第1章 はじまりの刻 5
「…キュー!起きるキュー!」
「…おはよう、キューちゃん」
「早くするキュー!今日から修行キュー!」
朝キューちゃんの声で目を覚ます。
私は急いでセーラー服に着替えた。
「キューちゃんちょっと待って!お祈りしなきゃ」
「お祈りはもういらないキュー!もうこっちに来てるキュー!」
「…え?」
「いつもは翠の世界の勾玉を通してこちらの世界の勾玉に巫女の力を送っていたけど、もう翠はこっちの世界にいるから必要ないキュー。もういるだけで大丈夫キュー!」
「…そういうもんなの?」
(よく分からないがそういう原理らしい。)
そうこうしているうちに部屋の外からノックが鳴り
「朝食の準備が出来ました」
と灯火さんが知らせにきた。
「おはようございます、灯火さん!」
「おはよう、翠ちゃん」
とにっこり笑う灯火さん。
(美人さんの笑顔は癒されるなぁ〜)
そんな穏やかなひととき、こっちの世界のご飯もとても美味しかった。
というか同じような感じだったので昨日の事なのにとても懐かしく感じた。
そして朝食を食べ終わった私は翡翠神社の境内へ修行を受ける為に向かった。
―――――――――――――
「まずは霊力の流れを感じてもらうキュー」
「…流れ?」
「そうだキュー!まず我が翠の肩に乗るキュー!」
そう言ってキューちゃんは私の肩に乗った。
「今から我の霊力を流すので目を閉じて集中して感じ取るキュー!」
言われるがままに集中する。
すると身体がほわほわして癒される感覚がする。
「わ、なんか癒される感覚が!」
「そうキュー!我の属性も翠と同じ光属性だから霊力を対象に流せば体力が回復出来るキュー!
火属性を流せば身体が温まるし、水属性だと乾きが癒えるキュー。風属性だと体感温度が下がり雷属性だと相手を麻痺させるキュー。土属性だと相手を地面に縛り付けることが出来るキュー。
それに光属性は光をイメージして霊力を流すと霊力が流れた物を光らすこともできるし、予め流しておいて光の念を送ると対象物が光るから落し物探しにも役立つキュー!」
「へぇー!そんな使い方が!」
「それに身体に霊力を流しながら怪我をした箇所に集中させると怪我の治療が出来るキュー!」
「…!!凄すぎる!それは皆の怪我を治すこともできるの?」
「それはまたやり方が違うキュー。とりあえず今はこれをマスターするキュー」
「了解です!先生!」
そして数時間の間、私は霊力を感じ色んな物を光らせ続けた。
だけども怪我をしていない為治癒の練習が出来ない。
(…でも自分でやるのは怖い)
そう思った時、
「おーい翠ちゃん!」
と迅さんが声を上げて手を振っている。
雹くん、陸さん、薫さん、煉も一緒だ。
「修行は進んでいるか?」
と陸さんが問う。
「はい!ただ自己治癒の修行が怪我が無いのでできなくて…
あ、そうだ!皆さん私を攻撃してくれませんか?」
そう言うと5人共吃驚した顔をする。
「…翠は何を言ってるのかな?」
笑いながら目が笑っていない雹くんが告げる。
「僕達は君を守る守護者です。君を傷付ける事は出来ません。」
そう言いながら薫さんを追いかけるように皆は去っていった。
煉だけは心配そうに立ち止まりこちらを振り向いた。
「…煉!!」
(なんだ、煉ってば協力してくれるの?案外良い奴じゃない!)
そう思っていると煉が自分の頭を指差しながら口を開く。
「頭を治癒した方がいいぞ」
そう言って去っていった。
(なんてやつ〜!!!)
私は怒りで色んな物を光らせるのであった。
――――――――――
そして次の日私はキューちゃんから合格をもらい、次の段階へ入った。
「じゃあ今日は結界の張り方を教えるキュー!
これは戦闘時で自分や仲間を守る術、応用すると敵を捕らえることが出来るので絶対マスターするキュー!」
「はい先生!」
「まずは昨日の霊力の流れの応用で霊力を手のひらに集中させてバリアを張りたい場所、範囲をイメージしてそれを放出するキュー!まずは自分を取り囲むキュー!」
目を閉じてイメージする…
うん、やればできるよ!
(せーの!)
「ふんっ!」
そうして出来上がったのは直径10mの正方形だった。
「で、出来た!」
だけどキューちゃんは厳しかった。
「デカすぎるキュー。戦闘では常に仕掛け合うキュー。霊力を無駄に消費すると最後までもたないキュー!」
「…それはそうだね…」
「この正方形をマスター出来れば、攻撃が仕掛けられてる方向にだけ壁を張ることも形を変えることもできるキュー!」
「それは絶対マスターしたい!」
こうして私は修行に打ち込むのであった。
―――――――――――――――――
その夜、守護者と九尾が広間で集まっていた。
「…まだやってるんですね」薫が問うと
「翠はとても努力家だし飲み込みも早いキュー」
「そうですね、だからこそ私達も力を更に付けなければならない…時間があまりありませんからね。」
彼らは感じていたのだ、先代の巫女の力がもうあまり残っていないことを…
「それに翠の力が強い分、妖の力も強くなるからな」
陸が口を開くと九尾が口を開いた。
「そうだキュー、今回は邪妖鬼のトップである妖の長も目覚めてるからキュー」
「それほどまでに翠ちゃんの力が…」
迅が口を開く。
「それにあやつは翠自身を求めているキュー!」
「!!?それはどういうことだ?!」
雹が語気を強める。
「今はまだその時ではないキュー。
いずれ分かることキュー。
だが今の君たちと翠の力では到底太刀打ちできないということだけは分かるキュー。」
その言葉に煉は悔しそうに拳を握るのであった。




