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人間失格~仁義なき復讐~  作者: 猫塚ルイ


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第57話

デッキに出た瞬間、荒れ狂う公海の荒波と叩きつけるような雨が俺の全身を打った。


豪華客船のきらびやかな照明が


荒れ狂う漆黒の海面に反射して、まるで巨大な怪物の目が光っているように見える。


「……ここまでだ、神崎!」


俺は雨に濡れたドスを構え、船尾のヘリポートへと追い詰めた。


神崎は、乱れた髪をかき上げながら、眼鏡を海へと投げ捨てた。


その瞳は、先ほどまでのエリートの余裕を失い、飢えた獣のような光を宿している。


「黒嵜…君さえ、君のような時代遅れの極道さえいなければ、この国はもっとスマートに再生できたはずなんだ!」


神崎がジャケットの内側から引き抜いたのは、細身だが強靭な軍用タクティカルナイフだった。


「効率?合理化? ……笑わせるな」


俺は一歩、また一歩と距離を詰める。


「お前がやったのは、ただの『切り売り』だ。守るべきもんを全部捨てて、何が再生だ!」


神崎が、電光石火の踏み込みを見せた。


細身の体を活かした鋭い突きが、俺の頬を裂く。


冷たい刃の感触。


だが、俺は怯まない。


親父のドスで奴のナイフを弾き飛ばそうとするが、神崎は驚異的な反射神経でそれをかわし


俺の左肩――古傷の残る場所を正確に狙って刃を突き立ててきた。


「ぐっ……!」 


激痛が走る。


だが、俺はあえてその刃を肉で受け止め、神崎の腕を左脇で固めた。


「……捕まえたぜ、インテリ野郎」


「何……っ!? 自分の体を使ってまで……!」


俺は右手のドスを、神崎の喉元に向けて一閃させた。


死を覚悟した神崎の顔に、初めて本当の「恐怖」が浮かぶ。


だがその時、船が大きな爆発音と共に激しく傾いた。


山城が仕掛けた解除コードの副作用か、あるいは船内に仕掛けられた自爆装置の一部が作動したのか。


「……兄貴ィ!船が沈みます!早く脱出を!」


傾斜するデッキの向こうで、山城が救命ボートを確保しながら叫んでいる。


俺は神崎を突き放し、崩落するヘリポートの縁へと追い込んだ。


眼下には、すべてを飲み込む渦巻く海。


「神崎、お前の計画も、この船も……全部海に沈めてやる。お前が売ろうとしたこの国の『土』は、お前には踏ませねえ」


神崎は、皮肉な笑みを浮かべたまま、崩れ落ちる甲板と共に闇の中へと消えていった。


俺は山城の元へ駆け出し、沈みゆく巨船から荒海へと飛び込んだ。


冷たい水が全身を包む。意識が遠のく中、俺は確信していた。


志摩も、松田も、きっと生きている。


…俺たちの物語は、まだ半分も終わっていないのだ。


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