第26話 ハロウィンでも散歩するロン毛
10月31日。
秋の風が吹く夕方。
自然と話せる人・ロン毛は、いつものように散歩をしていた。
ロン毛「今日はハロウィンか。」
ロン毛「お菓子も仮装も縁がないけど、まあ散歩日和だな。」
道端のススキが、風に揺れてさらさらと音を立てた。
ススキ「こんばんは。」
ロン毛「お、ススキ。」
ススキ「今日はなんだか賑やかだね。」
ロン毛「子どもたちが楽しそうだったな。」
ススキ「楽しそうな声は、風に乗ってここまで来るんだ。」
ロン毛「そういうもんか。」
ススキ「ロン毛も楽しそうだよ。」
ロン毛「そうか?」
ススキ「うん。」
ロン毛「ただ歩いてるだけなんだけどな。」
ススキ「歩くのが好きなんでしょ?」
ロン毛「まあな。」
街中小さなジャック・オ・ランタンが置かれていた。
中のろうそくが、ゆらゆらと揺れている。
ロン毛「こんばんは。」
ジャック・オ・ランタン「やあ、こんばんは」
ロン毛「今日は主役の日だな。」
ジャック・オ・ランタン「一年で一番忙しい夜さ。」
ロン毛「大変そうだな。」
ジャック・オ・ランタン「でも嫌いじゃないよ。みんな笑顔になるからね。」
ロン毛「それはいい仕事だ。」
ジャック・オ・ランタン「ロン毛は仮装しないのかい?」
ロン毛「しないな。」
ジャック・オ・ランタン「その長い髪、なかなか雰囲気あると思うけど?」
ロン毛「これが俺の通常装備だからな。」
ジャック・オ・ランタン「ははは、それも立派な個性さ。」
空はだんだん暗くなり、夕焼けも消えていく。
ロン毛「もうすぐ冬だな。」
ススキ「うん。でも秋も悪くなかったでしょ?」
ロン毛「悪くなかったな。」
ジャック・オ・ランタン「今日も楽しかったかい?」
ロン毛「十分楽しかったよ。」
ジャック・オ・ランタン「それならよかった。」
ロン毛「お菓子も仮装もないけど、こうやって散歩して、お前たちと話してるだけで結構いいもんだ。」
ススキ「それがロン毛のハロウィンだね。」
ジャック・オ・ランタン「派手じゃなくても、心が明るければそれでいいのさ。」
ロン毛「名言みたいなこと言うな。」
ジャック・オ・ランタン「一応、百年以上ハロウィンを見てきてるからね。」
ロン毛「そんなに!?」
ジャック・オ・ランタン「たぶんね。」
遠くから子どもたちの笑い声が聞こえる。
風が吹き、ススキが揺れた。
ジャック・オ・ランタンの灯りも、優しく揺れる。
ロン毛は空を見上げた。
ロン毛「来年もまた、会おうな。」
ススキ「もちろん。」
ジャック・オ・ランタン「来年も、灯りをともして待ってるよ。」
秋の夜道を歩きながら、ロン毛は小さく笑った。
ロン毛「ハロウィンって、案外悪くないな。」




