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お飾りの聖女と、異世界から来た少女

五百年ぶりに復活した魔王はあまりに強力で、嫁入り前の箔付けにとお飾りで選ばれただけの高位貴族の娘の聖女では明らかに相手が悪かった。

マクスウェル公爵令嬢アンネローゼは運が悪すぎたと皆が言う。これで王太子の婚約者に内定ね、さすがはマクスウェル家のお嬢様ね、と言われた聖女選定の儀から二年。神殿で暮らし慎ましく祈りを捧げるだけの三年の任期もあとわずかのタイミングで魔王が復活したせいだ。

大陸の北方には魔界に通じる大穴が開き、魔王軍は人間の領地を飲み干しながら王国へと攻めてきている。


「―――かつて、建国の英雄たちが魔王を封印した時。聖女とは、異世界から招いた救世の少女のことを指したという」

「それ以来、国難はなかった。だから初代聖女の残したこの神殿を守り繋ぐのが聖女の役割になった」

「そうだ、アンネローゼ。祈り手と、『真なる聖女』の役割は違うのだから」


アンネローゼでは力不足だった。当然だ。

ほんの少し聖魔法に適性がある若い娘を聖女として大神殿で祈らせるだけでこれまで王国は豊かに栄えていた。少なくとも二年前まではそうだった。だからいずれ尊い方へと嫁ぐためにと、父が大枚を叩いて野心ある神官を買収し、アンネローゼを聖女へ推薦する票を搔き集めていたことを知っている。

そんな予定調和を放り投げ、大人たちが古めかしい魔術書を開いて聖女召喚の儀とやらを行ったのには、魔王討伐の為だけではなくアンネローゼのためというのも含まれているのは気付いていた。

慣例により聖女は17才から19才の任期の間、どのような身分であっても平等に神殿に籍を置くこととなる。

本来であれば聖女であるアンネローゼは聖女として世界を救う旅へと送り出され、そうして成す術もなく死ぬべきなのだ。だがしかし、公爵家の令嬢という身分が―――あるいは王太子殿下の婚約者候補という身分がそれを許さなかった。おそらく儀式が失敗したとしても、適当な娘が聖女だとでっちあげられてアンネローゼの代わりに矢面に立つ手筈だったに違いない。


そう望んだのはアンネローゼではない。周囲だ。

頭では分かっていたのに、ずっと苦しかった。悔しかった。金で買った地位と分かって、それでもせめてとばかりにこれまで毎日真面目に真摯に聖女としての決まり事を守ってきて、それで聖女さまだと慕われていたのに。突然役立たずのお飾りだという烙印を押された。

事実魔王軍に住む土地を奪われた難民が押し寄せて混乱を起こしている国の役にも立てず、王都周辺に出没をして民を困らせている魔物の討伐にふさわしい力も備えていないと判断された。

果ては、身代わりに罪もなき少女を犠牲にしようとしている。そんな中、神殿の奥で何も答えない女神像に祈り続けるだけの自分が情けなくてたまらなかった。


そういうことを、アンネローゼは思い出す。私の努力は無意味だったのかという、諦念の苦さとともに。


「―――……わあッ……! ほんとに、ほんとに召喚されたんだ……」


聖女として『聖女召喚』の名代となり、大神官や国有数の魔法使いたちが作った魔法陣のまえで暗澹たる思いのまま祈りを捧げていたアンネローゼの目前に、『真なる聖女』はやってきた。

異世界から連れられてきたはずの少女は魔法陣の中心で、彼女を取り囲む大人たちに驚いた素振りもなくそんなふうに声を上げる。

アンネローゼの、聖女としての役目が終わった瞬間のことだ。


「私、ユズキ。ユズキ・サイトウ! 日本から来ました!」


『真なる聖女』ユズキは明るく優しい少女だった。この世界では類を見ない、黒髪に黒い目をした少女。伝承に遺る初代聖女と同じ色合いだ。女神から神託と使命を言い含められているらしく、こちらの説明の前に世界を救うと胸を張った。年の近い同性としてこの世界での世話役を仰せつかったアンネローゼが紹介するまでもなく、先読みの力で王国内の人間のことはよく知っているようだった。


だが。


「……、う、嘘。嘘だぁ……。『ルナクエ』は、ご都合主義ハッピーエンドのはずなのに……」

女神の神託を受けた少女は、アンネローゼの国が二年前までそうだったように、戦のない平和な国で生きてきたのだという。

目の前の現実は残酷だった。魔物の蹂躙で成す術もなく滅ぼされた国。その影響で難民が押し寄せる王国やその隣国。もはや魔王軍に従属するしかないのでは、と血迷い事を吐く大臣や、終末思想に取りつかれて刹那的に享楽に耽る者たち。それらを処断し口止めをすることでしか平穏を保てない現実。そんな混沌とした世界のなかで、聖女の表情はどんどん憂いを帯びていった。

それでも彼女が携えた『神託』が、この国唯一の希望なのだ。

―――魔王の『攻略』には順序がある。大陸を巡る旅をして、聖なる武具を揃えなければならない。旅立つ前にまず、『チュートリアル』でやるべきことがある。

女神からの預言を携えたユズキの言葉に縋って王国が用意を整える間、アンネローゼはユズキの『チュートリアル』に同行することとなった。

たしかに彼女の預言はよく当たったが、それでもすべてを救うことは難しい。

『チュートリアル』の一つ目は、国境近くの砦に向かうことだった。

その砦は魔王軍との戦いの前線から遠く離れているというのに、転移魔法を使える魔人によって挑発のように攻め込まれるという。その『神託』を受けて王国騎士団がしっかりと隊列を組んで待ち構えていたにもかかわらず、多数の死傷者が出た。それほどまでに魔人の攻撃は鮮烈だ。彼女の聖魔法はアンネローゼよりよほど強力だったが、それでも死者の蘇生はできなかった。


「……ああ、あああ……! 待って、どうして、なんで助けられないの……!」

「ユズキ様! 落ち着いて。深呼吸をして。魔法の制御には精神の統一が必要です」


騎士団は聖女から事前に聞いていた手順で聖女とともに戦い、なんとか魔人を撃退したものの、それまでの戦闘による死者や死体と区別のつかない怪我人だらけで砦の中はひどい有様だ。

アンネローゼにとっても、当然初めての地獄だった。

自分にはできなかったことをあっさりと成し遂げた異邦の少女が手を震わせ、頬を青白く染めて唇を戦慄かせていなければ、きっとあっさり失神のひとつもしていただろう。

戦いの後、彼女はあちこちで煙を上げる砦の惨状を見てひどく狼狽えていた。撫でさすった少女のうずくまる背中はアンネローゼの三つ年下の妹よりも華奢だ。

それでもこんな縁もゆかりもない世界のひとを助けるために精いっぱいをしようとしている。こんな世界に放り込まれたにも関わらず、前向きに事態を動かそうとしている。していた。先ほどまでは。けれど間近に死を見て、ついに限界が来たのだろう。


「……で、できない、こわい、なんで……どうして……!」


当然だ。千切れた腕に顔も分からない死体。悲鳴と断末魔。血と肉の焦げた匂い。アンネローゼだとて気絶してしまいたいくらいだ。役立たずの聖女なのだから、せめて『真なる聖女』のフォローをしなければ、というその一心だけで耐えているようなものだった。

騎士団は王命には逆らえないものの、『異世界から来た聖女』と『預言』に半信半疑の者も多かった。備えているとはいえほとんどの兵士が初めての魔人戦で、練度も足りていなかった。

それでも勝った。砦は落ちず、よって守られている街が戦火に呑まれることもなく、『この程度』で済んだ。

頭目を失い散り散りに逃げて行った魔物たちが去った後、砦は人の呻き声と助けを呼ぶ悲鳴で満ちた地獄になった。戦闘能力がないからとほとんどただ見ているだけになったアンネローゼと違い魔人戦で大活躍していたというのに、聖女ユズキはなりふり構わず治癒魔法を放とうとして魔力を暴走させかけている。

ユズキの震えを背を撫でる手で感じたその時、アンネローゼはつまらないプライドから手を離したのだ。


「―――今救える命を! ユズキ、あなたになら出来ることです!」


泣きながら嘔吐して、手も足も可哀そうなほど震えていて、それでも無差別な治癒魔法の発動を止めようとしなかった少女。彼女はそう叫んだアンネローゼを呆然とした顔で振り向いた。そうしてその瞳から大粒の涙を溢す。彼女が縋るように呟いた言葉を、アンネローゼは生涯忘れることはないだろう。


「たすけて、……助けて、こわいよぉ……!」

「ええ助けます。助けますとも! 私は第212代聖女アンネローゼ! 女神さまに選ばれた祈り手が、女神さまの選んだあなたを助けるのは当然のこと!」


咄嗟にユズキの震える手を掴んだ。血と汗と吐しゃ物にまみれた小さい手を強く握った。背から少女の身体を抱いて、震える呼吸に呼吸を合わせて聖魔法を重ねて唱えた。

大規模に展開された治癒魔法によって、死者がそれ以上増えることはなかった。



少女の背を支え手を引いて、毎朝侍女が丁寧に梳かしてくれていた白銀の髪を血と死で汚し真紅の瞳をぎらぎらと輝かせ喉が枯れるほど声を荒げた。すでに終わった後の戦場を駆け回ったその日、いつか国母になるべく育てられた淑やかな公爵令嬢としての役割を終えたアンネローゼには新たな使命が出来た。

あの少女を助けることだ。あの少女を、アンネローゼの代わりに苦難に立ち向かう少女を支えるという役割だ。

聖女の『預言』は本物だと証明された。遠くない未来に待つ魔王討伐の旅にアンネローゼは自ずから手を挙げた。『真なる聖女』との魔力の共鳴の実績は、お飾りの聖女の存在価値としては十分なものになったのだ。

―――何のためにあの娘を異世界から招いたと思っているの。あなたが死なずに済むためなのに。

泣き崩れる母と、世界の終わりのような顔をした妹を抱きしめて、それでもアンネローゼはこれまでにはなかった使命に燃える焔が胸の中に宿っているのを感じていた。



***


「……私の世界、日本では、この世界のことが『ゲーム』になってるの」


アンネローゼがあの砦で一方的に抱いていたわだかまりを捨てると、ユズキもまたアンネローゼに心を開き、聖女が祈りを捧げるための神殿の奥深くで二人きりになるとよく女神の神託の話をしてくれるようになった。それだけではない。この世界に来る前の、女神の申し子となる以前の彼女の話も。


「アンナ。あなたは、『わたし』がこの世界に来たせいで聖女としての役割がなくなって、それで生まれた心の闇を魔族につけこまれて、魔王軍に取り込まれてしまう―――『闇堕ち』しちゃうはずだったの」

「そうなのね。それが例の『バッドエンド』のお話かしら?」

「ううん。『トゥルーエンド』以外のアンナはだいたい魔王の前の『中ボス』なんだ」


『トゥルーエンド』。ユズキが女神から申し付かった神託の先にある平和な世界のことだ。

ユズキの目指す未来の話。


「アンナを『闇堕ち』から助けるためには色んな『フラグ』が必要なんだけど……、もういまの私たちには関係ないことだね」

「ええ、そうね。あなたは私と一緒に魔王城に行って、私の手を握って封印魔法を唱えるのだもの」


彼女の神託の言葉はこの世界に馴染みのないものも多かったけれど、ユズキとはたくさんの時間を共有したので、アンネローゼにはおおよその理解が出来るようになっている。


「えへへ……これは何て言ったらいいのかな。『トゥルーエンド友情オチ』かな。すごい、すごい私に都合がいいんだけど」

「友情……。すてきね。こんなふうにお友達が出来るなんて、女神さまに感謝しなければ」


聖女になり、王妃になる。そういうふうに育てられたアンネローゼにとって、同世代の少女は常に競争相手だった。友達と呼んでくれるユズキがアンネローゼの前では安心したように笑うのが嬉しくて、つかの間のあいだ戦いのことを忘れることすらできた。

彼女はいろいろな秘密をアンネローゼに打ち明けた。彼女の体は本来の『ユズキ・サイトウ』のものではなく、この『ルナクエ』の『主人公』のものであること。本来の彼女はおそらく元の世界の事故で命を落とし、それを哀れに思った女神によってこの世界に訪れる『聖女』の中に魂を入れられたのだということ。

こんなにかわいい顔になったことがないから、と、ユズキは恥じらいながらももささやかに神殿の奥で流行のワンピースを着たりアンネローゼの化粧道具を使ってめかしこむことをことのほか喜んだ。いとけない少女そのものの姿だ。こんな運命の中に放り込まれたとは思えないその姿に、アンネローゼは彼女を守らなければという思いを強くする。

『ルナクエ』において、魔王を封印するためには聖女であるユズキが『メインキャラクター』のだれかと心を通い合わせることで魔力を増幅させる必要があるという。一緒に旅をする殿方から懇意になるひとりを選んで『攻略』し、その相手を決めるのだとユズキは言っていた。

「……、で、でも、その、えっと、私、リアル男性は苦手というか、男性は男性同士で仲良くしててほしいというか、だから」


『ルナクエ』のなかで聖女が手を取る相手の選択肢のなかに、アンネローゼはいなかった。けれど彼女はアンネローゼがいいと言ってくれたのだ。


「でもね、『トゥルーエンド』には『メインキャラ』―――『聖武具の勇者』みんなが必要だから。旅のメンバーはちゃんと集めなきゃ。アンナの知らない人もいるよね。みんな素敵なひとなんだよ。すてきな『ゲーム』なんだ。ほんとに。こんな―――、こんなふうな怖くてたいへんな世界じゃなくって」


彼女が語る『ゲーム』の世界とアンネローゼたちを取り巻く現実は違う。平和な世界に生きた彼女が、なんの不自由もなく家族に愛されて育った少女が親しんだ物語と、これから向かう旅路は違う。温度がある。痛みがある。死も穢れも、ままならないことも。

それを分かってしまった上で、それでもユズキは『ルナクエ』の話をするときに、いつも目を輝かせていた。


「……それにしても、ユズキ。そろそろ『加入イベント』をしなければならないのではなくって?」

「ぐ、ぐう。そう、それはそうなんですが」

「私と接点があるのは、レオンハルトさまとセルゲイだけだけれど。いつでも紹介できるわよ」

「ぐうッ、セルたん……! いや、セル様……!」


彼女はしばらくのあいだ『レベリング』なる修行に勤しむばかりで、一向に『メインキャラ』に会おうとはしなかった。その間は不思議と魔王軍の進行も途絶えていたので、ただのお飾りだった聖女がまがりなりにも戦えるようになるまでの時間が出来たのはありがたい。


ユズキが教えてくれた『メインキャラ』にはアンネローゼとも縁のある男性が二人混ざっていた。


王太子であるレオンハルトは、魔王の復活がなければ遠からずアンネローゼの婚約者となるはずだったお方だ。国王である父を補佐して難しい局面にある国政を捌きながらも『真なる聖女』の様子を気にかけていて、時折アンネローゼを王城に呼び出して『神託』の話を聞きたがっている。

やさしいお方だ、とアンネローゼは思っている。アンネローゼがお飾りだったときからずっとそうだった。今は彼女がこうしてユズキのサポート役として魔物との戦いに身を投じるようになったことを、いつも大変に心配してくださっている。

女神の神託があるとはいえ、将来この国を背負う尊いかれが魔王討伐の旅に出るだなんてアンネローゼは到底信じられなかった。だがユズキから『聖剣』が王家の―――初代勇者の血を引くものにしか振るえない上に、かれが『メインキャラ』の要の存在であると聞いて、密かに心を痛めている。


セルゲイ―――ユズキの『推し』の片割れは、アンネローゼから見て従弟にあたる。

平和な世界において、聖女としてのアンネローゼがそうだったように箔付けのためにと騎士団に入っていた青年だ。二年前の魔王の復活までは規律に厳しく窮屈な騎士団に居るのが嫌でしょうがないらしい不真面目な騎士だった。


「アンナはまじめに『聖女』をやってるけどさ、オレには無理だよ『騎士さま』なんて。向いてねーって」


そんな軽薄なことを言っていたのをよく覚えている。その高い身分ゆえにこのままこの男が次期騎士団長になってしまうのでは、と周囲から白い目で見られていることの意趣返しだったのかもしれない。


「そうそう、そうなのッ! ギャップ萌えなの! ほんとはすごいまじめなのに、素直じゃないんだよねッ!!  ……まじめなとこ、アンナに似てるね」

「セルゲイにそう言ったら、あの子、どんな顔をするのかしら」

「ぎゃーッ! 私推しとの関係性は壁派! 壁派なの!」


―――かれには天賦の才、戦いのセンスがあった。訓練でも御前試合でも一向に本気を出さなかったセルゲイは、仲間を守る魔物との戦いでその真価を発揮するようになる。アンネローゼにとっても転機となったあの砦での戦いで、総崩れになる仲間たちを叱咤激励しながら最前線で戦い抜いたのもかれだった。

平和な世界のままではただの不真面目な騎士のままだっただろうセルゲイは、皮肉なことに、この戦乱の時代になって名実ともに次期騎士団長と見做されるようになったのだ。


本来であれば『チュートリアル』、デルモ砦での戦いを終えたあとには聖女は自由に街を探索するようになり、その中で『メインキャラ』―――いずれ五つの聖武具の勇者として目覚めることとなる五人と出会い、仲を深めていくのだというが、彼女はアンネローゼと暮らす神殿の最奥にある聖堂と魔物が出る洞窟の行き来に日々を費やしている。そのため『物語の進行』が止まり、世界には不自然なほどの平穏が訪れたというわけだ。


「や、約束覚えてるよね、アンナ」

「ええ。……まだ『メインキャラ』に『メインキャラ』であることを教えてはいけない、だったわね」

「うん。……一応神託ってことになってるから、ね。『ルナクエ』のことも、『ゲーム』のことも、たぶんほんとは隠しておいたほうがいい……んだよね?」

「あなたのそれは、『女神の神託』。もう誰も疑わないわ」


ユズキが自分に―――自分だけに心を開いていることを、アンネローゼもよく知っている。彼女にとっての『神託』の認識とアンネローゼたちが期待している『神託』に相違があれど、彼女の力は本物だ。大人たちが彼女の願いを出来る限り叶えて接触を控えている―――ユズキ曰く『レベルを上げて物理で殴る』準備に口を出してこないのも、彼女の神託がすべて的中しているからに他ならない。


加えて。


アンネローゼもまた図らずも与えられたつかの間の安寧を有効活用し、ユズキを、大切な友達を守るために持ちうる術を全て使った。公爵令嬢として育てられ、次期王妃として叩き込まれ、あるいは聖女の座を射止めるためのすべてを。

彼女のために、それを心から望む自分のために、思うさまに振る舞った。

ユズキを嫌い、憎しみ、邪魔ばかりするという『ルナクエ』のアンネローゼとは違って、それはとても幸福なことだった。




全5話、完結済。明日の夜までに投稿予定です。

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