9、どうしよう…
………………
どこへというわけでもなく、ひたすら歩き続けていた。
トースさん等をかわし、うまくヴァーバルの街から出られたのは良かったけど、一文無しで逃亡したもんやから、さっきから、どこかにオカネでも落ちてないかと、人知れず目だけで、けっこう探してたりする。
地面にキラリと光る何かを認め、あ、硬貨!って…思いきや、ただの石コロだったり。あるあるである。
だってオカネなかったら、ずーっと野宿かも知れんし、草でも虫でも食べて生きなアカンかも知れんし。
草はともかく、虫はキライ。でも、揚げる炒める蒸す、何か判らんぐらい美味しく調理されてたらギリいけるかも?
でも、あの足の部分がなぁ。硬くてトゲトゲしててモシャモシャしそう。
え?
逃げたの俺?
総合的に考えて、自業自得?
そんな言葉は知りません。
「ちょっと、待ってぇな……」
クェトルがあまりにもスタスタ歩いて行くから、高い木々に囲まれた街道で完全にほっていかれた!
すれ違う旅人もなく、街道とは名ばかりで獣道となんも変わらん。
こんなところで一人になったら、帰ることも、どこかに行くこともできんようになる。何か怖い獣でも出るかも知れんし、野盗が出るっていうウワサもあるところのような気もするし、泣きそう!漏らしそう!
こうなったら帰ることも出来へんし、ちょっと後悔してる部分もある。……いや、後悔なんかしてへんからな!少なくとも、俺は、な!
と、考えながらも、疲れて重い足を引きずって歩いてると、腕組みしてふてくされた感じで道端の石に座ってるクェトルが見えた。
俺に気づくと、それを待つでもなく、さっと立ち上がって歩き始めた。
しかし、こんなことクェトルに伝えても、ぜーったい拒否されると思うけど、あの時、ああやって逃げずに、一緒にティティスに行く道もあったんかなと思いもする。
俺が王家に戻るんやから、元反乱組織の人たちも、それぐらいのワガママ聞いてくれてもエエんと違うやろか?俺の御血筋が目当てなんやろ。
俺が女王で〜、その侍従になってもらって〜、ゆくゆくは一緒に〜……へへっ、おかしいな、口から汗が。
と、妄想の大海原へ旅立とうとしていた俺やけど、現実を見ると、口もきいてもらえん有り様なのに、世の中、甘くないのであった。
今夜は泣いてもイイでしょうか…。
これからどうしたらエエんやろ。帰るに帰れなくなり、行く場所もないし、でも放浪してるだけでは生きていかれへんし。流れ者に与えてもらえる仕事はあるんやろか。
うーん…もはや、身売りとか、賊とかするしかないんか?俺に、できるかな?
森を抜け、拓けた景色が目に入る。
どこまでも緑の広大な農地を行くと、街が見えてきた。治安の良さそうな大きな街。豊かな領地のようや。
領主様のお屋敷で住み込みの仕事があると聞き、衣食住のために住み込むことになった。
帰りたくても、もうお金もないし、靴の口がパカッと開いてしまいそうでヤバい。
逃げ回っても今に野垂れ死にそうやから、ってことでしょう。
何かとややこしいので、兄弟ということで雇われた。
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