第179話: 審査員たちの驚愕とグランプリ
「……どうやら、私の負けのようだね」
静まり返った(というより、観客の半分が失神し、残り半分がヨダレを垂らして放心している)コロシアム。
厨房ブースの横で、ツムギの『大人のお子様ランチ』の予備分を一口試食したエルフの三ツ星シェフ・レオンが、フォークを置いて静かに目を閉じた。
「レオンさん……?」
「素材を生かすことだけが料理じゃない。時には、全く異なる強烈な個性をぶつけ合い、そしてそれを一つの皿の上で完璧に『調和』させる……そんな荒業が、まさか存在したとは」
レオンは目を開け、憑き物が落ちたような、とても清々しい笑顔をツムギに向けた。
「あの茶色いソース(デミグラス)といい、この白いソース(タルタル)といい……君たちの料理は、私の想像の遥か彼方をいっていたよ。完敗だ。素晴らしい料理だった」
「あ、ありがと……なんよ!」
天才三ツ星シェフからの最高の賛辞に、ツムギが少し照れくさそうに笑う。
『しゅ、しゅしゅしゅ、集計が出ましたぁぁぁぁっ!!』
審査員席からのあまりの熱気(と奇声)に引き気味だった実況の声が、コロシアムに響き渡る。
『満場一致……! いや、審査員20名中、20名が持ち点を限界突破して【測定不能】を叩き出しました! 今大会のグランプリは……ヤマトから来た奇跡のシェフ・ツムギと、そのキャンピングカー一行ですッッッ!!!』
「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」」」
失神から立ち直った観客たちから、地鳴りのような大歓声が巻き起こった。
ツムギがルナやララと抱き合って飛び跳ね、ソフィアが満足げに頷き、セリスが嬉し泣きをしている。僕も、ガッツポーズをしてポチの頭を撫でまわした。
「さぁ、優勝者であるツムギ一行には、約束通り! グルメンティア秘蔵の『世界三大珍味詰め合わせボックス』と『伝説の魔導調理器具セット』が贈呈されます!!」
壇上に、神々しい光を放つ巨大な宝箱が二つ運ばれてきた。
世界を救う旅路なら伝説の魔剣や聖鎧が入っているところだが……僕たちにとっては、そんなものよりも何万倍も価値のある「最高のお宝」だ。
「やった……やったんよ! これで、キャンピングカーのキッチンがもっともっと最高になるんよぉぉぉ!」
ツムギが宝箱にすがりついて歓喜の涙を流す。
こうして、美食都市グルメンティアにおける熱く平和な『食の祭典』は、僕たち一行の完全優勝という、これ以上ない最高の結果で幕を閉じたのだった。




