42、終わりと、始まりと
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どれぐらい経ったんか。
灯りが尽きてしまっても誰かが来てくれるでもなく、一人、真っ暗な中で眠ったり目を覚ましたりしてる…と、思う。
思う、っていうのは、ここは時間もよく分からんし、寝たのか起きたのかも自分自身で区別がついてない。
やっぱり、目の前の感覚で、人は時の移ろいってゆーのを感じて生きているものなんやろか?…知らんけど。
そもそも、ここは地下室なんかな?ホンマに。地下室って俺が勝手に思い込んどるだけかも知れん。
…もしかして、ほんとは外の世界が滅びてて、俺だけ地下室に閉じ込められてるんか?!
いや、怖いことは考えんとこ。
そうそう。楽しいこと、楽しいこと。
毛布にくるまり、自分の唇に触れながら、一人でニタッと思い出し笑いをする。我ながらキモっ。しかし、ニヤニヤが止まらない!
ふふっ、ふふっ…ふふふ…。
一人、ニマニマしてると、なんか騒いでいる声や物音が、遠くからかすかに聞こえてきた。世界が滅びてしもたワケやないみたいや。
何を言ってるのか分からんけど、上の階で何かが起こっているっぽい。気になるけど、何が起きてるか分からん以上、勝手に部屋を出るわけにいかない。
と、ざざっと金属の板を引きずったような音が聞こえた。数メートル先に、かすかな明かりが漏れ込んできて、階段が立体的に照らし出された。
しばらく騒いでいたかと思うと、人影が下りてくるのが見えた。
「オイ、エアリアル、ちょっと上がってこいよ」
聞き覚えのある大きい声。
そう言いながら下りてきたのは、モジャモジャ頭の男。なぜここにボンが?と思うよりも先に、変に納得してる自分がいた。
ボンは階段の途中まで来て、こちらを手招きした。表情は見えない。
つまずきながらボンのほうへ上がってゆく。
上がると倉庫のような場所に出た。
その狭い倉庫のような部屋を出ると、そこには何人もの人がいた。でも、人数に似つかわしくない静けさがある。
目の前にボンは居るけど、ぱっと見た感じクェトルは見当たらない。
知らん人ばっかりやなぁ。いったい、誰なんやろ、この人ら。
どうしてイイんか分からんまんま、誰かが言葉を発するのを期待して、顔を見渡す。
「皇帝が、暗殺された」
ボンは俺に向かって言うた。
ボンにしたら、恐ろしく真面目な口調で、たぶん、そう言ったと思う。
聞き間違い?何て言った?
「しかも、暗殺したのは…オデツィアの烏」
頭の中が真っ白に。あまりのことに着いて行けなくてフリーズする。
「しかも、オデツィアの烏は死んだ」
死んだ?誰が…?
今聞いた言葉なのに、すごく昔に聞いたような感覚になる。
意味が理解できず、何度も頭の中で繰り返す。死んだ?誰が?
聞こえたのに理解ができないことってあるんだ?
「色々と簡単にはいかないとは思うケド、これで一応、キミは解放されたナ」
ボンの言葉が聞こえたような気もするけど、自分に向けられた言葉だったのかも、もう分からんかった。
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