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人間失格~仁義なき復讐~  作者: 猫塚ルイ


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第42話

新宿。かつて俺たちが血を流し


火の海となったあの街は、何事もなかったかのように新しい朝を迎えていた。


榊原ビル跡地を中心に広大な仮囲いが組まれ、その中央には巨大な特設ステージが鎮座している。


今日は三和会による「新宿新都心構想」の起工式。


会場周辺は、制服警官と三和会の私設ボディーガードによって、文字通り蟻の這い出る隙もないほど固められていた。


「……見ろよ。拓海を殺した跡地で、あいつら笑ってやがる」


会場から数ブロック離れた雑居ビルの屋上。


山城が双眼鏡を握りしめ、憎しみを込めて吐き捨てた。


ステージの壇上には、白髪を完璧に整えた老人――


三和会会長、大河内が座っている。


その隣には、車椅子に乗り、力なく項垂れる中臣の姿もあった。


連中は中臣を「悲劇の政治家」として演出し、自分たちの計画の正当性を世間にアピールしようとしているのだ。


「黒嵜、準備はいいか」


志摩が無線機のイヤホンを調整しながら問いかけてくる。


奴の傍らには、三和会の通信網に侵入するためのノートPCが置かれていた。


「……ああ。ドスの手入れは終わってる」


俺は喪服のような黒いスーツに身を包み、腰に二振りのドスを隠した。


今回の作戦は単純だ。


志摩がハッキングで会場のセキュリティを一時的に無力化し、その隙に俺と山城、松田が正面から突入する。

 

「志摩さん、ハッキング開始まであと三十秒です」


松田の声が緊張に震える。


「……誰も死ぬなよ」


志摩の言葉に俺は鼻で笑う。


「……フン。地獄の続きは、あの大河内の首を獲ってからだ」


午前十時。


起工式のファンファーレが鳴り響いた瞬間、会場の大型ビジョンが一斉にノイズに包まれた。


「な……何だ!?」


動揺する聴衆と警備員。


志摩が三和会のシステムを掌握した合図だ。


「行くぞ!」


俺はビルの非常階段を駆け下り、騒乱の渦中へと飛び出した。


正面ゲート。


立ち塞がるボディーガードを、山城と松田が捨て身のタックルで排除する。


「ここは俺たちが食い止める! 兄貴は先へ!」


「……頼んだぞ!」


俺は警棒を振り回す警備員を最小限の動きでいなし、真っ直ぐに大河内のいるステージへと突き進んだ。


雪解けの風が、俺の頬を叩く。

 

目の前には、この国の闇を形にしたような老人の、驚愕に歪んだ顔があった。


「……大河内。…榊原組若頭、黒嵜和貴だ。迎えに来たぜ」


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