めた。
最初の一頭目、そうこの聖母龍こそが他の世界から降臨したこの国の始祖である金龍帝の精を受けた最初の一頭目、すべてのドラゴンの母といえる存在。
ある程度の年齢を重ねればドラゴンは人の姿を取れるがその技法を生み出したのもこの人(?)であった。
金龍帝も人とドラゴンの両方の体を持った神そのものでここからドラゴンと龍族に分かれた。
だがこんなことはこの国に住んでいれば常識でだれでもが知っていて当たり前の神話に過ぎなかった。
「では説明の続きをしようかの、おぬしはあの衛星と月と呼んだ。」
そういわれて、しまったという感になった、背筋に寒いものが走る。
「まあ、そう お恐れずとも好い、おぬしを糾弾しようということでは無いのだ。」
聖母龍が続ける。
「元々あの衛星は我らは月宮殿と呼ぶな、まあ、聡明なおぬしの事だ、それも勿論知っていよう、だが実際久しぶりに見てみて、そう言葉が出てしまったのであろう、この星では半年間だけ登るあの月宮殿を酒の肴に眺めたりもするのだが 最初に金龍帝が息子の四龍皇と共にあそこに降り立ちそれからしばらくしてから我々の住む星に降りてこられたのだ、ここまでは誰でも知っていることよな。」
いつの間にかどこから出したのか判らないが扇子をだしてそれで他の人から遮りながら内緒話のようにゴールドドラゴンが言う。
「じつはの神々の武器庫はあそこにある、これは一部の者しか知らない事じゃが。」
彼女によって様々な事柄の謎が解けるのは良いが、俺は心中穏やかではいられなかった。
「まあ、だから怯える必要はないのじゃが、もう一つ我が国には一部の物しか知りえない事柄が有る。」
「世の力の均衡が崩れようとする時に調律者として現れる[天を翔ける者]という存在、はっきり言ってしまえば今のおぬしの様な境遇の者の事じゃ。」
俺は、今まで散々ばれないようにして来たがそもそもそうゆう伝承が有ったと言うことに驚きを隠せなかった。
急に力が抜けてへたり込みそうになったがいつの間にか聖母龍の椅子とおなじ椅子があてがわられていてその場に崩れ落ちるという最悪の結果は招かないで済んだ。
俺の反応を見て皇帝陛下と母上は少し寂しそうな表情を浮かべていたが、母上が口を開いた。
「ですが、ハーク殿下、貴方が私たちの息子で有ることは変わらないのです、聖母龍様の仰る所によれば他の可能性の地平の貴方とハーク殿下はたどった世界の可能性が違えども同一人物なのですから。」
「まあ、ありていに言えばそうじゃな、そもそもだからこそ天を翔けるものと言われるのだからな、
お前も、眠っているときに自分の人生ではない他の自分の人生を夢で体験することもあるじゃろう、
それはほかの可能性の地平の別の自分の人生を垣間見ているのじゃ。」
俺とハーク殿下が同一人物、そういわれてどれだけ安堵したか判らなかった、そしてこれから此処にいるハークの両親には理解されて居る、この事実がどれだけうれしかったか。
気が付くと俺の目からは涙が流れていた、張りつめていたものが一気にあふれ出ていた。
ハークの両親と聖母龍は非常に優しかった、ある程度の話を終えると。
聖母龍が
「今日の所は心の整理もつけたいだろうから明日また細かい話をする」と言い残し、すぐにその場はお開きに成った。
翌日、昨日の予告通りに聖母龍が俺の所に来たのだが。
「あの、なんでメイアリアのメイド服着てるんすか・・・?」
もしかしてブラックドラゴンさんとかレッドドラゴンさんがキャラ濃いのってこの人が原因なんじゃ・・・。
「えーと、なんというか余りにも可愛いかったから着てみたのじゃ。」
あ、 そうっすか、 普段はメイアリアの補佐としてきている黒龍皇朝系のメイドさんが非常に困ってるから辞めてほしかったんだけど・・・。
「蝕と大禍を止めるために我らが有る。」
衝立の向こうでメイド服を着替えながらゴールドドラゴンが真面目な感じで話し始める・・・。
「あの、」
「なんじゃ?」
「着替え、 終わってからで良いですよ・・・。」
「そ、それも、そうじゃな。」
絶対この人だ! ドラゴンが皆キャラ濃い原因絶対この人だ!!
昨日のものとはまた違うドレスに着替え終わったゴールドドラゴンが、優雅に紅茶を飲んでいる。
「えっと、それであの蝕とかの話は・・・。」
「おお、そうじゃな、あまりにも長生きし過ぎて時間の感覚が鈍ってしまってな、すまぬな。
「まず蝕の説明だが、可能性の地平の話は少ししたが、可能性の地平は必ずしも同じ高さにあるという訳でもないのじゃ、川や海に例えると解りやすいかの、上の層や下の層や流れが急な所、緩やかなところなど可能性の地平は様々な特色がある。」
「いま、わらわ達が居るこの地平は比較的下の層にあるようでの、上の層にあるほかの地平からよくないものが臨界を超えると境界を越えて堕ちてくるのじゃ。」
昨日も持っていた扇子をヒラヒラさせながらゴールドドラゴンが説明する。
「それは、具体的にどういったものが・・・?」
「必ず何かがということでは無いの、上の層の世界で大量に人が亡くなったり等して負の想念が一定値を超えると周りの物を巻き込みながらじゃ、これをわらわたちは蝕と呼んでおる、そしてその蝕によって本来のありようを捻じ曲げられた物を大禍と呼んでおる。」
「金龍帝がこの世界の創造神に乞われて比較的に下層のこの地平に我が国を蝕や大禍の防衛策として作ったのじゃ。」
「そして天を翔ける者じゃが、蝕と大禍が頻発するときに調律者として別の可能性の地平同士の同じ人物の魂が融合してどちらの世界にも一人の人として行動できる者のことを言う。」
「まあ、早い話があっちで蝕の元を断ってこっちで大禍を倒せばよいという話じゃな。」
ゴールドドラゴンが言うにはほかのパラレルワールドで大量に人が死ぬとパラレルワールドの境界が破れて周辺の物と一緒に下に堕ちてくるということだった。
あまり聞きなれない言葉がおおかったので理解するのが難しかったが蝕や大禍が頻発するときにそれを回避するために天を翔ける者が現れるということだった。
「それがいまのお主に課された状況じゃ。」
「蝕が頻発するときに俺みたいなのが現れるってことは前にもあったんですか?」
パンっと扇子を閉じながらゴールドドラゴンが言う
「良い質問じゃな、前に天を翔けるものが現れたのは丁度一万年ほど前じゃ、こう言えば聡明なおぬしじゃ、誰がそうであったかは当たりが付くじゃろ?」
一万年前、丁度北方の巨人族と戦争が有った時期、その戦争を終結させた立役者といえば・・・。
「まさか、破軍・・・。」
俺のセリフを聞いて満足げにほほ笑むと、聖母龍が続ける。
「物分かりが非常に良くて逆に興ざめじゃのう、全く。」
そんなこと言われても困るんだが・・・。
「まあ、佳い、時間がかからなくて助かるからの。」
さっきまでメイアリアのメイド服着たりのんびり茶のんでた人のセリフとはとても思えねえ・・・。
「まあ、その破軍なのじゃが、実はの最後の戦闘で相打ちに成っておっての、当時の白龍帝と軍が他の巨人族をやっとの思いで退けてたどり着いたときには氷漬けに成っておった。」
「氷漬け!?」
「そうじゃ、破軍の戦後の伝承が一切ない理由がこれで判ると思うのじゃが。」
「それじゃまさか今も氷漬け?」
「うむ、実はこの氷がなかなか難物でな、ある一定の時間が過ぎるとさらに周りから水分を吸い取って氷結が拡大する、このために拡大した氷結部分をその都度切り取って水に戻さねば成らないのじゃ、それも遠くに切り離さないといけないのでわざわざ転移魔法でな。」
「そんな状態で破軍は生きてるんですか?」
「仮にも黒龍皇朝系の龍族じゃから、氷漬けにされたぐらいでは絶命はしとらんじゃろうし、その氷の呪いはどうやら破軍の魔力を喰って動いておるからのう。」
「でも氷漬けに成ってるなら会ったっところでどうにも成らないんじゃ・・・。」
いたずらを思いついたかのような顔をしてウィンクしながらゴールドドラゴンが続ける
「だからこそおぬしの出番じゃ、属性がまるで違うのにほぼ同じ量と質の破軍とお主の魔力が合わされば呪いが消し飛ばせるのじゃないかなーとわらわは見ておる。」
ないかなーってアバウトだなぁもう・・・。
ゴクゴクゴクッ
一気に安酒を煽り、青藍の髪の騎士崩れの男は酒に溺れていた、彼が今いる場所はどの国の恩恵も受けていない閑散とした廃村寸前の村の酒場だった。
酔いつぶれた瞳に一人の女が映る。
するとすっかり酒で焼けてしまった声でうざったそうに言い放った。
「なんだ、女なんか呼んじゃいねえぞ。」
彼の言葉などどこ吹く風、現れた女はこう切り出した。
「私はアーシェリカと申します、あなたをスカウトに来ました。」
そういったアーシェリカの口元は獲物を見つけた肉食獣ように舌なめずりをしていた。
結局、何もすることが無かった騎士崩れの男はアーシェリカについて行くことにした、物心ついたころから甘やかされて育っていた男には今の生活水準がどうにも耐えられなかったのだ。
龍族の特徴として身体が丈夫なのも時には困りものだ、どれだけの量の酒におぼれた所で寝て起きてしまえば他の種族の様に二日酔いで朦朧とすることもない。
呑み続けていて体調が何処か変わるのかといえば酔える事と喉が焼ける程度だ。
村を抜け荒涼とした荒れ地を半日ほど進むと岩山の中に洞窟が見えて来た。
洞窟の前まで来るといままでろくに会話もしていなかったアーシェリカが口を開いた。
「こちらです。」
中に入ると洞窟だと思っていたそれはどうやら古代の遺跡の様だった、さらに奥に進むと魔導の灯りがともった大扉が見えてくる。
アーシェリカが大扉を開けると中は錬金術の研究所か魔導研究所の様に成っていた。
「こんなところにこんな規模の研究施設が・・・。」
「凄いでしょう? でももっとすごいのが奥にありますよ。」
アーシェリカに促されるままさらに奥の大扉を開けるとそこに懐かしい姿が有った。
巨大な水槽の中にレイボルクのブルードラゴンが浸かっていた、それも完全な形で。
「ば、馬鹿な!」
レイボルクはそれ以上の言葉が出てこなかった。
ライノルト・ブランは入学式の翌々日からすっかり大人しくなっていた、エリザに自分の家系の属性魔法を使ったことで他の生徒から腫物扱いされる所だったのをエリザ本人のとりなしで自らのクラスに馴染めたからだった。
今は本人も何故あんなことをしたのかと思うほどになっていたが、まあ、何のことはない、昔の記憶にあるあこがれの人の面影をエリザに見ていたが為の、嫉妬の裏返しというやつだった。
初めてその女性を目にしたのは彼の長兄の叙勲式での事だ、壇上の端に座っていた金色の髪の龍族の女性に子供ながらひとめぼれをしていた。
当の本人にその自覚はなかったが、未だ幼いライノルトの脳裏にはっきりと焼き付いていた、後からわかった事だが、その女性は聖母龍だということ、
とてもではないが自分ごときが近づける存在で無いのだと考えていた。
そんなライノルトの思いを他所に、目の前を聖母龍がハークと共に歩いている・・・。
「な!!」
ライノルトの声を聞きつけて聖母龍がこちらに歩いてくる。
「おや、レイボルクの所の末弟ではないか、元気にしておるか?」
人懐っこいにこやかな顔で聖母龍がライノルトの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ッ・・・!!」
「あのーゴールドドラゴンさん、彼、立ったまま気絶してるんですけど。」
「ありゃ!?なんでじゃ、わらわは、何かまずい事でもしたかの!??」
「このままほっとくのもあれなんで、保健室に連れて行ったほうが良いような気が・・・。」
俺がそう言い終わるやいなや、ゴールドドラゴンがライノルトを抱きかかえていた。
「仕方ないのう、青龍皇家の血筋の者はどうしてこう、気が小さかったり周りが見えなくなったりするんじゃろう。」
聖母龍とはいえ女性にお姫様ダッコされているライノルトを見てたらなんだかいたたまれない気持ちに成ったな・・・。
保健室の前まで行くと今度はエリザとリーナ、カレン、ユリエ、そして先日から加わったフレイヤの五人と出くわした。
「ハークそちらの方は?」
「なんかエリザちゃんに似てますね。」
と、リーナ
「にゃんか首裏の毛が逆立つにゃ・・・。」
フレイヤが独特の感想を述べたりもしたが。
誰だか説明したらもうこの和やかな雰囲気は壊れそうで嫌なんだが、仕方がないから説明した。
ユリエはとっくに気が付いてるもんだから説明する前からちゃっかり畏まってたりするんだが。
保健室の前だったから助かったがリーナの様子までおかしくなってしまった、緊張して過呼吸を起こし始めたので俺とゴールドドラゴンはライノルトを比較的平気な顔のエリザ達と保健医に任せ早々にその場を後にした・・・。
「まったく最近の龍族はみんな気が小さいのう、これではわらわもおちおち趣味の旅行もできんではないか・・・。」
旅行、趣味なんだ・・・。
「誰だか言わないで旅行すればいいんじゃないですか。」
「お!それは名案じゃの!」
ライノルトが保健室で目を覚ますと目の前に金髪の女性が・・・。
最初聖母龍なのかとも思ったがエリザだと認識したら妙に気恥ずかしくなってしまった。
「あら、起きたみたいね。」
そういうとエリザは他のベットの方に行ってしまう。
その様子を見てライノルトはなんとなく寂しく成っていることに気が付いた。
リーナの背中をさすりながらカレンが言う。
「リーナ落ち着いた?」
「私に似てるんだから緊張すること無いのに・・・。」
「みゃあ、あの気配はとんでもにゃいかりゃ無理もにゃいにゃ・・・。」
「そんなにすごかったかしら?」
「おまえりゃ龍族は同胞だかにゃそこまで怖くにゃいにゃ、本能的にやばい死にゅ!って思ったにゃ。」
「それだとリーナが緊張するのもおかしな話ね、もうちょっとフレイヤよりも怖くないはずでしょ。」
「じゃあ単純に偉い人とかににゃれて、うつったww、慣れてないだけじゃない?」
とカレン
「ありえるー。」
とエリザ。
しばらく益体も無い世間話が続いたがエリザとリーナがなぜシルバーンの騎士学院に入学したのかの話になったらリーナが徐々に元気に成っていった。
リーナと言えども女の子なので人の色恋沙汰の話は大好物なのである。
最終的に元気になったリーナがなぜ騎士学院をシルバーンにしたのかばらし始める。
「エリザちゃんは破軍様が大好きなのよね!」
「ちょっとリーナ流石に恥ずかしいからその言い方は辞めてよね。」
「えーだってー初めて破軍様の伝記本を読んでた時何回話しかけても返事もしなかったんだもん・・・。」
「え、そんなに何回も話しかけてきてたの??」
「そーだよー、あの時は明日、村の広場で朝から遊ぼうって約束してたのに来ないからおうちまで行ってみたら村長さんから貰った本ずっと読んでたんだもん。」
「村長さんにあの本なんですかって聞いたら破軍様の伝記だよって言われたんだけど読み終わるまで何回呼んでも返事なかったもん・・・。」
「へーいっがーい、エリザって優等生なだけかと思ったら結構かわいいところも有るのね!!」
「ちょっとカレンからかわないでくれる、あの時はまだ子供だっただけよ。」
「でも今、破軍様の卒業した騎士学院の有るシルバーンに居るじゃない!?」
エリザにしては珍しく真っ赤に成ってうつむいてしまう。
女子生徒同士の会話に混ざる訳にもいかず黙ってベットで寝ていたライノルトは本人が自覚するよりも早くまたもや失恋をしていた・・・。
そんな和やかな会話が周りで繰り広げられているにも関わらずユリエは心配そうにハークが去った後を珍しく真面目な顔で見続けていたのだった。




