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武装守護霊  作者: 改樹考果
間章その二『誰目線の真実なんでしょうね?』
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五、『ミスリードだったんですか?』(終)

 幸野さんに奢って貰った白猫パフェを食べながら、明日の逆鬼ごっこ対策を考えていると、頭をなでなでしながら二階に上がってくる美羽さん……だけじゃなく、何故か琴野さんと村崎さんが現れた。

 村崎さんは平然としているが、美羽さんと一緒に鉄拳制裁されたっぽい琴野さんは、若干涙目になっている。

 というか……ん~正直、美羽さんだけでも手に余るのに、プラス二だなんて、どうしたらいいかプチパニックだって……

 混乱している俺がなにかをいうより早く、琴野さんが隣に、美羽さんが対面に、村崎さんがその隣に座った。

 「下で話し合った結果、こういう席順になりましたの」

 なんて琴野さんが言うが、下で話し合った? 喧嘩し合っていたの間違いじゃないか? というか、なんで俺の所に座るわけ? 作戦練り辛いじゃないか……

 その感情が読まれたのか、にっこりと琴野さんは微笑む。

 「わたくしは逆鬼ごっこに参加しませんので、どうぞお気になさらずに明日の作戦をお考えくださいませ。勿論、この場にいるのですから、なにかお聞きになりたいことがございましたら、遠慮なくお聞きください。当然、答えられるのは、わたくしが応えられる範囲内になりますが」

 「それってなんの役に立つのよ?」

 琴野さんの説明に、美羽さんはぶすっとした顔でそんなことを言ってしまう。

 うわ、琴野さんの額に血管が浮き出た気がする。

 「夜衣斗様の敵となるあなたよりは役に立ちますわよ?」

 「というか、なんで統合生徒会長ともあろう人が、たった一人に肩入れしようとしているわけ?」

 「統合生徒会長だからですわ。夜衣斗様の重要度は、ただの転校生として扱うには高過ぎますの」

 「だからって、コトサラが出てくることないでしょ?」

 ……なんなのこれ?

 再び口喧嘩を始める二人に、俺は困り果てるしか術がない。

 なんか逃げたくなってきたな……

 思わず外を見ると、ふとなにかがキラリと光った気がした。

 一瞬だったが、向かいの建物CDショップ『キャットソング』の二階から、その輝きを感じたが、なにが光ったんだ?

 じーっと外を凝視していると、また光った。

 その光源に目を向けてみると、商品棚に隠れながら、こっちにカメラのレンズを向けている女の子がいることに気付いた。

 女の子とはいっても、俺と同年代ぐらいの女子のようで、休日だというのに何故か星波学園の制服を身に纏っている。

 ……ふむ?

 ここからだとよく見えないので、上空に待機させていたスカウトサーバントを動かすことにした。

 実は、昨日から起きている間は、常にスカウトサーバントを上空に飛ばしていた。

 まあ、町にやってきてそうそう、二日連続で死ぬような目に合っていれば、これぐらいの警戒をしても不自然じゃないだろう。というか、俺が落ち着かない。

 そんなわけで、俺は常時索敵しながら、この場にいるわけだが、思念で彼女がいつあの場に現れたか録画映像などを調べさせてみた。だが、どうにもいつ入ったのかわからなかった。

 俺が商店街に来る前に既にいたという可能性も捨てきれないが……

 などと考えながら、スカウトサーバントをキャットソングの二階前まで移動させる。

 ステルス機能を使用中なので、ゆっくり近付ければ例え正面からでも気付き難いだろう。

 その思惑通り、カメラ女子に気付かれることなく、スカウトサーバントはその全身を捕らえられる位置まで移動することができた。

 タイミングよくファインダーから顔を離した彼女の容姿は、黒髪黒目で、髪を後頭部でまとめたシニヨンヘアで、可愛いよりカッコいい感じの見た目をしている。って、早見さんじゃないか……

 クラスメイトであり、マスメディア部部長に隠し撮りされていると知り、俺は眉を顰めたが、ふと思う。

 マスメディア部ね……ふむ……利用できるかな?

 そう思った時、ふと美羽さんが視線を外に向け、琴野さんもつられて同じ方向を見た。

 「「芽印!?」」

 ほぼ同時に悲鳴に近い声で早見さんの名を呼び、向こうも気付かれたことに気付いたのかビクッとし、一歩後ろに下がった。

 その瞬間、早見さんの姿が掻き消える。

 瞬間移動の武霊能力か? ……本当になんでもありだな……

 「逃がしませんわ!」

 大慌てで琴野さんが立ち上がり、喫茶店から出て行こうとする。

 「あの人はぁ~!」

 若干怒った感じで後に続く美羽さん。当然、その隣に座っていた村崎さんも続かざる得なくなり、無言のままため息を吐いている姿が見えた。

 結果、騒がしかった喫茶店の二階が静寂に包まれることとなり、残された俺はポツンと……別に寂しくはないが……なんだかな。


 オウキの装備の確認と、一通り現状でできる逆鬼ごっこ対策と作戦を練り終えた頃、美羽さん達がぞろぞろと帰ってきた。

 琴野さんと美羽さんを先頭に、後ろには村崎さんに首根っこを掴まれている早見さんが……なんでここに連れてくるんだ?

 四人は特になにも言わず、こっちに近付き、美羽さんと琴野さんが俺の隣に座るのを押し合いで争っている間、村崎さんに押し込まれる形で、早見さんが俺の前に座った。

 「はいは~い♪ 夜衣斗君おはよ♪」

 座って早々、目に近い場所で裏ピースサインを作り、無駄に明るく挨拶してきた。

 「……おはようございます」

 若干そのテンションについていけない俺は、気持ち幾分か引きながら返した。というか、

 「……昨日、月曜日にって言ったのはミスリードだったんですか?」

 「まあ、そんな感じかな~」

 問いに面白そうに微笑む早見さんに、俺はため息を吐かざるを得なかった。

 つまり、昨日の接触はこういうことだったわけか……思った以上に厄介な人かもしれない。

 そんな感想を抱いている俺に、村崎さんは無言でメモリーカードを渡してきた。

 視線はノートパソコンに向けられているので、中身を見ろってことか?

 村崎さんに対して頷いた後、メモリーカードをノートパソコンに入れ、データを確認してみる。

 画面に映し出されたのは、美羽さん達三人は勿論、幸野さんと俺とのツーショット写真だった。

 ふむ…………見様によっては、色々と想像力を掻き立てられる構図で撮られていたのが幾つか……

 「……学園のマスメディアは、健全な生徒組織じゃなかったんですか?」

 「私は真実を載せるだけですよ♪」

 俺の問いに、早見さんがなんて口にすると、にらみ合いに発展していた美羽さんと琴野さんが彼女を一斉に睨み付けた。

 「どこが健全よ!」

 「一定の方向に誘導する様に真実だけ載せれば、それは十分不健全ですわ!」

 「そうよそうよ!」

 直前まで喧嘩腰だった二人が、あっさり協調してるよ……これが女の子なんだろうか? まあ、人と関わりが薄い俺からすれば、男もよくわからんが……なんであれ。

 俺はスマフォを取り出し、さっき登録したばかりの幸野さんに掛けた。

 「夜衣斗さん?」

 俺の行動に気付いた美羽さんが、不思議そうな顔をこっちに向けてくるのを、手で制しつつ。

 「「はい。幸野です」」

 「……黒樹です。先ほどはありがとうございました」

 「「いいのよ。それで、早速掛けてきたってことは、美羽と沙羅がなんかした?」」

 そんなセリフが出てくるってことは、なんかすると思っていたのか?

 思わずチラッとその二人に顔を向けてしまうと、両方とも不安そうな顔をしている。

 別に告げ口をする気はないんだがな……

 「……いいえ、早見芽印さんに盗撮をされたので、そのことのご報告と確認を」

 「「…………あの子は……」」

 若干忌々しげにぼそっと呟くのが聞こえる。

 なるほど、幸野さんも迷惑をこうむっていたわけか……なら、なおさら利用できるな。

 「「それで、なにを確認したの?」」

 そう問われ、これから言う言葉に、激しく躊躇いを感じたが……覚悟を決め、少しだけ深呼吸。

 「……幸野さんが迷惑ではなければ、ゴシップを書いて貰ってもいいでしょうか?」

 その俺の言葉に、

 「「ちょ、ちょっと夜衣斗君!?」」「うわお! 何それ!? 面白い!」「夜衣斗さん!?」「夜衣斗様!?」

 幸野さん・早見さん・美羽さん・琴野さんがそれぞれの驚きの反応を示し、まあ、村崎さんだけ無反応だが、予想していたとはいえ、思わず仰け反ってしまった。

 っく、情けないぞ俺!

 説明を求めるようにじーっと俺を見る三人の女性。多分、幸野さんも説明待ちの沈黙をしているのだろう。

 俺は若干緊張しながら、それを誤魔化すために、軽く咳払い。

 「……幸野さんは星波学園を卒業した後でも人気者なんでしょ?」

 俺のその問いに、

 「そりゃもちろん、特集を組むだけで、視聴率もダウンロード数も飛躍的に上がるもの。在学中にできたファンクラブの会員数も減少どころか未だに増え続けているしね」

 早見さんがそう肯定してくれたが……それはますます好都合。

 「……その人気を、明後日の逆鬼ごっこに利用させて貰えないでしょうか?」

 「「逆鬼ごっこに?」」

 意外そうな声を上げる幸野さんだが、なんとなく察しがついてそうな感じもする。

 「……はい、俺の目的はあくまで、幸野さんが言った通りです。だから、なるべく多くの武霊使いと戦いたいんですよ」

 「「つまり、無用な誤解をあえて受けて、逆鬼ごっこへの参加者を更に増やそうと思っているの?」」

 「……ええ、俺目当てだけなら、参加しない人達もいるでしょうから」

 「「そういう人達を引っ張り出したいのね……」」

 俺の考えに、幸野さんはしばらく沈黙。

 「「…………夜衣斗君、わかっている? 今回の逆鬼ごっこは、私が聞いた限りでも通常の逆鬼ごっこではありえない参加数よ……私の私見だと、オウキの武霊能力は、集団戦に向くようだけど、個人戦では武霊の経験不足がダイレクトに反映してしまっているわ。下手に個人戦が得意な武霊使いに囲まれてしまえば……夜衣斗君の目的には沿わない結果になりかねないわよ?」」

 「……それは大丈夫です。それをなんとか(・・・・)する考え(・・・・)はありますから」

 「「そう……そこまで言うのなら――」」

 「はいは~い♪ しつもーん! 夜衣斗君の目的ってなんですかー」

 不意に幸野さんの言葉を遮って、早見さんが質問をしてくる。

 動揺の疑問を美羽さんと琴野さんも思ったのか、じーっとこっちを見ていた。

 別に隠すほどのものじゃないが……ん~自分から口にするのは物凄く恥ずかしいよな……武霊使いのレベルを上げるためって、まさしく思い上がった奴が考えそうなことだが……こっちとしては命に係わる部分だからな……

 どう答えていいか俺が迷っていると、通話越しに幸野さんがクスクスと笑っているのが聞こえた。

 「「とにかく、夜衣斗君がそのつもりなら……いいわ。許可してあげる」」

 「……ありがとうございます」

 「「いいのよ。その代り、なにか私が困った時があったら、色々と手伝って貰いますからね」」

 「……はい。その時は、できる限りのことは協力させて貰いますよ」

 幸野さんとの通話を切った後、俺はノートパソコンを操作して、美羽さん達が映る写真を削除し、メモリーカードを早見さんの前に置いた。

 「……幸野さんからの許可が下りました。残した写真でゴシップなりなんなりと書いてください」

 「だから、私は真実しか書かないって」

 なんてのたまうが、

 「……誰目線の真実なんでしょうね?」

 「あははは」

 俺の言葉に、渇いた笑い声を上げながら、目線を逸らす早見さん。

 まあ、情報を発信する側なんて、心持ち、考え方次第でいくらでも表現・解釈を変えることができるしな。別に間違ってはいないが、正しいかどうかは受け取る側次第だ。

 「……では、良い記事をお願いします」

 そう言うと、早見さんは親指を立てた。

 「はいは~い♪ 任せてよ! 最高の記事を書いてあげる!」







  間章その二『誰目線の真実なんでしょうね?』終了


   次章


    間章その三『逆鬼ごっこ一日目』


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