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人間失格~仁義なき復讐~  作者: 猫塚ルイ


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第69話

拓海の合図と共に、影から躍り出た暗殺者たちは


人間としての感情を一切排除した精密な機械のようだった。


だが、絶望の淵から這い上がった俺と山城の牙は、それ以上に鋭く、そして熱かった。


「……山城、左は任せたぞ!」


「応よ、兄貴ッ!骨の一本も残さず叩き折ってやります!」


山城が金属棒を振り回し、迫り来る暗殺者の防弾メットを砕く。


俺は左手の傷口を固く結び、親父から受け継いだ脇差で、拓海の側近たちの喉元を次々と切り裂いていった。


返り血を浴びるたび、頭の中に親父の声が響く。


『和貴、極道は血で血を洗う。だがな、その血を「誰のために流すか」だけは、テメエで決めろ。それが唯一の仁義だ』


「……見てろよ、親父。今こそその教えを俺が証明してやる」


俺は暗殺者の包囲網を強引に突破し、再び拓海の目の前へと肉薄した。


拓海は、一振りの漆黒のナイフを抜き放ち、俺の脇差と激突させた。


「無駄だよ、和貴。君の動きはすべてデータ化されている。組織が君を育てたんだ。君が次にどこを狙い、どの筋肉を動かすか……私にはすべて視えているんだ!」


「なら、これはどうだ」


俺はあえて脇差を捨てた。


無防備になった俺の胸元に、拓海のナイフが深く突き刺さる。


だが、俺はそのまま拓海の腕を掴み、渾身の力で引き寄せた。


「……!?相打ちを狙うつもりか!」


「……いいや。お前の『予測』にない、ただの泥臭い一撃だ!」


俺は血を吐きながら、拓海の額に強烈な頭突きを叩き込んだ。


骨が砕ける嫌な音が響き、完璧だった拓海の表情が、初めて苦悶に歪む。


よろめいた奴の懐へ、俺は隠し持っていたもう一振りのドス――


親父がかつて大河内との決戦で使った、あの錆びた一振りを突き立てた。


「……ぐ、はっ…、そんな、古びた、刃で……」


「これにはな、理屈じゃねえ『執念』が宿ってんだよ」


ドスが拓海の胸を貫き、背後の『黒い百合』の紋章を真っ二つに引き裂いた。


拓海の瞳から光が消え、組織が三十年かけて築き上げた「血脈」が、音を立てて崩壊していく。


「……兄貴、志摩さんの拘束が解けました!早くここを脱出しましょう!」


モニター越しに、水没を免れた志摩が、フラつきながらも脱出路を確保したのが見えた。


地響きが激しさを増し、石造りの回廊が崩れ始める。


俺は倒れ伏した拓海を一瞥し、山城の肩を借りて、崩れゆく深淵の出口へと走り出した。


俺たちの体には、まだ「黒い百合」の呪縛が残っているかもしれない。


だが、俺たちの魂は、今、初めて本物の「新宿の風」を吸い込もうとしていた。


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