52話 Re:Alternative
闇の中────
「それで、ここからどうします?」
「一先ず否定者達に連絡を取ろう。これは興が乗るぞ」
デルメアとラグナは闇の中を歩く。
果てなく続く闇。まるで彼等のこれからを示しているような道を歩いていく。
一歩、また一歩。この世に闇を蔓延させるべく────
「勝負は保留だリューアよ。来るべき時が来たら────」
「────もう一度、魔法戦争を起こそうではないか」
× ×
「お前はこれまでに罪がどうたらで散々人を殺して来たらしいな。お前の罪は果たして捌けるかな」
「……覚悟はできている」
『罪を喰らう者』は黒江に殺される事に難色は示さなかった。
目は瞑り、死を悟った顔をしていたのだ。
それに対して黒江は目を細めた。
「死を受け入れる────それがお前の贖罪か?」
「違う……」
『罪を喰らう者』は黒江の言葉に対して首を横に振りながら答えた。
そして今まで自分が殺めて来た転生者達の事を考えつつ答えを続ける。
「罪は死んでも消えない。それは俺が言い続けて来た事だ。俺が今更贖罪を語る事など許されるべきではない」
「……確かにそうかもな。死んでいったリューアの力の欠片を貰った転生者って奴らはお前が何をしようとも許さないだろう」
黒江は剣を再度握り、『罪を喰らう者』の首元に剣の先端を置く。
「でも不思議だ。お前は死にたがりに見える。まるで死者に対して許しを乞うようにな」
「死が最善の選択……そう考えている事は否定しまい」
「そうか……」
黒江は『罪を喰らう者』の返答にため息を吐くと、剣を首元から離しその場に座り込んだ。
「なら、お前にとって死は救済にもなり得る訳だな」
救済。
この一言を聞いた瞬間、『罪を喰らう者』は目の前の男が何をいうのか大方想像ができた。
恐らくその言葉は今の『罪を喰らう者』にとって何よりも辛い────
「じゃあ、生かそう」
「止めろ!」
『罪を喰らう者』は即座に黒江の言葉を否定する。
死を望んでいる。それは間違いない。
それを否定されてしまえば、もう自分の存在意義のない世界でどう生きたいかというのか。
『罪を喰らう者』は切羽詰まったような顔で問いかける。
「地獄に堕ち、永遠に冷めない煉獄の中で消えることの無い罪を背負い続ける。……それが最善だろう」
「違うな。お前には生きてやる事がある」
「……?」
黒江が口にした『やる事』とは何なのか想像が付かず、『罪を喰らう者』は思わず疑問を顔に貼り付けた。
そんな疑問を払うように黒江はその『やる事』の内容を口する。
「俺がさっき戦った男。アレはお前の原点だ。お前はアレを打ち倒せ」
「……正気か?」
見て、そして戦って理解している。
あの男は────別事件に位置する存在だと。
そんな存在を目の前の男は倒せと命令している。
思わず『罪を喰らう者』は呆けた顔を露わにしてしまう。
そんな『罪を喰らう者』とは相反して、黒江は淡々と冷めた表情で話を続ける。
「お前の汚点はお前で拭え。それと……これは個人的な提案だ」
黒江は提案をする前に空を少し見上げ、何かに思い耽るような顔をした後に『罪を喰らう者』の目を見てその提案を口にする。
「俺の手伝いをしろ。俺には自分の力じゃ祓えない呪いが掛かっている。その呪いをお前の力を使って祓いたい」
「呪い……だと?」
黒江の外見的に目に見えるような呪いは憑いていないように見える。
しかし本人の話の雰囲気的に呪いの話は本当の事なのだろう。
かと言って自分にその呪いが祓えるのか。
『罪を喰らう者』は黒江の提案に対して謎が深まるばかりであった。
「お前の元の力は俺のモルテと同じ能力を消す能力。認めたくないがお前の能力の方が底が見えてない分ポテンシャルがある。俺と一緒に世界線の旅をして能力を開花させろ」
一方的な案というよりかは命令に対し『罪を喰らう者』はやはり難色を示すばかりであった。
「しかし……」
「お前の能力はオルタナティブというらしいな」
黒江の唐突な切り出しに『罪を喰らう者』は思わず「あ、あぁ?」と疑問を呈する形で答えた。
そんな疑問混じりの答えに黒江は伝えたいことを続ける。
「オルタナティブは直訳で『取って代わる』という意味がある。一度人格を壊され、その代償として今の歪んだ身体と別の思考を手に入れたお前にピッタリの言葉だな」
「……何が言いたい」
「もう一度、新しい何かに生まれ変われ」
黒江の言っている事がわからないのか『罪を喰らう者』は黙ったままである。
そんな『罪を喰らう者』を見た黒江は言葉を続けていく。
「お前は生きて消えない罪を背負いながら、新しい自分を探せ。昔のお前にはもう戻れない。だが、今の歪みから抜け出す事はできる。さしづめ────」
「Re:Alternativeと言った所か」
「……そんな資格ありはしない」
「そんなものは探せばいい。これ以上ウダウダ言っていると半殺しにするぞ」
黒江はその場から立ち上がると、自身が生み出した黒い靄を消し去り、次の世界線へ旅立つ準備を始める。
「まずはリューアに会わないとな……早く立て」
「……俺は、自分が何者かわからない。今俺の中にいる奴の片割れがいつ暴れるかもわからないぞ」
「そんな片割れ如きに負けるわけないだろ。いざとなれば即時抹殺してやる」
『罪を喰らう者』は黒江の言葉を聞くと静かに笑い立ち上がった。
「……本当に、いいのか」
「許すのは俺じゃない。お前が殺した奴らだ。あの世に顔向けできるような戦果を残せ」
「……わかった。俺があの怪物を倒して見せよう。それがせめてもの贖罪になるのなら」
黒江は『罪を喰らう者』の言葉を聞くとフィーリアの能力の一部を使い、世界線を繋げる。
「仕事は山積みだ。リューアに会うついでに一つ一つ片付けていくぞ」
「……あぁ」
『罪を喰らう者』は歩き出す。
自分が何者なのかを知る為に。
自分が何を成すべきなのかを知る為に。
自分が何者になるのかを知る為に。
この騒動の原因であり原点、ラグナを殺す為に。
世界がこの事件をきっかけに、闇に堕ちることなど知る由もなく────歩みを進める。
Re:Alternative (完)
next episode of 『WHITE EMBLEM』 and 『The Rampage』
ここまで読んでくださりありがとうございました。
途中『Rampage』シリーズや他の作品の修正、そして大学のレポートのせいで更新が滞っていましたが、何とか完結まで持っていく事が出来て一安心です。
連載当初の予定からRe:Alternativeは先に続く物語の序章として書く予定だったので肩透かしを食らった人たちには大変申し訳ない……
自分の書いている作品は最終的に一つの世界線で交わる、という壮大な群像劇形式で展開しているので自分の他の連載作品にも目通して頂けると大変ありがたいです。
黒江兼については過去作『BLACK MORTE』からのキャラになっています。
四年前ぐらいに書いた作品なので今更連載ストップしている作品を……と思う方もいるかも知れませんが、今現在連載再開を目指して色々と作業をしています。
モルテは処女作なのでちゃんと書き切りたいという思いが強いんですよね……
他にも『WHITE EMBLEM』もちょくちょく再開する為に書いています。
本作で登場した『偽りの神』はこの作品の世界線の事です。
作中最後に出てきた『否定者』などもこの作品に出てくる一部のキャラのことなのでこちらもしっかりと書いていきます!
長くなりましたが本当にRe:Alternativeをありがとうございました。
今後の『罪を喰らう者』と黒江がどう動いて行くのか楽しみにしていて下さればありがたいです!
では次はRampage 第二部でお会いしましょう!




