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武装守護霊  作者: 改樹考果
間章その六『逆鬼ごっこ四日目』
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二、『お前の企みがようやく実ったってことなんじゃないか?』

 「多分、そいつは図書委員長の『久楽(くらく) 法子(のりこ)』だな」

 逆鬼ごっこのために下駄箱に向っている途中で、俺は隣を歩く村雲に昼休みに出会った人物のことをなんとなく聞いてみた。

 もしかしたら知ってるかもって程度の確認だったのだが、思いのほか知っていたらしい。

 「あれじゃないか? 自分の委員会に入っても大丈夫そうか確認したのかもな」

 「つまり、今日の逆鬼ごっこに参加するってことか……」

 「今日参加するのは委員会連合だからな……まあ、そうはいっても、久楽さんがこういうイベントに参加するのは珍しい。というか、ほとんどなかったはずだがな?」

 「そうなのか?」

 「ああ、あの人は基本的に自分の世界に籠っているのが好きな人だからな……まあ、そういう連中はここの学園では結構いるが、その中でも特に内側に籠り易い人だったはずだ」

 村雲の言葉に、思い出すのはラノベを読みふけって、こっちに気付かない姿。ある意味、納得。しかし……

 「ということは、なにかしら別の理由があるってことだろうな。図書委員長としての都合ではなく」

 俺の推論に、村雲は頷き、

 「なるほど、確かにそう考えるのが自然だよな……てっことは……あれか? いや、しかしな……」

 ちょっと困ったような表情になって言いよどむ。

 「なんだ? 心当たりがあるのか?」

 「いや、心当たりというかなんというか……お前の企みがようやく実ったってことなんじゃないか?」

 「俺の企み? ……どれのことを言っているんだ?」

 「直ぐに見当が付かないぐらい企んでるのかよ」

 苦笑する村雲に、俺は頬を掻くしかできない。勿論、結構色々と企んでます。

 「ほら、幸野先輩とのゴシップ」

 あ~そういえば、逆鬼ごっこ初日にそんなこともしてたな……まったく効果があるのかないのかわからないから、すっかり忘れていた。

 「……ってことは、久楽さんはファンクラブの人なのか?」

 「確かつい最近に会長に就任したんじゃなかったけな?」

 か、会長? あんな人が? というか、女性だぞ? いや、そもそも、

 「……なんでそんなことまで村雲は知っているんだ?」

 「まあ、武霊部の活動で色んな武霊使いと知り合いになっているからな。情報は早いんだよ」

 「なるほどね……」

 一体どんな活動をしていたんだか少々気になるな。まあ、今はそんなことより、今日の逆鬼ごっこに集中するべきだな。

 「まあ、なんであれ、もし、久楽さんが本当に今日の逆鬼ごっこに出てきたんだったら、気を付けろよ」

 意識を切り替えた俺に、そう警告してきたってことは、

 「……強いのか?」

 「少なくとも、公式的な学園内での強さで言えば、久楽さんの武霊……え~っと、『無限図書館司書ルルラ』だったかな? は、第二位の強さを持っている」

 「第二位? 武霊ランキングの?」

 「ああ」

 ことなげに頷く村雲。ん~あの青髪メイドさんが? とてもそうは見えないんだがな……まあ、武霊の強さは見た目では判断できそうないしな。判断基準がなんとも難しい存在というか……ん? ちょっと待ってよ?

 「というか、その武霊ランキングって、どこがどうやってなに基準で決めているんだ? 久楽さんはあんまり武霊関連のイベントにはでないんだろ?」

 俺の疑問に、同然の疑問だよなって感じで苦笑する村雲。

 「マスメディア部が武霊関連イベントやはぐれ撃退などの活動を調べて、武霊能力とかを操り方とか戦い方とかを独自の方法で数値化して決めているらしい。だから、ちょっとしか活躍してなくても、上位にいる人もいれば、活躍と同時に周囲に被害とかを及ぼしている武霊使いはランキングが下位だったりするな」

 「ってことは、武霊能力が強力なのに、下位にいる武霊使いはそれなりにいるってことか?」

 「ああ、赤井とか、昨日、黒樹が戦った霧崎亜美もランキングは下位だな」

 「……理由は?」

 「まあ、この二人は暴れる度になんか壊しているからな……」

 どこか遠い目になる村雲。もしかしたら武霊使い時代に、色々と迷惑をこうむっていたのかもしれない……ん~となると、

 「……もしかして、琴野さんもか?」

 「ああ、琴野もランキングでは下位だな。あいつは普段は周囲に配慮して戦えるんだが、赤井が関わると途端に一緒になって暴れ回るからな……」

 まあ、それに関しては実体験済みなので、納得だが……

 「……武霊能力や源さんで修復されても、マイナス評価が発生するわけか」

 「建物とかだったら、修復されるまでの間は使えなくなるからな。それに、源さんが発生するのは破壊があった翌日だし、武霊使いが修復すれば意志力が消費されてしまう。直るからって、破壊は迷惑であることには変わらねえんだよ」

 「……なるほど、変わりが利くものばかりじゃないからな」

 などと会話していると、下駄箱に辿り着いた。

 「まあ、頑張れや」

 「ああ」



 逆鬼ごっこの四日目。

 主に今日いる子は、委員会連合の武霊使いということもあり、前三日の時と大分違う行動を見せた。

 まず、偽チャイムと偽オウキ&俺での牽制は、一人一人が犠牲となって確認してきたため、ほとんど通用しない感じだった。

 本物が出ていなければ、武霊能力を使った瞬間に強制退場になり、ならなければ本物。単純だが、覆しようのない確たる証拠だといえる。

 相手の数だけ減らすことを考えれば、ずっと偽物を出し続けるという手もあるかもしれないが、俺の意志力にだって限度がある。だとするなら、数で勝る委員会連合とのチキンレースをするのは危険だろう。

 となると、どこかのタイミングで、どうにか気付かれずに下駄箱から高校校舎エリアを抜けて、今日の作戦の舞台である学園庭園まで向かわなくてはいけないのだが……

 先行しているスカウトサーバント達から集まる情報によると、俺がいる下駄箱を中心にして、円形に武霊を配置しているようだった。しかも、わかりやすい、目立つところにいる個体もいれば、明らかに隠れている個体もいる。

 この二つのことを合わせて考えれば、かなりの統率が取れた行動を取っていると推測できる。それはつまり、それなりの指揮能力を誰かが有しているということなのだろう。

 委員会連合は、生徒組織勢力の中で最も武霊使いの数が少ない。と村雲は言っていた。

 だというのに、生徒の活動や生活を支える導く位置にあるとするのなら、その少ない数でそれを可能にする手段が必要になる。

 その一つが、この統率力なのだろう。

 前三日の生徒組織は数の暴力に任せて、個別の能力と強さに頼った戦い方をしてきてくれたので、引っ掻き回し易かったし、罠にも嵌めやすかった。

 だが、こう統率が取られてしまうと、同じことはできないだろう。

 まあ、だからといって、統率力が完全に強みになるかというとそういうわけでもない。

 そう思った俺は、思わずニヤリと笑ってしまったため、パシッと掌で口元を覆った。

 勝ち過ぎるというのはどうにもよくない。まあ、勝たなければいけない状況下であるわけだから、今回の逆鬼ごっこに関しては選択の余地はない。

 ならば、驕らずに、己を律し続け、変わらないことも一つの修行になるだろう。

 俺の目的は、これでの勝利の先にあるんだ。いわば、これはただの通過点でしか過ぎない。それで勝てたからといって、油断するなよ俺。というか、どんな勝利でも驕るのは駄目だ。

 そう自分に言い聞かせ、俺は下駄箱から出るために一歩踏み出した。

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