ログとは何か?
ログはダンジョンコアに刻まれたラビリミンの磁力文字を、ダンジョンスプラウト読み込みアプリ『ラビスコープ』が、日本語にそれっぽく訳したもの。
要は、読者が好む『味付け』がなされている。
本来であれば「オレ ススム」とか「オレ ニゲル」だとか「オレサマ オマエ マルカジリ」なんてのを、AIを使ってカッコよく、情緒あふれる表現へと変えてあるのだ。
昔は人力で翻訳していた。レイドの世界大会のログなどはWEB上で無料公開されているのだが、長編で非常に読みごたえがあり、俺も学生時代は読みふけった。
とは言え、記されてないことは翻訳できない。
つまり書いてある事は、全てラビリミンにとっての現実、本当にあった事なのだ。
記念すべき初レイドは、明らかな格上相手に、完全なる勝利で終わった。
ここ一週間、俺は何度もラビスコープを立ち上げて、凛花とのレイドのログを、何度も何度もしつこく読み返した。
どんな大会の名試合よりも、俺のダンジョンスプラウトに刻まれたたった四階層の初めてのクリアログが、誇らしくて輝いて見えた。
口じゃ「レベルが下だから負けても仕方ない」みたいに言ってたが、勝ったら勝ったで、死ぬほど嬉しい!
ダンジョン防衛成功の経験値と合わせて、およそ500。鉢植えのダンジョンが拡張され、住んでるラビリミンも、一体増えた。
課長に理不尽な説教くらってる間も、頭の中でログを反芻する。
怒鳴られてるのになんだか満足気な俺を、いたぶり甲斐なしと判断したのか、今週の説教時間はどれも10分以下だった。
クソ課長め。やっぱり、俺の嫌がる顔を楽しんでいるだけじゃないじゃないのか?
とはいえ、仕事の量が減るわけではない。
相変わらずの激務続きで、終電を逃すことも多い。
それでも帰宅して熱いシャワーを浴びて、缶ビールを飲みながら一生懸命にダンジョン拡張にいそしむラビリミン達を見ていると、どんなにクタクタに疲れてても、睡眠時間が削れたとしても……生きてて楽しいと。
心の底から、そう思えるのだった。
明日は日曜。また、公民館でレイド会がある。
俺は園芸店で買い求めた植物用栄養剤を土に突き刺し、ネットで注文したダンジョンスプラウト用のミニチュア建材を鉢植えに乗せて、おやすみと呟いて目をつぶった。
ダンジョン名:サービス残業お断りダンジョン
レベル:6
経験値:510
属性:冥
冒険ログ:1
状態:健康を維持しています。やる気十分です。




