五回、一年坊主
あのファインプレーから、野球部員の俺を見る目が更に変化した。
いや、野球部員だけではなく、時には他の生徒から声をかけられる事も増えた。
野球部に現れた期待の新人。
無名の状態からそのように言われるまでに評価は上がった。
しかし俺にとってそれは、スポーツ保険に入っておらずまだバットを握ることを許されてない一年生であるからこそのこの評価だ。
もし、バッティングを許可されてしまったら……
「おーい、センターマン。今日もセンターに入れよ。」
あれからオレはセンターマンと先輩達から親しまれ、毎日守備練習に入れてもらえるようになった。
他の一年生がずっと声だししている時にも、一人守備についていた。
そのことに少し優越感を感じ、今となっては人間としてどうかと思うが他の一年を見下すような感情もあった。
そんなある日、いつものように守備からあがってくると、列の中から頭一つ小さい部員がひょっこり顔を出した。
「国枝君だったっけ?君ってどっかで野球やってた?」
渡辺だ。
あの日見た豪快でダイナミックな動きからは想像できない容姿だった。
身長は百四十あるかないか、オレと並んだら顔一個分以上違う。
あのプレーとこの体格から典型的なセンス型であると思われる。
「あ、ああ。一応。」
人見知りなオレは、あまり知らない奴と話すのは好きではなく、ついそっけない感じになってしまう。
「ふーん。やっぱり動きが二、三年のカス共と違うからね。」
まだ幼さを残した顔でオレを見上げながら、とんでもない暴言を吐いた。
こいつ、黒いな……
まあ言い方はともかくだが動きが違うのは素人にもわかると思う。
まともにキャッチボールもできない部員がほとんど。中には一度も練習にも来ずにいる幽霊部員だっているらしい。
一方で一年は全部で十五人。聞いた話によると経験者は10人。しかし、それらしい実力を持っているのはせいぜい5、6人といったとこか。
これじゃあ満足に試合もできない。
……もっとも2、3年よりはマシか。
しばらく考え事をしていたが、気付くと渡辺はもう指名されセカンドの守備についていて、外野も全て他の一年に変わっていた。
慌てて列に戻り、声だしをしていると、センターにフライが飛んだ。
「これは簡単だろ。」
思わず声に出してしまうほど簡単な当たり。しかし、打球はオレンジ色のグラブの上を通過し、センターの一年はバック宙でもしたかったのかと言いたくなるほど派手にこけた。
「あぁー、なにやってんだよ佐藤ー。」
内部生の何人かが呆れたように言った。
「小学校の頃レギュラーだって言ってたじゃねえかよ。」
あいつも野球やってたのかよ、それなのにあれは無いだろ。
やっぱりこのチームのレベルはかなり低いだろう。いずれオレと渡辺と河野で引っ張っていくことになるのかな。面倒くせぇ。
まぁいくら手抜きでやるとはいえ、一回戦負けも嫌だししょうがねえか。
それに、まだいい選手はいるかもしれないしな。
夕日に映えるグラウンドに立つ選手達は、とても絵になり一種のかっこ良さもあった。
ズテン。
「もういい!佐藤!あがれ!」
………やっぱりレベルは低い(涙)




