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7、束縛2




 幸い両足間は縛られておらず、自由が利く。片足ずつ横へ這って、荷物に足が届く所まで移動する。



「痛いなぁ。そんなに早く動けないよぅ。君は無茶をする人だなぁ」


 わずか数メートルほどの距離だというのに、鈍いヤツと一緒に動かなくてはならないのが災いして、そこへ着いた頃には汗だくになっていた。



 鞄の所まで来たのは良いが、留め具がしまっていて、中身を取り出せない。

 手は、密着した背中の間にあるから、手で鞄の留め具を外すなど到底できない。もはや、口で開けるしかない。


 歯で金具の間の革部分を噛み、引き抜く。革と金具の、決して美味いとは言えない味がする。

 二ヶ所のベルトを外し、鞄が開くようにする。



 両足で鞄を持ち上げ、中身を床へとぶちまけた。記憶違いじゃなければ、その中にナイフがある。



「あーあ。僕の大切な髪がもつれて、くしゃくしゃになってしまったじゃないかぁ。早く整えたいなぁ。僕の美しさが損なわれる」


 どうでもイイ関係のないことをぼやくジェンスを無視する。ぶちまけた荷物の中に手のひらほどの片刃のナイフを見つけ、足で自分のほうへ引き寄せる。足がつりそうだ。


 手に持ち替えて刃を上にして握ってみたが、ふと、自分で自分の縄を切るのは困難なことに気づく。だとしたら、先にジェンスの縄を切るほうが良さそうだ。



「僕の手を切らないでよ」


 ジェンスが心配そうに言うが、そんなことは知ったことじゃあない。一応、指先で手か縄かを探りながら縄に刃を入れてゆく。ノコを引くように少しずつ繊維を裂く。

 不安なのか、始終、ジェンスはブツブツ言っている。


 丈夫ならしく、なかなか切れない。根気強くひき続けると手応えがフッと消えた。


「あー、やっと髪が整えられるよー」

 と言って、事もあろうか、縛られている俺を放置して自分の髪を手櫛で整え始めた。呆れた野郎だ。



「お前、何か忘れてないか」


 俺がそう言うと、やっと思い出したらしく「ごめんごめん。忘れてたよぅ」と言いながら、ナイフを受け取る。



 不器用な奴にやらせると少し時間がかかったが、縄を解いてもらえた。腕を前にやろうとすると関節が痛む。



 着いてすぐのことで、外着のままだったのが幸いしたのか、部屋は寒いのだが、何とか耐えられるほどだ。


 両手首には、ひどい縄の跡がついている。





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