表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間失格~仁義なき復讐~  作者: 猫塚ルイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/100

第19話

地下道の非常口をこじ開けると、そこは古びた雑居ビルの地下駐車場だった。


カビ臭い空気から一転して、排気ガスと湿ったコンクリートの匂いが鼻を突く。


暗視ゴーグル越しに見える世界は、不気味なほど静まり返っていた。


「……ここなら、やつらの包囲網に穴が開いているはずだ」


志摩が銃を構えたまま、慎重にスロープを上がっていく。


俺も奪った拳銃を腰に差し、ドスの柄を握りしめた。


肩の傷は熱を帯び、脈打つたびに意識が飛びそうになるが、まだ止まるわけにはいかねえ。


出口のシャッターがわずかに開いている。


その隙間から外の様子を伺った。


雨は本降りになっていた。


深夜のオフィス街。


人影はないが、数ブロック先ではパトカーの赤色灯がせわしなく回っている。


「和貴、スマホを貸せ。…いや、持っていなかったな。俺のを使う」


志摩が端末を操作し、ある番号に発信した。


「……俺だ。久保田を回収したか?…なに? 逃げられただと!?」


志摩の声が怒りに震える。


倉庫に置き去りにした久保田。


発信機を飲ませていたはずのあの弁護士が、何者かによって連れ去られたという。


「誰だ?また掃除屋か」


「いや、部下の報告じゃ、もっと組織的な連中だ。警察でも極道でもない……おそらく、中臣代議士直属の『実力行使部隊』だ」


久保田は、生ける証拠そのものだ。


あいつが中臣の手に渡れば、証拠隠滅どころか


俺たちが手に入れたメモリーカードの中身すら「偽造」として処理される恐れがある。


「親父も、中臣も……自分たちの尻尾を切りに来てやがる」


俺は雨に濡れるアスファルトを睨みつけた。


その時


駐車場の入り口に、一台の黒い高級セダンが静かに停まった。


降りてきたのは、傘も差さずに立ち尽くす、一人の男。


「……黒嵜の兄貴。やっぱりここでしたか」


松田だった。


だが、今の松田に、あの路地裏で見せた迷いはない。


その瞳には、絶望と引き換えに手に入れたような、凍りついた決意が宿っていた。


「松田……。お前、一人で来たのか」


「親父さんに言われました。…和貴兄貴を殺した奴が、次の若頭だって。俺、あんな汚い地下道で野垂れ死ぬのは嫌なんです」


松田が懐から銃を抜く。その隣の車窓が開き、複数の銃口が俺たちをロックした。


「……志摩、隠れろ!」


激しい銃撃音が、オフィス街の静寂を粉々に砕く。


かつての家族が、俺の命を「出世の階段」に変えようとしている。


俺は笑った。


血の味のする唾を吐き捨て、雨の中へ飛び出した。


「いいぜ、松田……。お前の『成り上がり』を見せてみろよ」


俺の行く先には、もう敵か、骸しか残っていないのだと悟った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ