2、彷徨う心
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雨がずっと降っている。
嫌味みたいに長々と。
窓ガラスの水滴越しに灰空を見上げて憂鬱な気分になる。
もうだいぶ晴れた日は見てへんような気もする。それは、俺の心にも雨が降っとるからそう思うんかも知れん。
重苦しいというか、イヤ~な雰囲気。それは雨のせいと違う。
何にしても、耳ふさいで走ってこの場から逃げてしまいたい!も〜!
「各地に散り、潜伏していた有志の努力の甲斐あって、レジナ国は領土の西半分を我がティティスに明け渡しました。再建の手筈は調いました。残すは旗印となるトゥルーラ様のご即位のみにございます」
トースさんが言った。なんべん目やろ、同じことを聞くのんは。あ~あ、この人が来て、大事な話や言う時点でこのことやろと、だいたいの予想はついとったけど。
せやから、俺は逃げ出したいんやっちゅーねん。
「だから、俺、そんな、国を治めるのんとかできるわけないですよ」
「エアリアル、あなたが今まで身分隠してた意味、分かってはるのん?何もかも、ティティスの国を正統継承するためでしょ?」と、おばちゃんが溜め息まじりで言う。
「おばちゃんまで!ねぇ、俺の意志って、ぜんぜん尊重されへんの?ねぇ、俺って何なん?!」
「あなたの人生は……ぜんぶ、ティティスの再建のためです」
おばちゃんは、キッパリはっきり、そう言い切った。
ってことは、おばちゃんおっちゃんは今まで、そういう気持ちで育ててくれてたってこと?!俺が可愛いとか可愛くないとかじゃなくて、王家を継ぐために?
…決めた、グレてやる。
「そうです。トゥルーラ様が、即位されることにより、我がティティスの存在も確かなものになりましょう。これは、亡き国王陛下のご遺志に他なりません」
「でも俺、なんてゆーか、決断力ってゆんですかぁ?そういうの全然ないですから。ってゆーか、かなり馬鹿なんですけど」
「その点は大丈夫です。トゥルーラ様がご立派になられるまで、わたくしが責任を持って政を執ります故、ご安心ください。ただ、フェバリステ様のお血筋を受け継がれる御方が国主になられることがティティスにとって、いかに肝要でありますか」
「はぁ……」
そんなこと熱く語られてもなぁ……ってか、俺が馬鹿やというところに否定なしとは。そこはツッコミどころやろ!
「参りましょう」
「失礼いたします」
トースさんと一緒に来てた騎士風の大きいオッサンが二人、そう言いながら俺の手首を左右から握った。これはもはや逮捕、連行というのでは?いや、拉致的な何かかも??
「イヤです!俺は、そんなん!」
俺は、その手を振りほどいて居間を飛び出して、さらにそのまま勢いで玄関も飛び出す。
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