朝倉凛花
焦りまくってスマホをわちゃわちゃやってる彼女に、俺は苦笑しながら言う。
「ねえ。とりあえず、弁当を食べちゃいましょうよ。俺のラビリミンが帰ってくるまでは、ログも交換できないですし」
ログとは、ダンジョン攻略を終えたラビリミンが、己の冒険譚をダンジョンコアに、磁力で刻んだものである。
それをアプリで日本語に翻訳し、互いに交換することを『ログ交換』という。
朝倉のダンジョンには俺のラビリミンがいるので、撤退してもまだ帰れない。
「は、はい……。そうですね……えー? ホント冥って何よ、冥って……」
朝倉はブツブツ言いながらも、自分のお弁当を食べ始めた。
彼女は二十二歳で、オモチャ会社に勤務してるそうだ。
ダンジョンガーデナーなんて趣味にしてるから、お金持ちのお嬢様かと思ったら、ごく一般的な家庭に生まれ育ったらしい。
苗は卒業旅行に溜めてた貯金全部と、今後のボーナスで絶対に返すと約束して、両親に借金をして買ったのだとか。
弁当を食べながら色々と話してるうちに仲良くなって、俺らは下の名前で呼び合うことになった。
女の子から「玄さん」と呼ばれるのも、こちらが名前で「凛花ちゃん」と呼ぶのも、なんだか色々と久々で、くすぐったい。
結局、俺のラビリミンが『陽炎花廊』から戻ってきたのは、レイド開始から四十五分が経ってからだ。
どうやらダンジョンを制覇したらしく、(*≧ω≦)ノな顔でキーキーと勇ましく歓声を上げながら出てきた。メガネ拭きのマントが、ちょっぴり焦げてる。
入口で待っていた凛花のラビリミンと、お辞儀を交わして自分たちのダンジョンへと戻って行く。
しばらくしてから、凛花が言った。
「……よし。そろそろログも書き込まれたでしょう。伏見さん。ログ交換しましょうか。私、何があったのか早く知りたいです!」




