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16、終焉の訪れ




 その二人の人影は、ゆっくり近づいてきた。男らは例えようがない、何とも特長のない顔をしとった。


 何をされるんやろか?怖い…。

 この人らが閉じ込めたんか?



 身体を起こそうとしたけど、もう力が入らんかった。

 でも、こんな気持ち悪い所から明るい所に連れて行ってくれるんやったら、この人らが誰であっても、何であっても良いような気ィがした。



 そばまで来た男のうちの一人が灯りを持って、もう一人が寝転んだまんまの俺の目ぇに長細い布を巻き始めた。せっかく暗闇から出られそうやのに、目隠しされて、また真っ暗になった。



 無言のまんま、男たちは俺をベッドから立たした。両方から挟み込むように支えて、されるがままに歩かされた。歩かされたってゆーか、もう足の力なんか入らんから、ひきずられてるって言うたほうが早いかも。きっと支えられてなかったら倒れとると思う。




 どこ行くんやろか。凹凸のない冷たい石の上を歩かされてるみたいや。しばらく歩くと、今度は階段っぽい、段をぎょうさん上る。



 スッと空気が冷たくなった。顔に当たる風が鋭くて、すごく澄んでいる。それから、ジャバジャバと水の音が聞こえるみたいや。忘れていた聴覚も眠りから覚めたように思える。



 裸足に触れる感触が、飛び上がるほど冷たくなったり、そうでもなかったり、いろんな所を歩いているようや。



 深呼吸する。大気のにおい、遠くの鐘の音。外には刺激があふれとった。どこへ行ってるとかどうでも良くて、何か嬉しくなってきた。




 大気がうごめく音がやんだ。今度は、どうやら室内みたいや。足の下も、冷たさがなくなって、なんか布の上に乗ったみたいな感触が。と、思ってたら、急に止まる。それから、両膝をつくように座らされた。




 そこでやっと目隠しを外してもらえた。



 顔をゆっくり上げてゆく。目の前、ニ、三メートルぐらいのところに硬そうな黒いブーツの足が見える。誰かがイスに座っているんやろというのが理解できた。



 そのまんま顔を上げていくと…紅い炎のような髪をした男が俺を見下ろしとった。恐ろしく綺麗な顔をしてて、ゾッとするような、それでいて吸い込まれてしまいそうな目をしてる。なんか、胸の奥が凍りつきそうに冷たくなっていく気がした。


 金の飾りのついた、細身の黒っぽい服を着ている。威厳というか、威圧感がすごかった。自分の身体が四方八方からギューギュー押し潰されて、ものすごく小さくなったような感覚に襲われる。




 あたりを見回す。すっごい大広間で、ずらーっと兵隊さんみたいな人らとか、なんか偉そうな感じの人が並んどる。


 炎のような髪の男が合図すると、俺を連れてきた男二人が俺の上服を脱がし始めた。恥ずかしかったけど、抵抗する気力もなく、っていうか、もうどうでも良かったんやけど。

 なすがままに俺は紅い髪の男に背中を向けられる。




「ようやく、お目にかかれたな、トゥルーラ殿」





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