25、打開策1
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反乱組織の拠点へ来ていた。表向きは大衆が集まる酒場になっているが、奥へ足を踏み入れると、そこには反乱組織の本部が置かれていた。
詳しいことは聞かなかったが、平たく言うと、皇帝バナロスの体制を崩すことを目的にしているそうだ。
ボンは、どういうわけか、この組織と深く繋がりを持っているらしい。アルのことで、今回は特別に組織と関わることを許された。申請してもらい、それから拠点へ呼ばれるまで、ボンと遇ってから四日が経っていた。ボンは、ここへ来れば良い方法があると言っていたが、詳しい内容まで知らされていない。
薄暗い部屋に通される。あまり広くない。壁際には棚があり、本が無造作に積まれている。
テーブルを挟んで向こうに座っている男が統率者らしい。頬から顎まで、ぐるりと黒いヒゲに囲まれた顔。四十代くらいか。
ボンが間に入り、俺とジェンスを紹介する。経緯も簡単に説明してくれた。
「それはお困りだな」
ピオニールと呼ばれる男は、厳めしい面に似合わず、低いが穏やかな声でそう言った。どうやらピオニールというのは名前ではなく、この男の位地のようだ。
「力になってやってほしいんですが」
ボンが深々と頭を下げる。
「我々に何ができるかな?」
ピオニールはそう言い、腕組みをして思案するように空を見つめた。
「やっぱ人探しですから、堂々と城に入れるようにするのが一番ですヨ」
もっともらしい事を言っているようだが、よく考えたら、それが出来たら誰も苦労しないだろうという内容だが。
すぐに答えは見つからないのか、ピオニールは考え込んだまま動かない。
「ねぇ、ルカスさん、お願いしますよう」
今度は、こちらに背を向けて部屋の隅に座っていた男に、ボンは猫なで声で頼み込む。机に向かってペンを走らせているルカスと呼ばれる学者風の男はこちらを振り返った。
「ねぇ、ルカスさんのコネで、アレは無理ですかねェ?」
「まあ、別にイイですけど、そちらさん、大丈夫ですかね?」
ルカスは鼻の頭に載っている丸い黒ブチ眼鏡をずり上げて、俺とボンを見比べるようにジロジロと見る。品定めをしているかのような目線だ。イヤな顔つきではないが、それでもあまりイイ気はしない。
「大丈夫ですヨ!ヴァーバル王家お抱え剣士のご子息ですからねェ。オレが保証しますヨ!」
ボンはそう言って、俺へ向けて笑顔でウインクをしてよこす。
非常に不気味で不安しかない。こいつがこういったノリの時はロクな事を考えていない。何かに巻き添えを食う前兆に他ならないのを経験で知っている。
「君がそこまで言うのなら……交渉してみますか」
「頼みますヨ!お願い!」
ボンは両膝を床に付けて、両手をパチンと合わせて頭を下げる。
話の流れについてゆけず、ただ事の成り行きに身を任せているが、どうも良くない予感がする。




