SS2_雲の上のふわふわキッチン(ツムギ視点)
キャンピングカーのキッチンに立つ時間は、私にとってかけがえのない宝物です。
地上から澄み渡る大空へと舞い上がり、窓の外にどこまでも続く真っ白な雲海が広がった時、私の心はワクワクとした高揚感で満たされていました。
「雲の上でお料理……ふふ、どんな素敵なメニューが似合うかしら」
世界樹のエルフの長老様からいただいた小瓶を取り出します。
七色の光を放つ『木もれ陽の雫』。世界樹の聖なる自然魔力が凝縮された奇跡のエッセンスです。
これをネットスーパーの最高級新鮮卵と組み合わせたら、どんなに素晴らしいスイーツができるだろう――そう考えると、手が勝手に動き出していました。
黄身と白身を丁寧に分け、ボウルの中で泡立て器を一定のテンポで動かします。
ツヤのある滑らかなメレンゲができてきたところで、『木もれ陽の雫』を静かに二滴落としました。
すると、ポツンと落ちた雫を中心に、真っ白だったメレンゲがパッと黄金色の淡い光を帯び、ふわリと大きな雲のように膨らみ上がったのです!
「まあ……! まるで空の積乱雲みたいにフワフワ……!」
ナビ様がスチームホットプレートの温度を正確に160度にキープしてくださり、生地をぽってりと乗せて蒸し焼きにします。
数分後、蓋を開けた瞬間に広がったのは、バニラと卵の甘い香り、そして『木もれ陽の雫』がもたらすどこか清々しい幻想的な芳香でした。
ウッドデッキを開放し、最初にお出ししたルナ様とララちゃんが「口の中でシュワ〜って溶けちゃう!」と目を輝かせて歓声を上げてくれた時、胸の奥がじんわりと温かくなりました。
そして、外で槍を構えて険しいお顔をされていた竜騎士のドラグ様。
一口食べた瞬間に目頭を熱くして涙をこぼし、「こんなに美味しいものは生きていて食べたことがない」と感動してくださった姿に、料理人としての大きな幸せを感じました。
「ユウ様、次はどんな街で、どんな美味しいお顔に出会えるでしょうか」
新しい調理器具をピカピカに磨きながら、私は大空を駆け抜けるキャンピングカーのキッチンで、静かに微笑むのでした。




