第四のやらかし(王家連動編):賢者の統一意識改革 ~那の津、海の民(あまん)の一員となる~
分断されて統治されていた過去の日本が日本人としての共通する所属意識を育んだ史実には、先人たちの叡慮が有ったと本当に尊敬してしまいます。それが統治者としての、能力なのでしょう。
那の津の空は、今日も青く広がっていた。新融合祭の余韻がまだ残る租界の広場では、強烈なスパイスの香りと海の太鼓のリズムが、日常の一部となっていた。
シオジはいつもの高台に立ち、満足げに腕を組んだ。
「ふむ……万物不変の定理・第五章・統一意識編。これで文化の化合は完了した。那の津の人々にも、あまんと(海の民)の一員としての意識が生まれつつある。交易は物だけでなく、心も繋ぐものだ!」
隣に立つサクラは、いつものように書類の束を抱え、ため息をついた。
「心の交易って……あなたが勝手に祭りを拡大した結果でしょ。山の民の情報も入ってくるようになったし、中央の目が厳しくなってるわ。王家のプランが動き出す気配よ。勝手に暴走しないでよね」
ジダンは近くの屋台で新融合料理を頰張りながら、満面の笑みを浮かべた。
「美味いぜ! みんな仲良くなったみたいだし、俺もなんか強くなった気がする! シオジ、もっとやるのか?」
「無論だ。次は国家規模の化合である!」
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数日後、王家からの密使が那の津に到着した。
密使は宰相(シオジの叔父)の直属で、厳しい表情を浮かべていた。
「シオジ殿。那の津の変化は王家も注視している。租界の税収増と住民の『あまんと意識』は好材料だ。次期賢者候補として、試練を与える。王家プランを実行せよ。内容は……」
- 海の民ルートと中央・山の民ルートを繋ぐ情報・交易ネットワークの構築。
- 「あまんと統合祭」の全那の津規模拡大により、住民を正式に海の民の支流として位置づける。
- これにより、王家は海側の支持基盤を固め、中央の不穏分子や山の民との対立に備える。
シオジの目が輝いた。
「これはまさに、万物不変の定理の最終章・国家化合編! 了解した。最適解を導き出してみせよう!」
密使が去った直後、シオジはすでに実行モードに入っていた。もちろん、事前報告は最小限。「定理に従えば、すべてが自然に最適化される」との屁理屈で。
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統合祭の準備が始まると、那の津は再び大騒ぎとなった。
シオジは「血の混合も促進すべき」と、孤児院の子供たちと新住民(元海賊や移住者)との合同生活プログラムまで追加。運河沿いに共同農園を作り、融合料理の無料配布をさらに拡大した。
広場では、海の神と地神の合同神事が行われた。神官たちが互いの祈りを交互に唱え、伝統舞と海の荒々しい太鼓が融合した舞台が展開される。
「海の神よ、地を潤したまえ!」
「地神よ、海の恵みを分かちたまえ!」
観客の中には喜ぶ者も多かったが、保守派の老人たちは顔をしかめた。
「伝統が……我々の神事が混ざってしまうとは!」
「海の民の一員だと? 那の津は那の津だぞ!」
サクラは神事の裏で頭を抱えていた。
「ほら、反発が出てるわよ! あなたが勝手に『統一憲章』なんて起草したせいよ。王家に事前相談しなかった罰が来るわ」
ジダンは子供たちと一緒に太鼓を叩きながら叫んだ。
「楽しいじゃねえか! みんな笑ってるぜ、シオジ!」
シオジ本人は祭りの中心で堂々と演説をぶっていた。
「那の津の皆よ! 欠乏とは分断から生まれる。文化の化合、心の交易により、我々は真のあまんととなる! これぞ賢者の道、万物不変の定理第五章!」
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カオスは頂点に達した。
保守派の神官たちが王家に苦情を申し立て、商人組合も「急激な変化で市場が混乱する」と抗議。中央からは厳重注意の書簡が届き、叔父宰相の胃痛は過去最高レベルに。
「シオジィィィ! また勝手に国家規模のやらかしを……今度は王家プランを台無しにする気か!」
姉からの「お叱り第5弾」急便が、早馬で到着寸前だった。
しかし——。
祭りが終わってみると、予想外の逆転が待っていた。
融合料理のブームはさらに拡大し、食糧豊かさと新産業(胃薬以外にも観光や工芸の混血品)が租界を潤した。住民たちの「あまんと意識」は定着し、海側からの忠誠表明が相次いだ。
情報ネットワークも機能し始めた。黒船の元海賊ネットワークを通じて、山の民の動きや中央の反王家派の情報が早期に入るようになった。王家はこれを活かし、不穏分子を未然に抑えることができた。
数週間後、王家から表彰状と「王家特別功労者」の称号が届いた。宰相の手紙にはこうあった。
「……結果的に大成功だったが、次は必ず事前報告を。胃薬の在庫が尽きそうだ」
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**後日談**
高台から那の津の景色を眺めるシオジは、いつものドヤ顔で空を見上げた。
「ふむ。これで統一意識の欠乏も解消された。やらかしを通じてこそ、国家は強くなるのだ! 私はまた一歩、賢者に近づいた……」
サクラが隣で苦笑した。
「次は本当に王家に相談しなさいよね……でも、まあ、結果オーライか」
ジダンはシオジの肩を叩いた。
「シオジ、すげえよ! 俺もあまんとの一員として、もっと頑張るぜ!」
那の津は今、海と陸の交差点として輝き始めていた。王家プランは着実に進み、シオジの「第四のやらかし」は、歴史書に「賢者の統一改革」として刻まれることになるだろう。
ただし、胃薬組合と保守派からの合同苦情状は、今日も届いていた。
最近、総理大臣の資質に家事能力を求める言説を目にしました。統治者としての資質は、そんなものなのでしょうか?肝心な時に決断出来る勇気とその裏付けとなる、日々の積み重ねこそが、生き肝を抜くこの世から民を守る必須の資質と思いますが…
僕も経営者としての経験が有りますが、この決断力と日々の研鑽に欠けていたために、まわりに迷惑を掛けてしまいました。シオジのような万能感が、原因です。




