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魔法の契りで幸せを  作者: 平河廣海
最終章 アフターグロウ
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あとがき

 まず初めに、「魔法の契りで幸せを」を読んで頂き、誠にありがとうございました。


 約二年にも及ぶ執筆、投稿で、もともとの構想の物も含めると実に三年にも及ぶ時間を走り続け、ようやくゴールインしました。あっという間だったようにも、長かったようにも感じていて、とても感慨深いです。なにより、苦しい、よりも、楽しい気持ちの方が強く、本作品の執筆で、より小説への興味であったり、執筆や文章への興味が沸々と湧き上がり、とても充実した時間だったと思います。


 それでも、確かに苦しい時があったのも事実です。


 書き進めるにつれ、だんだんとより良い構成や表現がわかるようになり、何度も根本から見つめ直すことになりました(大幅な加筆・修正を何回もしたのはそのためです)。それは、私の実力であったり、考察だったりが不足していたからにほかなりません。そのために何回も書き直すことになって、皆さん、特に初期のころから読んでくださった方に混乱させてしまい、申し訳ありませんでした。


 しかし、そんな私やこの作品を、読者であったり、ブックマークや評価などをしてくださってくれた方々が支えてくれて、「完結」という、皆さんに最低限の礼儀を果たせたことを、うれしく思うとともに、ほっとしているところです。もともと私の趣味全開のため、人気が出にくいとは思っていたのですが、それでも支えてくださり、本当にありがとうございました。少しでも面白いと思ってくださったり、感動してくださったりしたのであれば、なおのこと幸いです。


 本作品は、私が小説投稿サイトに初めて投稿した小説で、初期のタイトルは「魔女の約束」でした。その後、「魔法の契りで幸せを」と変更になりましたが、その意味は、「魔法」は「エターナル・カーズ」のような呪いの魔法であったり、それを乗り越えるための神器などの様々な魔法であったりです。「契り」というのは、約束であったり、運命であったりなど、様々な意味がありますが、そのすべての意味が本作品に当てはまると思いましたので、その言葉を使うことにしました。そんな様々なことを通じて、最後には登場人物たちが願っている、「幸せ」を目指して歩んでいく。そのためにこのタイトルとなりました。


 もともと、この作品は全く別の小説、「月見酒の隠し事」として当初は構想にありました。雰囲気としては本作に似ているのですが、橘家は「(あららぎ)」という家名だったり、魔法など全く存在しなかったり、人狼が出てきたり、登場人物が全く違ったりします。


 ただ、そちらは一年くらい考察して、「告白編」というのはノートに自筆で書いたのですが(この頃は小説投稿サイトに上げようという考えがなかったり、パソコンがなかったりしたので)、結果的にボツになってしまい、完全に白紙になってしまいました。


 その頃には、小説投稿サイト、その中でも、この「小説家になろう」に投稿しようと思っていただけに、かなり苦渋の決断となりました。


 それでも、私はあきらめきれず、別の小説を一から作り直すということを始めました。


 その中で最初に浮かんだのが、「月見酒の隠し事」の過去編として考案されていた、「シャーリャーニャ・トゥルイ・バノルス」、その祖先の「リベカ」を軸とした物語でした。


 これは、本作の「桜空」と「リベカ・エリー・ガリルト」と同一人物で、その中の、リベカから考案を始めました。


 もともと、リベカが神器のケセフ・ヘレヴを封印し、それを桜空が使ったり、見つけたりしてこちらの世界に逃げてきたという設定だったのですが、なぜ封印する必要があったのか、どんな技術を使ってこの地に逃れてきたのかが定まっていませんでした。


 それを考察するうちに、ある案が浮かびました。


 それが、魔法の採用です。


 私は薬学生という、理系なので、どうしても科学的に物事を考えがちです。それもあって、何らかの根拠が欲しかったのですが、それに魔法がうってつけでした。


 それで考え出した物質が、「マジカリウム」、「ポリマジカリウム」、「マジカラーゼ」です。


 最初は魔原子などと呼んでいたそれらは、原子、分子、酵素をもとに考案しました。本文中にマジカリウムがマジカラーゼの触媒によってポリマジカリウムになって魔法として発現する、といった内容で書かれていたと思いますが、簡単な化学反応として説明することに成功できたと思っています。……結構、難しくて、考えた私でも混乱することがあるくらいですので、話半分にした方がいいかもしれないです。


 とにかく、その三つの物質を考え出したことにより、頓挫していた「月見酒の隠し事」が、全く新しい姿となって再登場しました。


 すでに別物になってしまいましたが、それでも一部登場人物の名前などはそのまま採用しました。せっかく考えたものを、全て無に帰すことはしたくなかったので。


 ですが、皆さんは五月はどうしたのだと思うかもしれません。


 結論から言いますと、「月見酒の隠し事」の流れに沿って物語を再構築したのですが、それは現代編から始まり、過去編を挟んで、また現代編となって、全てをつないでいくというものでした。


 その主人公が、源五月でした。


 最初は小学生編である、「ドミノ倒し編」を再構築しようとしました。


 ですが、ある問題が出てきました。


 もし小学生編から書く場合、魔法を登場させるのが、ものすごい後になってしまうことです。


 もともと、小学生編は本作の第一章第七話「ズッ友」にある通り、ささやかな日常から始まり、絶望、それを乗り越えて再スタートして、また幸せな日常を取り戻しつつあったところに楓と雪奈が死んでしまうという展開だったのですが、その後に魔法を使えるようになってという展開にしないと、その不幸を乗り越えられた、もしくは乗り越えられずにさらに追い込まれる状況になるため、小学生編に魔法を食い込ませるのは無理な話でした(ちなみに、「月見酒の隠し事」では事故とかではなく、殺人事件とかが起こって、なおのことすごいありさまでした)。


 そのため、小学生編は回想という形で残そうということにしました。


 そうなると、中学生編から始まるわけですが、それはもともとボツになっていたもので、登場人物を一から考え直すことになりました。


 主人公である五月、桜空は確定、同時に希望を持たせてくれる存在が欲しかったので、裕樹、佳菜子、麻利亜、希望(のぞみ)を採用しました。このうち、裕樹は元の物語でも五月と結ばれることにしていたので、出すことはほぼ確定していました。


 ちなみに、あだ名に関してはその場のインスピレーションで決めました。また、希望はいつの間にか私の頭から抜けて、消えてしまっていたのですが、デマに便乗して五月たちから離れた代表格として復活させたというのは、登場人物紹介のところで話しました。


 ただ、簡単に幸せになっては物語が成立しないので、すごくかわいそうですが五月と裕樹には簡単に会ってほしくありませんでした。


 そこで考えたのが呪いです。


 魔法もあるため、意外とすんなり決まったような覚えはありますが、実はその魔法がどんなものなのかが決まったのは、結構後でした。最初は伝説に魔法があって、五月のご先祖様、つまり桜月と、神様、つまり桜空が魔法を使ったことと、イワキダイキをはじめとしたデマで五月が傷つき、裕樹やみんなと距離を置こうと考えた、という設定だったのですが、ちょっと理由としては弱いと思いました。そんな時、魔法でどうにかしようと考えた結果、「エターナル・カーズ」を考えました。


 そうなるとトントン拍子に設定が決まっていき、執筆が始まるのですが、また問題が起こります。


 それは、魔法を教える存在がいないということです。


 桜空は第一章の時点では魔法を教えたくない、桜月は教えようと思えば教えられるけど体が持たない。そんな現実が待ち構えていました。


 そこで、私は「巫女」という存在に着目しました。


 その巫女の中で、特別な存在を作ろうと思ったのです。


 ちょうど五月は巫女で、その中でも特別な存在だと印象付けるには、魔法と併せて考えてもとてもいいものだと思いました。


 それで考えたのが「オラクル」でした。


 その「オラクル」によって、魔法を習得できたり、予知できたりと、本当に便利な魔法が誕生し、さらに柔軟に本作品を作り上げることができるようになりました。


 そして、書き進めるうち、そのオラクルの重要性を感じ、オラクルを軸とした物語を考えるようになりました。それによって、リベカや桜空の時代の社会が生きた形として見え、第二章を書きあげました。


 ちなみに、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、ベースになったのはキリスト教の聖書や、ユダヤ民族です。宗教と併せて考えることで、「ガリルト神」であったり、ガリルト神王国、バノルス王国、マスグレイヴ帝国であったりと、神様や、それを崇拝する国、その敵国といった国際情勢が見えてきました。最終的にはクーデターから逃れたためにそれ以降の描写はありませんが、そのことも考えていました。もう最後なので、打ち明けますが、クーデターの後、ノア派がバノルスを掌握します。ですが、ガリルト、バノルス双方にマスグレイヴの手が回っていて、この三国で戦争となり、結果的にこの地域は壊滅するという、悲しい終わりとなってしまいます。


 実は、物語中に一回だけ出た「アリシア」は、その後の物語の主人公として、今後書く時のために出しておきました。その物語は、桜空は逃げることができず、殺され、バノルスの王族は全滅して、指導者が誰もいない戦国時代となっていますが、アリシアが神器を発見し、再び国を統一するといった内容となります。まだ書いてもいないですし、プロットも全くないですし、考察も全然していないですが、機会があればぜひ書きたいと思っています。


 ちなみに、アリシアはリベカの妹、「アリス」の子孫ですが、本作中では「オラクル」は滅んでいるため、使うことはできません。それは「マジカル・デリート」などをマスグレイヴが使っているためですが、戦争のために勝者のいない結末を迎え、三国が滅んだ後にアリシアが「オラクル」に目覚め、正当な指導者を宣言し、統一を目指すことになります。一応、桜空とは仲が良かったので、その分幸せになろうと奮闘します。


 ……すいません。ちょっと話がごちゃごちゃしてしまいました。話を本作品に戻します。なんか、少し考えていた内容を整理して話を膨らませながら書いていただけなのですが、すごく面白そう……。来年度に薬剤師国家試験がありますが、それでも書きたくなってしまいました。


 さて、第二章の続きです。桜空がこちらの世界に逃れてきましたが、設定としては鎌倉時代です。本文中に橘家が没落して移住してきたとありますが、それはネットで名字を調べていた時にどこかで見つけた、平安時代ごろに東北に来たという話を使ったものです。本当かどうかは知りませんが、領主として力をふるうのには、地方はまだできると思ったので、採用しました。


 この文脈から想像できるかもしれませんが、千渡村、血腸村は東北地方にあります。どこらへんなのかは想像してみてください。意外と登場人物の名字や出来事などでわかるかと思います。


 その後の第三章ですが、「月見酒の隠し事」から登場させたかった、「白鳥友菜」を、ついに出すことができました(実は、第一章の「みんながいるから」で、すでに登場していましたが)。


 この第三章からはひたすら前に進んでいくことを意識していたので、五月の複雑な事情を理解して、手助けしてくれるよう、それはそれは天使のような人物をイメージしました。そして、部活を通じてさらに仲良くなれば結束が強まり、困難に打ち勝てると思ったので、新たな友達はみな同じ部活――陸上部にすることにし、同じクラスから李依、中入生から柚季と亜季と、リレーも組めるように採用しました。


 ……実は、この陸上ネタは、想像もしていなかった効果を本作品にもたらしてくれたと思います。


 リレーで行うバトンパス。それが、リベカから始まり、桜空、桜月がつなぎ、五月が締めるという、本作品ととても合っているように思えました。


 しかも、リレーの人数と同じ、ちょうど四人です。


 それもあって、迷わず陸上部という設定にしました。ほかに、体を直に鍛えることが、魔法や競技に結びつきやすかったからという背景もあります。


 それからは順調に歩み始めますが、一つ困ったことがありました。


 それは、どう終わらせるか。


 終わりが見えてきた段階でしたが、当初から魔法を滅ぼすということは決まっていました。


 ですが、わかりやすい魔法であったり、物であったりがありませんでした。


 「エターナル・カーズ」では足りないと思ったのです。


 一応、「橘家黒幕説」、「桜月の暴走」など、ボツになったものがあったのですが、ちょうどいいものがないかと思案していたところ、……ありました。


 それが、「ケセフ・ヘレヴ」です。


 ケセフ・ヘレヴをラスボスにすることで、あまり詳しく書かれていなかったのがようやく形になると思いました。


 もちろん、簡単に勝てないようにしたいと思いました。


 ですが、それもちょうどいいものがありました。


 それが、ゴルゴタで骨しか残らなかったという逸話です。


 もともとリベカが使いこなして討ち果たしたという設定でしたが、それは表向きの理由ということにして、暴走して封印することでやっとだった、ということにしました。


 それにふさわしい、魔法を防いだり強力な魔法を使ったりといった機能を追加するうち、手の出しようのない化け物が誕生してしまったわけですが……。


 それを壊すために、新しい神器が欲しいと思いました。


 今のところ、三種類の神器があります(ちなみに、日本の三種の神器である「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」、「八咫鏡(やたのかがみ)」、「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」が由来で、ヤサコニ・イオツミスマルは「八尺瓊勾玉」のヘブライ語、ケセフ・ヘレヴは「銀の剣」のヘブライ語、ヤサコミラ・ガリルトは、ヘブライ語を見つけられなかったのでイオツミスマルと英語、ガリルトを組み合わせて名付けました)。そのうち、五月たちが使えるのはイオツミスマルだけ。これでは、かなり不利です。


 そこで考えたのが、リベカの手記と、ムーンライト・カノン、桜襲でした。


 これらを発見し、作り出す人物として、桜月にその役割を持たせることで、桜空と運命の再会を遂げることもできるので、かなり良かったと思います。


 それに、案の中にあった、「リベカの章」という、リベカが主人公の物語を、日記の形とはいえ、採用できたので、すごくうれしかったです。


 あわよくば、こちらもまた書いてみたいなという願望があります。


 そして、ついにケセフ・ヘレヴを破壊するわけですが、なぜ物なのかというと、単純に私が人や怪物に攻撃するというのがあまり好きではなく、本作品においては不幸や魔法の象徴としてのケセフ・ヘレヴを葬ることによって、魔法と決別し、幸せへと歩き始める印象があるので、これが最善だったと思います。


 さて、ついにラストですが、本当は、結婚式で一話使おうと思っていました。ですが、桜月が目覚めた時点でみんな幸せへと至れたと思うので、また、結婚式まで書くとくどいのではと思ったので、あのような形を取らせていただきました。様々な意見があるかと思いますが、私はあの展開だけでもみんな幸せなことが描写でき、きれいな終わり方ができたと思うので、これでよかったと思います。


 ボツになったものをほかに並べると、「記憶喪失になる」、「桜空はすべてを乗り越えた後死ぬ、桜月は五月の時代に来ていない」などがあります。とくに、桜空については、やっと幸せをつかんだところだったのに、別れるようなことはしたくなかったので、必死に生き残れる方法を探しました。その結果がイオツミスマルや桜襲の切り札だったのですが、結果的に神器の切り札も物語上、重要なものとなったので、かなり良かったと思います。


 さて、長々と振り返らせていただきましたが、やっぱり私はこの「魔法の契りで幸せを」が大好きで、すごく面白いなと思います。もちろん自分で書いたもので、自分が好きなように書いたからというのもあるかと思いますが、五月たちと歩んだこの三年間は何物にも代えがたい、幸せな時間でした。彼女たちの物語は幕を閉じてしまいますが、終わったわけではありません。これからも歩き続けると思います。幸せを勝ち取った彼女たちを励みにして、私も負けないように、まずは薬剤師国家試験に受かるよう、努力していきたいと思います。


 小説については、他のサイトで本作品は遅れて連載中です。もし最初から完成版を読みたいという方は、そちらでもよろしくお願いします。投稿サイトについては「あらすじ」に明示いたしますので、よろしくお願いします。


 最後に、ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。五月たちもありがとう。お疲れさま。


 また逢う日まで。


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