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夏の面影
、
夏の面影は
夕日に燃える市街地の
路地裏の影
植木鉢の草花の葉が
茜色に染まって
光と影が差す
アスファルトの道に
雑草の花が一輪
咲いている
交通量の多い交差点で
駅のホームで
歩道橋のうえにて
人はいま、街も車も電車も
夕日の世界の住人
夏の面影を思いながら
風になって歩こう
夕暮れの道が
時の流れの中に一瞬を作る
その一瞬を灼きつけて
フィルムの映像のように
いつか上映する日まで
いつかの
ひぐらしが鳴いている
いつまでも続く
夕暮れのように
あの日の潮の匂いがして
帰っていく




