16.同じ色
「これより魂の逢瀬を始める。これは魂1つにつき一度のみ行われる。
今から私たちは魔法陣の上から退く。そうすれば、あなたたち魂の会話は私たちは聞くことができない。」
次にカンナーレが口を開いた。
「来世に心穏やかに行くために、しっかりと向き合ってくださいね。
終わったら、魔法陣から出てください。」
ショウとリツがアロモニアにきて7日目。最終日だ。
2人は魂の逢瀬を見学していた。
「この部屋は…なんというか…不思議…です。」
「広いようで狭いですね~?」
ショウとリツは不思議そうな顔をしながら部屋をきょろきょろと見回した。
「ここはフェリチータとアスチータの狭間で、霊力が部屋に溢れている。
その霊力を使い魂の逢瀬を取り仕切ることができる。」
ジュネーロの説明を聞き、リツが眼鏡を外し、話し込んでいる魂の感情を読み取った。
「嬉しいという感情に寂しいという思いが混じっていますね~?」
「えぇ。これが終わればもう2度と会うことはできませんからね…」
「それでも会いたいって思える人がいるのは素敵なことですね…」
「私はよくわからないですね~?生まれ変わったら何もかも忘れてしまうのですから余計に辛くなるだけじゃないんでしょうか~?」
ショウの言葉を聞き、リツが不思議そうに言った。
するとカンナーレがクスクスと笑った。
「リツさんはジュネーロさんと同じことを言うんですね?
…きっと、それだけ思い合っているということです。
だから何もかも忘れてしまう前に、生きているうちに言えなかったことを伝えておきたいんですよ。」
ジュネーロがカンナーレをじろりと睨み、そっぽを向いた。
「お前の、本心を見せないくせに妙に悟りを開いてるようなことを言うところが心底嫌いだが、
カンナーレの言うことは一理あるだろう。
実際魂の逢瀬を行なった者はアスチータでの行動がものすごく良くなっているのだ。
…真意や意義を理解できなくても結果に出ているからな。」
バチバチと睨み合う2人の様子など気にもせず、リツが口を開いた。
「魂の記憶っていうのは生まれ変われば完全に消えてしまうのですか~?」
「あぁ。その魂からは完全に消える。
だが、魂の記憶を保管している場所があるんだ。
後で見に行くか?」
ジュネーロの言葉を聞き、リツとショウは顔を見合わせて頷いた。
目の前で2つの魂が話し込んでいる様子をショウが儚げに見つめる。
「ショウ~?どうかしましたか~?」
ショウの悲しさを感じ取り、リツが気にかけるように声をかけた。
「…たとえ…忘れてしまっても…きちんと向き合えるのっていいな…って思ったんです…」
ショウの瞳が悲しげに揺れ、まぶたを閉じた。
その目に一瞬涙が見えた気がした。
「ショウ…私、眼鏡を外さなくてもショウが今どんな気持ちなのか、何を考えているのかわかりますよ~?
ケイのことですね~?」
「…はい…どうやったらちゃんと…向き合えるんでしょう…1度開いてしまった溝は深まるばかりで…」
震える声で発せられた言葉には深い悲しみが宿っていた。
リツがショウの手を優しく握った。
「ショウ、ジュネさんとカンナさんを見てください。」
ショウが顔を上げ、2人を見る。
2人ともまだ睨み合いながらも言い合いを続けていた。
しかしその表情はどこか生き生きとしているように見えた。
「あの2人は仲悪いですよね~?でも言い合いしてる時の表情はとても生き生きしています。
仲悪いですけど、お互いのことをきちんと分かり合っているんです。
分かり合うには本音をぶつけるしかないんです。
何も言えなくてつらい思いをしているショウを見るのは私もつらいですよ~?」
「分かり…合える…のかな…」
リツがにっこりと微笑んだ。
「私は人の感情が見えますけど、感情の色は人によって微妙に違うんですよ~。
分かり合えますよ。だってショウとケイの色はそっくりですから~。
髪の色は反対でも感情の色は一緒ですから、大丈夫ですよ~!」
「そう…ですか…僕たちちゃんと…双子だったんですね…良かっ…た…」
リツの自信満々な物言いに安心したようにショウが笑った。
その表情にはもう悲しさは混じっていなかった。
リツは安心したように微笑むと、再び前を向いた。
まだ言い合いを続けるカンナーレとジュネーロ、魂の逢瀬を行なう2つの魂、それらの様子を暖かく見守るリツとショウ。
部屋には和やかな雰囲気が漂っていた。




