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春の雨の見る夢
春の雨は静かに
静かに降りてくる
そらは白い水の色
遠くまで雲があって
そらは広い
雨は地を潤し
草木を潤し
そうして閉じた瞼の向こうから
静かに花の夢を見る
雨の見る夢は白い
どこかの国に
桜咲く街があって
桜の道が続いて
きれいな色の傘が通るたび
桜がはらりと舞って
雨は傘が好きで
桜の花を贈る
傘は桜の花を乗せて
散歩道を歩いて
電車に乗って
隣町まで
雨の贈り物
玄関に着いたら庭木の下で
ちいさな水たまりの上で
傘とともにひと休み
雨あがりの日に
ひらり一枚、風に乗り
そらへ
雨の見る夢は
雲のかたちが毎日変わるように
春夏秋冬に変わっていく
春のそらには雨
手を伸ばせば水の感触
春の雨あがりは
音も立てないくらい、静か
桜の花の散るように




