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僕らのガッカリ桜  作者: ゆらゆらゆらり
安田大地編
17/58

胸の痛み

 賑やかな声に、記憶から呼び戻された。午後から夜に向けて、人の数は一段と増えているようだ。

 気付けば、無意識のうちに。右手で左腕をさすっている自分がいた。


 結局、僕がバンドの大会に出場することはなかった。ソロの全国大会にも。

 会館でのことがあった次の日、いつものように朝ランニングをしている時に転倒し、腕を骨折してしまった。


 あの時、おじさんは、こんな時にと始めは怒っていたが、すぐに来年はと励ましてくれていた。母ちゃんも、事故だからしょうがないと慰めてくれていた。


 そんな姿に、僕の心は痛んでいた。


 どうやっても、自分には嘘をつけない。どういうことなのかは自分が一番分かっている。事故なんかじゃないということは……。


 1か月半ほどで治ったが、僕が教室に戻ることはなかった。指が思うように動かなくなったと理由をつけて。


 おじさんには、そんなはずはないと怒鳴られた。それでも、僕はかたくなまでに、動かない、と言い続けた。

 いつしか、おじさんはあきらめてくれた。


 母ちゃんは、やめると告げた時、「そうなの」というひと言だけだった。

 だけど、一瞬見せた悲し気な顔と、居間から台所へと去っていった背中が、今でも脳裏に焼き付いている。



 胸元にあるサックスへと視線が落ちる。

 僕はそっと目を閉じ、浮かんでくる思いを抱きとめた。目を開ければ、ステージが見える。あの時の感覚が蘇ってくる。


 足は自然と動き出していた。今、行くべき場所に向かって。


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