23話 死線
「もう存在が知れ渡るとは予想外だったな。もう暫くこの名が知れ渡る事はないと踏んでいたのだが……」
「それだけ特徴的で最高神の目につく様な魔力纏っていたらそりゃ速攻バレるでしょ」
邂逅を果たした神を喰らおうとしている者と神に謀叛を起こそうとしている者を諫める者。
両者は剣を交わす事は無くまずは会話を交わしていた。
最もそれには『罪を喰らう者』の身体が今は先程の戦闘で使用したモード『神の座を喰らう者」の反動で動けない事が関与しているのだが。
勿論それを目の前の神が理解していないわけが無かった。
あっさりと矢に射抜かれ且つ全身から酷い脱力感を感じ取れる目の前の男に戦闘をする程の体力が残っていない事など特段神で無くとも見てわかる事だった。
「俺の魔力が神に感知……?何故だ?」
「は?いやいやその魔力でその質問は無いでしょ」
『罪を喰らう者』の純粋な疑問に派遣された神は暫し疑問を頭に浮かべるが同時に神の言葉を思い出して『罪を喰らう者』への言葉を取り消した。
「いや、何でもない」
────本人が無自覚ならやっぱりそう言う事なんだろ。
× ×
数分前────
「自分が派遣される?その『罪を喰らう者』とやらの討伐のために?」
「ああ、そうだ。転生者達の了承は得たが彼らに正面から戦わせても死亡率が上がるだけだ。こちらでステージを用意するまで君に場を任せたい。出来るならば仕留めてしまっても構わない」
先程まで転生者達と話していた最高神とその使いと思わしき男が話ている。
男は最高神である御方から『罪を喰らう者』の討伐を依頼されており、今はその詳細を聞き出していた。
「転生者達が死ぬって……じゃあ何で彼らを集めて戦場に送り込むんですか」
最高神にもっともな意見を投げかけると最高神は顔を若干曇らせてその解答をする。
「少し違う世界線で面倒な案件が出てしまってね。それのせいで戦闘員を中々派遣できないんだ」
「だから自分ってわけですか」
「君は比較的戦闘に長けているからね。頼めるかい?」
「良いですよ。その場で首を落としても大丈夫なんですよね……?」
「あぁ、構わないが少しだけ怪しい点があってね」
最高神は肯定すると共に自身の心の中に浮かぶ疑問点を付け加えた。
「この件は裏で操ってる奴がいる気がするんだ。君にはどちらかと言うとそいつの事を頼みたい」
× ×
「……?」
神の物言いに『罪を喰らう者』は訝しむ表情を露わにしたが目の前の神はそんな顔に興味を示さずに話を続ける。
────こりゃ、予想当たってそうだな。
『罪を喰らう者』の顔色を伺いこの世界に来る前に最高神と話した会話を思い出していた。
────この件を裏から操る奴ね……
『罪を喰らう者』の魔力を今も尚微かに感じ取り神はいかにもめんどくさそうな表情を浮かべて自身に任された裏を操る者の調査へため息を吐いた。
────只者じゃないなこりゃ。
「まっ、取り敢えずだ」
そんな面倒な要件をひとまず頭の片隅に収めて神は一呼吸置いた後に無慈悲に言葉を紡ぐ。
「俺への命令はアンタを殺す事だ。てな訳でその首貰っていくぞ」
神は腰に携えていた剣を抜き出し、その剣先を『罪を喰らう者』の喉元へ向けた。
────クッ……!
剣を向けられ窮地に立たされていると言うのに『罪を喰らう者』の身体は反動により動く事をしない。
それにより自ずと『罪を喰らう者』の顔には焦りの表情が若干浮かんでいる。
「俺の力が貴様らの神様の癪に触るようなものであったか?」
苦し紛れの時間稼ぎ。
無理矢理に会話を続けさせその隅では何か打開策は無いかと模索する。
しかし会話は冷酷にもバッサリと切り捨てられてしまった。
「あ〜いいよいいよ。そう言う時間稼ぎはさ。この後実に面倒な案件を任されている俺の為を思って早急に死んでくれ」
神は『罪を喰らう者』の言葉をすぐさま時間稼ぎだと悟りその剣を『罪を喰らう者』の皮膚に押し当てた。
────クソッ……!何か!何か無いか……!
辺りを目線だけで見渡すが何かこの窮地を打開するようなアイテムが落ちている訳も無く、そしてそんなものがあったとしてもこの身体では結局そのアイテムを使える事は無いだろうと踏み脳の中に絶望がジワジワと侵蝕を開始する。
× ×
「おっと不味い」
そんな光景を水晶越しに見ていたタチの悪い神は特段焦る様子もなく呟く。
「そろそろ良いかな〜僕も近くまで来たし!」
タチの悪い神は白い部屋に近付いていく。
その部屋は女神が普段は居る死人を転生させる『罪を喰らう者』も入った事のある部屋であった。
「はい、ポン」
その神が水晶越しの緊迫感をガン無視した様な軽い調子で手を叩くと突如、水晶越しに映る世界に変化が起きた。
× ×
「じゃあ、さよなら!」
『罪を喰らう者』の首を落とすために剣を振り下ろそうとした瞬間────
その姿が消えた。
「は!?」




