二択、再び
ダンジョン名:実験サンプル82号(株)アゾット製薬
レベル:20
経験値:53280
属性:闇
冒険ログ:33
状態:健康を維持しています。
「…………」
おい。
前株、アゾット製薬って。
「ちょっと、お姉さん。これ、本当にアンタの私物? 会社の備品を勝手に持ってきたんじゃないの?」
「えひひ……っ。バレちった」
理央は、まったく悪びれもせずに笑った。
「ほらぁー!? ダメだろ、そんなことしちゃ。なんかあっても、俺は責任取れねーぞ!」
「大丈夫だよ、大丈夫……。月曜の朝までに戻しとけば、わかりゃしないから……えひひひー」
なぁーにが大丈夫だ。ヌケヌケと。
むしろこんな奴が主任研究員だなんて、大丈夫なのかアゾット製薬!?
理央はえひえひ笑いながら言葉を続ける。
「そ、それにね……その82号のお世話を、私がしてるのは本当だよ。その子は、競技シーンを想定して育ててる途中なんだ。社内でもレベルの近い同士でレイドさせてるけど、いまだに負けなしなんだよね……。お兄さんなら、わかるんじゃない? その子、ちゃんと剪定されてるでしょ」
言われて、じっくりと観察する。本当だ……。
どこも同じような光沢感で、見劣りするところが一つもない。
完璧な整合性で、美しいとすら感じるほどだ。
「ホントだ。すげえ。めちゃくちゃ綺麗に剪定されてるな、このダンジョンスプラウト!」
「でしょー? まあ、アタシはその輝きってのがサッパリ見えないんだけどね……残念だなぁ」
「えっ。光が見えずに、どうやって剪定するんだ?」
「定期的なX線検査と、定点カメラでのラビリミンの活動パターンの記録。えひっ。あとは超音波測定で、構造的な脆弱部をあぶり出すのさ」
「マジかよ! 検査と記録だけで、こんな素晴らしい剪定ができるもんなのか?」
そんなの、俺にしてみれば『画面を見ないで音とタイミングだけでマリカのコースを走ってます』と言われるようなものだ。しかも、俺より早いタイムで。
にわかには信じがたい……。
が、実際の成果を目の前で見せられては、ぐうの音も出ない。
「アタシはさ。お兄さんみたいに、オーラみたいなのが見えるわけじゃないけど。科学的な検証で、剪定の重要性は理解してるからねえ。それにデータの積み重ねがあれば、破壊箇所の最適解は計算で導き出せるんだよね……えひひー」
理央は、自信たっぷりにそう言った。
「……へえ」
言動がデタラメ過ぎて、ふざけた奴だと思っていたが。
ハッタリじゃなければ、結構すごい奴なのかもしれない。
「で、どうする? お兄さん」
笑顔の理央は、メガネの奥の目をスウッと細める。
「やるの? やらないの?」
またその二択か。
だが、いいだろう。
受けて立とう。
「やるよ。そのダンジョンに興味が出てきた」
「いいね。興味なら、アタシもお兄さんに感じてるよ。ビンビンにねぇ。えっひひひー!」
アゾットせいやくの りおが しょうぶを しかけてきた!
りおは どろぼう をくりだした!
りおは じっけんサンプル82ごう をうばいとった!
げん「ひとのものを とったら どろぼう!」
りおは いちゃもん をくりだした!
りお「げつようの あさまでに かえしておけば わかりゃ しないって。えひひ」
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